『 癒し系コンビニエンスストア 』
張り紙を読むと、こう書いてあった。「このコンビニエンスストアは、皆の憩いの場となったために、夜間専門コンビニとなります」それはいつからとも何とも書いてはいなく、私はその時を楽しみに張り紙の前を通り過ぎる毎朝を送っていた。
暫くして、コンビニエンスストアの周りに怪しげなツナギを着た男共が歩き回るようになったので、その道を迂回し、私はそのことを忘れてしまった。だが、夏の暑い日に太陽を見上げた時に、ふと思い出したのは憩いの場である。
コンビニエンスストアは、ゲームセンターに変わっていた。子供たちが何人もゲームセンターにいるようだったが、ゲーム機自体は3~4台しか見当たらない。
私は近づくことを躊躇ったが、そのまま周りを確認し、子供たちに近づいていった。
「あの台のやつは、この間ねぇ、霜が降りてたから」
「けど、やっぱりさ、高いから内緒だよね」
見ると、そのゲーム機にはアイスクリームやジュースが入っているようである。何種類ものパッケージがかぶることなく、重なっている。子供たちがじろじろと足下を見てくることなど気にしていない振りをして、小銭を数枚投入する。凍らせるとは、考えたものだなぁ。
実際、ゴトンという音は元よりも重くなったような気がする、取り逃したジュースを恨めしげに見ながら私はコンビニを出た。
奥の壁にはまたあの日と同じように張り紙が貼ってあり、「夜間はコンビニエンスストア営業中」とあった。夜にここを通ることはないだろうが、夜は夜で、憩いの場になっているのだろう。
その場所は、永遠に憩いの場であるのだろうか。
私を癒してくれるものは何かないだろうか。
夜の中に光が見える時代ではないのかも知れないと思いながら、石畳の上を歩き続けた。
作品名:『 癒し系コンビニエンスストア 』 作家名:みゅーずりん仮名