アンドロイドのペーパーテスト
ここでは君たちは一切のテストが免除される」
「……へ?」
「……え?」
昔からのライバルである山田も俺と同じ声を出した。
「君たちは一切テストされることはない。
だが、君たちのアンドロイドはテストしてもらう。入れろ」
生徒の人数分のアンドロイドが教室に入ってくる。
どれも同じ顔をして、ちょうど同じくらいの背丈。中に入れそう。
「ここで勉強した内容をアンドロイドに教えるんだ。
それで学んだアンドロイドがテストを受けて点数をつける。
人に教えたほうが頭に定着するからね」
「はん、そんなの楽じゃないか」
俺はライバルの山田の前にいることもあり強がった。
「ようは、アンドロイドに勉強を教えれてばいいんだろ?
自分で覚えたりする手間がなくっていいぜ」
負けじと山田が余裕たっぷりに声を出す。
「なにを、お前の学力なんてそう変わらないじゃないか」
「ははは、言ってな佐藤。俺はとっておきの作戦を思いついたんだ」
「なん……だと……!?」
「悪いな佐藤。次のテスト、このアンドロイドが完璧に答えてやるさ」
その日の授業が終わると、
さっそくアンドロイドに対して必死に勉強を叩き込んでいく。
「いいくにつくろう、鎌倉幕府!」
「これが連立方程式なんだ!!」
「この時の主人公の気持ちは~~」
「ヨクワカリマセン、マスター」
一生懸命教えているつもりなのに、
なかなかアンドロイドは覚えてくれない。
機械といってもものわかりは人間とさして変わらない。
「えっと……とにかく、こうなるから、こうすればいいんだよ!」
「マスター。デハ、ハカノバアイダッタラ?」
「それは……こうするんだよ」
「ヨクワカリマセン」
「んあーー!! 教えるのがこんなにも難しいなんて!!」
教えるには7倍理解していなくちゃ教えられないと聞いたことがある。
どうやらそれは本当のようだ。
自分が勉強するよりも、教えるほうがずっと勉強が必要になる。
「くそっ……山田の奴は何か秘策を思いついていた。
なんとかして、俺のアンドロイドをパーフェクトな状態に仕上げなきゃ」
山田にだけは負けたくない。
それはあいつも同じだろう、俺には負けたくないはず。
どんな秘策なのかはまるで見当もつかないが、
間違いなくアンドロイドを仕上げてくるに違いない。
「いったいどうすれば……そうだ!!」
絶対に山田のアンドロイドよりも賢くなれる方法を思いついた。
「山田の奴のアンドロイドの頭を交換すりゃいいんだ!
あいつがどんな秘策でアンドロイドを賢くしたところで、
その頭は俺のアンドロイドに交換してやるぜ!」
幸い、アンドロイドは不正防止のために同じ規格になっている。。
頭をこっそり交換したところでわかりはしない。
完璧だ。
山田、お前の秘策がどんなものか知らないが
どうやら俺の方が1枚うわ手だったようだな。
俺はアンドロイドに勉強を教えるのをやめて、
テスト直前に山田のアンドロイドと頭を交換する作戦を与えた。
「ワカリマシタ、マスター」
アンドロイドは作戦を実行した。
俺の練りに練った作戦は大成功し、誰にも見つからずに交換できた。
「やった! これでテストは完璧だ!」
アンドロイドだけのペーパーテストが開始される。
しかし、俺の交換後のアンドロイドはまるで筆が進まない。
「おかしいな、確かに頭は交換したはずなのに」
もしかして、アンドロイドの脳部分に何か問題があったのだろうか。
俺は一度、自分のアンドロイドの蓋をあけた。
「や、山田……!?」
アンドロイドの中には、山田が入っていた。
「秘策ってまさか……、自分が中に入って試験を……」
その後、アンドロイドを着ていた山田の首なし死体が発見され
もうテストどころではなくなった。
作品名:アンドロイドのペーパーテスト 作家名:かなりえずき