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同調率99%の少女(9) - 鎮守府Aの物語

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--- 3 追い詰められる少女




 流留はお昼休み中にも吉崎敬大を探したが見当たらず、誰にも頼ることができなくなっていた。あてもなく校内を歩く彼女の姿は、1年女子の間では、代わりの男子を探して歩いてると悪言をつかれてしまう始末。仕方なく吉崎敬大のメッセンジャーサービスのアカウント宛にメッセージを残すことにした。

 午後の授業が過ぎ、途中の休み時間。流留は携帯電話をチェックすると、吉崎敬大から返信があった。
「大変なことになっててゴメン。誤解解くのは無理そう。」
流留は返信する。
「敬大くんの言うことなら聞くんじゃないの?なんとかしてよ。」
すぐに返信が来た。
「ムリムリ。俺が話しても聞く耳持たん女子ばっか。何もかも都合の良いように取られてる。しかも午前中は女子から呼び出されて告白受けまくっててうぜーことになってる。ヘトヘト(~O~;)」
「そう。女子の間じゃ敬大くんへの告りに不文律があるらしいからそっちはしばらくすれば落ち着くんじゃない?」
「マジか。そっちは?」
「午前中までのとおり。女子の間のいじめって、男子のより陰湿なのね〜。あたしじゃなかったら大変なことになってたよ。あたしはこういうの慣れてるからいいけどさ。」
「ゴメン。用事できた。まああとd」

 敬大からのメッセージは途中で途切れ、メッセンジャー内での会話は中断した。

((まあ、人のうわさなんて2〜3日ほうっておきゃ収まるか。中学の頃の似たような問題あったときもすぐ収まったし。ここであたしが慌てて何かしすぎたら余計長引かせるだけだし。))
 流留は過去似た経験をしていたが、持ち前の豪胆さで切り抜けていた。


--

 放課後になった。流留は携帯電話を見ると、メッセンジャーに敬大からメッセージがあったのに気づく。
「放課後、B棟校舎の屋上入り口で待ってる。」
 それを見た流留は早速行ってみることにした。


 そこでは敬大が物陰に隠れるように待っていた。
「何……してるの?」
 少々情けない様子の彼を見て流留は聞いた。流留の声を聞いて吉崎敬大は顔を上げて確認した後立ち上がり、辺りを見回す。
「いやさ。朝から俺って見ると告りにくる女子ばっかで大変だったんだよ。今も女子の目をかいくぐってやっと一人になれたんだよ。」
「人気者は大変なんだね。」
「うっせぇ。まー、女子にそんな不文律があったなんて知らなかったし、俺が撒いた種だから自業自得なんだけどさ。」
 ほとんど同時に二人はクスクスと笑い出した。

 二人は状況を確認し合った。
「俺はもう一度みんなに話して誤解を解いてみようと思うんだ。その時はさ、ながるんにも一緒にいてほしいんだ。」
「あたしが一緒にいたら……まずくない?」
「それはどうなるかわからないけど、一人より二人のほうが説得力はありそうだろ?」

 敬大の案を聞いてうーんと唸り考えこむ流留。それよりもと流留は提案し返してみた。
「それよりもさ、この話、誰かがわざと漏らしたと思わない?そいつを探し出すべきだと思うな。」
「もしかして、あの時の足音の主か!?」
「うん。そうそう。」

「それは無理じゃね?証拠も何もないし。」
 言いながら敬大は立ち上がる。手を腰に当てて俯いて流留に視線を向けたのち、苦々しい顔をして言葉を続ける。
「とはいえ足音の主が事実を曲げて広めたのは十中八九確かだろうな。けど噂がここまで広まった今、大元のそいつを探しだして懲らしめても解決しきれない気がする。くやしいけどそいつはもう放っておいて誤解を解いて回ったほうが俺はいいと思う。」

 流留は彼を見上げていて首が痛くなったのか、自身も腰をあげて膝立ちになり、すぐに立ち上がって階段の手すりによりかかる。

「……結論がでないね。」
「あぁ。」

「あたしはさ、もういっそのことこの話題は無視して放っておいたほうがいいと思う。騒いだら騒いだだけ逆効果。敬大くんは……人気があるし普段通りしていればそれでもう問題なくなると思う。」
「そういうもんかな?」
「そういうもんよ。」
「でもながるんは?」
「あたし?あたしも基本は無視するからいい。こういうの慣れてるし。」
 流留のその一言に敬大は一抹の不安を覚えたが、流留の性格は理解していたつもりなのでそれ以上気にしないように感情を抑えた。

「ゴメンな、ながるん。俺が告白したせいでこんなことになって。」
「いいって、もう。」
「さすがにこんなことになって、ながるんに迷惑かけてまで付き合ってもらいたいとは思わない。」
「……。」
「少なくとも、高校にいる間は俺はもうながるんに迫ったりはしない。俺は本気で好きだから、これ以上迷惑をかけたくないんだ。」
「敬大くん……あたしは前も言ったけど、君の気持ちには答えられないから、そうしてくれると助かる。」
 敬大の言葉を額面通りに受け取る流留。その言い方を目の当たりにして敬大は口を開きかけたが、すぐに閉じ、その小さな動きを流留に悟られないようにした。
 その日は結局二人とも確たる対応策は出ずにいたため、ひとまず噂話しには無理を決め込むようにした。


--

 一方の那美恵たちはというと、流留のことも気にはなるが表立って気にかけるわけにはいかないため、その日もいつもどおり放課後に艦娘の展示を行なった。
 前日よりは少なかったがそれでも6〜7人来る盛況さであった。同調は、流留が合格したとはいえもしかすると他にも同調できる生徒がいるかもしれない。可能性は多いに越したことはないということで希望者に同調を試してもらったのだ。

 結果、2人試して2人とも不合格。
 その内の一人は、前日も試した女子生徒であった。その生徒は前髪が長く、後ろは長い髪を雑に縛っただけの、お世辞にもオシャレとはいえない、オドオドした態度でメガネを掛けた少女であった。いかにも目立ちたくないですといった風貌で、那美恵はひと目で気づいていた。

「あれ?あなた、確か昨日も試しに来たよね?」
「!! あ……はい。すみません。」
「ううん。いいよいいよ。でも結果は同じだと思うよ? それでもいい?」
「あ、ええと……はい。試したいんです。」

 自信なさげな様子でその少女は那美恵に頼んで食い下がる。頭をポリポリと掻きながら那美恵はそれに承諾し、彼女に川内の艤装を試させた。
 結果は32.18%と、不合格であった。その結果を受け、しょんぼりと(那美恵にはそう見えた)帰っていくその少女。

「あ、名前聞くの忘れた。ま、いっか。」
 2回試しに来たその少女のことを、那美恵はそれ以上は気に留めなかった。