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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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夢監獄の看守たち

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夢監獄の看守は楽だ。
囚人たちはベッドの上で静かに眠っている。

体につながれたチューブで生かされ続けて眠っている。
夢の世界では拷問にも等しい地獄を味わっているはず。

今日もまた夢の囚人が運ばれてきたらしい。

「奴ら、夢監獄の脱獄王らしい。やっと捕まえたんだ、逃がすなよ」

「もちろんですよ、逃がしませんとも。
 なにせ夢監獄を作ったのは僕ですよ、アリ1匹入り込む隙はありません」

「そうかもしれんが、相手は脱獄王だぞ。
 けして油断はするなよ、絶対にだ」

「わかってますって」

これまで何人も俺の夢監獄の中に囚人を閉じ込めてきた。
今まで脱獄できた人間はいない。

俺は一度眠って、夢監獄の中をくまなくチェックした。

「ひぃぃぃ! もう助けてぇぇぇ!」
「お願いだ! 現実へ現実へ帰してくれぇ!」
「もう悪さしません、本当です!!」

夢監獄の中では現実世界でとてもできないような
おそるべき拷問が日常的に行われている。

でも、現実の囚人たちは涼しい顔で眠っている。

時間がゆっくり流れる夢の中で
ぜったいに外に声が届かない夢の中で
囚人たちは繰り返し繰り返し反省を促されている。

「よし、いるな」

今日収監された脱獄王が牢獄にいることを確認する。
鍵もかかっているし、防犯に抜かりはない。


「ふぁ……あぁあ」

夢監獄の安全性を確認してから目を覚ました。
チェックしたところ、さして問題はない。
いくら脱獄王といってもあれを逃れることはできないだろう。

俺の作った夢だ、そのことは俺が一番分かってる。


ビー! ビー! ビー!!
脱獄警報発令! 脱獄者です!!


「な、なんだって?!」

早すぎだろ!!
俺は慌てて睡眠導入剤を使って眠りについた

夢監獄につくと、息を切らせた看守がやってきた。

「お、遅いですよぉ! なにやってたんですか!」

「逃げた脱獄王は?」

「こっちです!」

すでに夢監獄に来ていた看守に連れられて、
脱獄王が入っている牢獄の前まで到着した。

脱獄王は格子の向こうに閉じ込められている。

「私がすぐに駆けつけて捕まえたんで、
 逃げられるまではいかなかったんですよぉ」

もし、俺の到着まで誰も来なかったら……。
間違いなく脱獄王は逃げ切っていただろう。

「よし、場所を変える」

「え!? 場所を変えるってどういう……」

「なんのカラクリかわからないが、
 脱獄王はこの夢監獄の抜け方を知っているらしい。
 だったら、ぜったに逃げられない場所にするさ」

「な、なるほどぉ」

俺は現実世界で見た、完全密室の個室を作った。
他の囚人に協力されないよう、牢獄とは距離を置いた場所に。

「これなら逃げられることはない。
 壁、床、天井、すべて隙間なしの鉄だ。
 夢の中だから食事も排せつもないし、腐食の心配もない」

昔の映画でスプーンを使って脱獄……なんてのもあったが、
ここは夢の中なのでその心配もない。

「これなら完璧ですねぇ」

「ああ、さすがの脱獄王も俺の夢の中で好き勝手はできないぜ」

完全密室の鍵を夢生成してお互いに渡し、しっかりと鍵をかけた。
閉め忘れがないように入念にチェック。

「よし、OKだ。お疲れさん」

「ありがとうございます、おかげで助かりましたぁ」

 ・
 ・
 ・

「……ふぁあ」

目を覚ますと、ちょうどいいところに看守主任が来た。

「主任、脱豪王ですがちゃんと閉じ込めておきました」

「そうか、それはよかっ……」


ビー! ビー! ビー!!
脱獄警報発令! 脱獄者です!!


「だ、脱獄!? それも脱獄王が!? なんで!?」

脱獄王が脱獄したらしい。
あの完全密室をどうやって。

「お前、ちゃんと鍵は閉めていたんだろうな!!」

「当たり前ですよ! ちゃんとチェックもしました!!」

主任を連れて夢監獄につくと、もぬけの殻になった個室をみて言った。


「ば、バカ野郎!!! 脱獄王はコンビだ!! 2人いるんだ!!」


主任は脱獄王、2人目の顔を見せた。
そいつは一度看守として出会ったあいつだった……。
作品名:夢監獄の看守たち 作家名:かなりえずき