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同調率99%の少女(9) - 鎮守府Aの物語

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--- 7 彼女の胸中



 資料室に流留が入ると、扉の隣で待っていた三戸は彼女が扉から離れたのを確認してから扉を閉めた。そして自身もあとに付いて行って資料室の開いているスペースに立った。
 すでに那美恵と流留は椅子を見つけて座っている。三戸は二人の境目に椅子を持ってきて座る。ちょうど三角形に位置取りする形となった。

「さて、今日内田さんに来てもらった理由はわかる?」
「そういう確認いいですから目的だけ言って下さい。」
 流留は那美恵に突っかかってくる。が、那美恵は特に意に介さず言葉を続けた。
「わかった。今日来てもらったのはね、艦娘のことではないんだ。三戸くんに話してくれた、相談のことなの。」

 その言葉を耳にした瞬間、流留はビクッとして一瞬で表情をこわばらせた。
「相談してくれたことはね、今着々と対応中です。あなたのご希望どおり……に本当になるかどうかはみんなの反応次第だけど、あたしたちに出来る最善のことはするつもり。そこでね、最善の結果を生むためにはね、あたしたちにはどうしても足りない情報があるの。」
 那美恵は一息置いた。流留はゴクリと唾を飲んで言葉の続きを待つ。三戸も同様の様子で生徒会長の言葉を待っている。
「あなたの口から、あなたに起こったことを教えて欲しいんだ。」

「!!」
 触れてほしくないところに触れてきた、流留はそう感じた。それを悟ったかのように那美恵は続ける。
「もちろんプライバシーもあるし、あなたが言い出しづらいこともあるかもしれないね。だから無理にとは言わないよ。それに聞いたとしても、それを無理やり今回の解決策に絡めたりはしない。」
「……。」流留は口を真一文字に閉じて聞いている。

「あたしたちはね、せっかくあなたから相談を受けたんだから、あなたの味方でいたいの。あたしたち2年生にも聞こえてくる噂や例の投稿、あまりにひどいと思ったもん。けど、実際のところは知らないからなんとも言えないんだよね。あなたのために動きたくても、あなたの周辺の本当のことがわからないから本当の解決ができないの。このある種矛盾、わかってもらえるかな?」

 那美恵の問いかけに対し、コクリと頷く流留。しかし反論する。
「……けど、あたしは、言う必要はないかなと思ってます。あたしの味方をしてくれるのは嬉しいし生徒会の力で上からガーッと押さえつけてくれればそれでいい。あたしのこと助けてくれるってなら、少しはあたしの気持ちを察してくれてもいいんじゃないですか?」
「なんで? 言わないとさ、誰もあなたの本当のことわかってくれないよ?あなたが正しいならそこはきちんと言うべきだと思うよ?そうでないと、内田さんはあんなひどい誤解をされたまま。嫌でしょ?」

 正論だ。流留はそう思った。
「別に……もうどうでもいいです。きっと嫉妬した馬鹿な女子たちがやらかしてくれたことなんで。そういう輩は無視するに限りますし。」

 そう言い放つ流留は、たしかに自分にとってはもはやどうでもいいことと捉えていた。これからまだ2年と少し高校生活は続く。かなり堪える噂と投稿だが、1年生の生活が過ぎればきっと自然に収まる。周りは所詮愚かな凡人の同性だ。今までの経験則で、噂なんてすぐに立ち消えるとわかっている。だが見た目で証拠が残るSNSの投稿はまずい。だからこそすぐに目につかない程度に収めてくれさえすればそれでいい。
 一方で、自分の根源でもあった日常を壊してくれた同級生のいる高校での、これ以上の日常なぞもういらない。どうせ今の人間関係が固まってしまえば、あたしが今まで接してきた(男)友達はいなくなるも同然なのだから。あたしはきっとボッチになる。ボッチ自体は自分にとっては大したことではない。あたしが恐れるのは、かつての日常を模した日常が脅かされること。だからあたしは決めたのだ。自分でも矛盾しているかもと思うけれど、どうせ壊されるならこれ以上学校で、理想だった日常を作る気などないということ。
 戦いという同じ目的のために集まり、人間関係でいざこざが起こらなそうな艦娘としての生活とその先に、望みをかける。新しい出会いを求める事自体には抵抗は一切ないから艦娘の世界に飛び込まない手はない。

 流留は黙ったまま心にそう思った。流留の沈黙を視界に収めたままの那美恵はさらに突っ込む。
「はぁ……あのね。そう達観するのは勝手だけどさぁ。あたしの気持ちを察してくれっていうのはさ、長年付き合いのある人同士だからこそできるんだよ? 高校入ってたかだか数ヶ月程度かそれ以下の周りの人が察してくれるなんて自分勝手なこと、まさか思ってないよね?だとしたらそういう考えはやめたほうがいいよ。」
 さらに那美恵の口撃が続く。

「あとね、なんで本当のことを知ってもらうのをそんなに恐れてるの?」
 那美恵は流留が肩をすくめて縮こまっている様子をを見ていた。那美恵はそんな彼女の態度を見て、確実に何かあると気づいた。流留はまったく意識していなかったが、自分の決意とは裏腹に秘めた感情が態度に表れていたのだ。
 
「ちがっ! あたしは怖がってなんか!」
「じゃあ話して。でないとあたしたちはあなたを助けないよ。」
 実質脅しである那美恵の言葉を聞いた流留と三戸はそれに反発する。

「!!」
「会長!それじゃあ脅しっすよ!それはいくらなんでも……」
「まぁ、それは冗談としてもね。今すぐでなくてもいいから、本当のこと話して。こう言ったら反発食らうかもしれないけど、あたしはあなたに縁を感じたの。縁がなければあたしは生徒会長として当たり障りないことしかやらないと思う。なんの縁かは……きっとあなたならすぐに気づくと思う。縁を感じたからあなたをなんとしてでも助けたい。」

 流留は反論した。
「あたしのこと何も知らないくせに、勝手に縁なんて感じないでくださいよ!生徒会長はあたしの味方なんですか?それとも? 正直言って、生徒会長の態度見てるとわからなくなってきます。」
「お互い様だよ。あたしはあなたのことがわからない。ほとんど初対面だし、あなたが言うところの察してくれだなんてとてもできない。何も知らないんだから知ろうとするしかないじゃない。」

 那美恵は背もたれにグッと体重をかける。椅子が地面に擦れてキシッと鳴った。一旦上を向き、一拍整えた後続ける。
「それにね、あたし思うんだぁ。血のつながりよりも、旧知のつながりよりも、初めて会った人に一瞬で深いつながりを感じることって、ある気がするの。」
「それが、あたしとの縁だっていうんですか?」
「うん。で、その縁は見事繋がりを示してくれた。……それが、艦娘になれるという資格。」
「艦娘……」
「あなたも何か思うところがあったから、いきなり艦娘になりたい!って三戸くんに打ち明けてくれたんだよね?それだって、縁なんだよ。」

 那美恵の言葉の途中で小さく頷き、口を開かない流留。

「無理強いはしないよ。あなたが気持ちを落ち着けてから、ハッキリと真実は○○だから助けてくださいってあたしを頼ってくれるのを待ってる。あたしはね、あなたには気持ちよく高校生活と艦娘生活を謳歌してほしいの。」
「生徒会長……。」