ヴァンパイア vs ゾンビ
「博士！ 歯磨きなんてしてる場合じゃないですよ！
ゾンビが街にあふれているんです！」
「ふむ……このままでは我々も危ういな」
「政府のゾンビ討伐隊も全滅しましたし、
もうゾンビに対抗する手立てなんてないんですよ！」
「目には目を……かの」
博士はヴァンパイアウイルスを開発した。
「ヴァンパイアをゾンビの群れに解き放って、
ゾンビをヴァンパイアにすればいいんじゃ！」
「なるほど！ ヴァンパイアは日の光に弱い！
みんなヴァンパイアになれば、日中は自由に動けるはず！」
どうせ同じく人間を襲うのであれば、
見境のないゾンビよりも多少弱点があるヴァンパイアの方がいい。
そこで博士はヴァンパイアウイルスを解き放った。
「さあ、これで世界はヴァンパイアに蹂躙されるはずじゃ！」
ヴァンパイアもゾンビも増え方はねずみ算式。
一度ウイルスを放ったが最後、爆発的に広まる。
……そう思っていた。
「……あれ？ なんか全然ゾンビ減ってないんじゃけど」
「博士！ 大変です！ ヴァンパイアが全然増えていません！！」
ヴァンパイアがどんどん増えると踏んでいたのに。
ゾンビはどんどん減っていくと思っていたのに。
そのどちらも想像が外れてしまった。
困った博士たちは手近なヴァンパイアを捕まえて聞いてみることに。
「どうしてゾンビを襲って仲間を増やさないんじゃ？
人間よりも足は遅いから襲いやすいじゃろ」
ヴァンパイアは答えた。
「……だって、ゾンビの血、おいしくない」
博士と助手は大いに落ち込んでいた。
ゾンビを減らすためにヴァンパイアを作ったのに、
ゾンビの血を嫌うヴァンパイアは人を襲い始めた。本末転倒。
「大変です博士！ ヴァンパイアとゾンビのハイブリットが誕生しました！」
さらに悪いことに上位種すら誕生した。
昼日中に歩き回れるうえ、ゾンビのようにしぶとい。
ゾンパイアと呼ばれるソレは大いに人間を恐怖のふちへ追い詰めた。
「博士！！ いったいどうするんですか！？
ゾンパイアを倒さないと、我々の生きる道はありません！」
「わしに一つアイデアがある」
「新しいウイルスを作るんですか？ 無駄ですよ！
また今回のように上位種が誕生するいたちごっこですよ！」
「まあ、わしにまかせておれ」
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けして、大きなことは何ひとつしていなかったのに
ゾンパイアの数はどんどん減ってついには全滅してしまった。
これには助手もすっかり大喜び。
「博士！ さすがです！！ いったい何をしたんです！
新型のウイルスですか？ 空気感染ですか！？」
「そんなものじゃないよ」
「え？ それじゃなにを……？」
「この世界のすべての歯ブラシを捨てたんじゃ」
ゾンパイアの死因１位は「虫歯」だったこと、助手は後で知った。
作品名：ヴァンパイア vs ゾンビ 作家名：かなりえずき