チェリーボーイのシャル・ウイ・ダンス
チェリーボーイのシャル・ウイ・ダンス
あれは蒸し暑くて、うさんくさい、禁断の西洋屋敷での一つの夏のことだった。近所の烏川(からすがわ)河川敷の近くの古い西洋屋敷に幽霊がでるという噂がある。
僕と河野内凱斗(かいと)はその烏川の河川敷にキャンプに行った。凱斗は昔からの親友だった。凱斗は僕を琉生(るい)と呼び、僕は彼を凱斗と呼ぶ。幼なじみで、水入らずの関係だ。僕は凱斗の家に何度も遊びに行ったし、泊りにも行った。凱斗の母さんも僕のことをよく知っている。凱斗も僕の家に何度も遊びに来て、何度も泊まりに来ている。僕の母さんも凱斗のことをよく知っている。
僕達は群馬県のある田舎に住んでいた。二人とも二十歳の大学生。でも僕は群馬の大学に、凱斗は東京の大学に行った。凱斗は昔から学業が秀でていたが、家は貧乏だった。夏休みなので凱斗は群馬に帰省してきた。凱斗のエピソードとして、小学校から一緒の奴らはみんな知っていることだが、凱斗が小学五年生のとき、学級委員兼、飼育委員だった。凱斗は正直でまじめな奴だったが、うさぎの餌のためにクラスからみんなで毎月一人十円ずつだしたお金の余った分を参考書を買うため使ったことがあった。凱斗は参考書もなかなか買ってもらえないほど貧乏だった。
「河野内さん。学級委員である人が飼育で集めたお金を自分のものにしていいのですか?」
「みんなのお金を自分のものとして使うなんて学級委員失格じゃないですか?」
当然クラスのみんなから批判の嵐を浴びた。凱斗は、
「すいませんでした。すいませんでした」
先生の横の教壇の上でみんなの前で泣きながら謝った。そのとき凱斗はクラスのみんなの前で土下座をしたんだ。僕は凱斗が可哀想で仕方がなかった。
凱斗は高校進学で私立の慶応大学も合格圏に入っていたが、なんせ家が貧乏だから僕と同じ群馬の公立の学校に入った。その高校では成績は学年トップだった。凱斗より成績が悪かった人でさえ、僕達の中学から四人、横浜の慶応付属高校に入り寮生活をしていたそうだ。彼らは金持ちで私立の高校に入りながらも寮に入っていた。
凱斗は高校のとき、高校の授業料が払えない学生がいる現状の中、奨学金制度の見直しのため、夏休みに横浜で募金活動をしていた。ちょうど僕は群馬から横浜に遊びに行ったとき、凱斗を見つけ、おどかしてやろうと、しばらく離れて見ていた。サラリーマンと思われる、四十代くらいの男が凱斗の募金箱に十円を入れる。たったの十円だ。凱斗は「ありがとうございました」そう頭を下げていた。なんだか不憫に思えた。
僕が凱斗の前に出て行こうとしたとき、あの慶応に入った四人組が凱斗の前に現れた。
「なんだ、河野内じゃねえか」
あれは蒸し暑くて、うさんくさい、禁断の西洋屋敷での一つの夏のことだった。近所の烏川(からすがわ)河川敷の近くの古い西洋屋敷に幽霊がでるという噂がある。
僕と河野内凱斗(かいと)はその烏川の河川敷にキャンプに行った。凱斗は昔からの親友だった。凱斗は僕を琉生(るい)と呼び、僕は彼を凱斗と呼ぶ。幼なじみで、水入らずの関係だ。僕は凱斗の家に何度も遊びに行ったし、泊りにも行った。凱斗の母さんも僕のことをよく知っている。凱斗も僕の家に何度も遊びに来て、何度も泊まりに来ている。僕の母さんも凱斗のことをよく知っている。
僕達は群馬県のある田舎に住んでいた。二人とも二十歳の大学生。でも僕は群馬の大学に、凱斗は東京の大学に行った。凱斗は昔から学業が秀でていたが、家は貧乏だった。夏休みなので凱斗は群馬に帰省してきた。凱斗のエピソードとして、小学校から一緒の奴らはみんな知っていることだが、凱斗が小学五年生のとき、学級委員兼、飼育委員だった。凱斗は正直でまじめな奴だったが、うさぎの餌のためにクラスからみんなで毎月一人十円ずつだしたお金の余った分を参考書を買うため使ったことがあった。凱斗は参考書もなかなか買ってもらえないほど貧乏だった。
「河野内さん。学級委員である人が飼育で集めたお金を自分のものにしていいのですか?」
「みんなのお金を自分のものとして使うなんて学級委員失格じゃないですか?」
当然クラスのみんなから批判の嵐を浴びた。凱斗は、
「すいませんでした。すいませんでした」
先生の横の教壇の上でみんなの前で泣きながら謝った。そのとき凱斗はクラスのみんなの前で土下座をしたんだ。僕は凱斗が可哀想で仕方がなかった。
凱斗は高校進学で私立の慶応大学も合格圏に入っていたが、なんせ家が貧乏だから僕と同じ群馬の公立の学校に入った。その高校では成績は学年トップだった。凱斗より成績が悪かった人でさえ、僕達の中学から四人、横浜の慶応付属高校に入り寮生活をしていたそうだ。彼らは金持ちで私立の高校に入りながらも寮に入っていた。
凱斗は高校のとき、高校の授業料が払えない学生がいる現状の中、奨学金制度の見直しのため、夏休みに横浜で募金活動をしていた。ちょうど僕は群馬から横浜に遊びに行ったとき、凱斗を見つけ、おどかしてやろうと、しばらく離れて見ていた。サラリーマンと思われる、四十代くらいの男が凱斗の募金箱に十円を入れる。たったの十円だ。凱斗は「ありがとうございました」そう頭を下げていた。なんだか不憫に思えた。
僕が凱斗の前に出て行こうとしたとき、あの慶応に入った四人組が凱斗の前に現れた。
「なんだ、河野内じゃねえか」
作品名:チェリーボーイのシャル・ウイ・ダンス 作家名:松橋健一