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同調率99%の少女(9) - 鎮守府Aの物語

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--- 6 生徒会の対策


 展示終了の時間が訪れた。那美恵たちは展示を片付けて帰ることにした。3人とも三戸のことは気にはなるが、生徒会室に3人揃って戻る頃にはさすがにカタはついているだろうと捉えていた。阿賀奈とは視聴覚室の片付けが終わった後に別れた。

 最初に運ぶものを生徒会室に持って行って、那美恵達3人が生徒会室の扉を開けると、同時に生徒会室から出ていこうとする流留と鉢合わせになった。

「うあっ!?」
「きゃっ!」

 先頭にいた那美恵と部屋から出ていこうとしていた流留は同時に驚いてのけぞる。そして那美恵が真っ先に反応して口を開いた。

「あれ、内田さん? 生徒会室から出てきてどうしたの?」
 生徒会室から内田流留が出てきたことに驚いてみせた那美恵は本人に問いかけた。

「あ、生徒会長!? あの〜ええとー……。」
 流留は言い淀んでまごつき、部屋の中にいた三戸をチラリと見て視線を送った。その視線を受けて、三戸が代わりに答えてくれるものと彼女は思ったが、三戸のしゃべりは違うものだった。
「内田さん、いいんじゃね? 直接本人に言えばさ。」
「うー……それはそうだけど。」

 普段のハツラツさはなく、ソワソワする流留。そんな様子の流留を見て那美恵は流留を一旦生徒会室内に入るよう促し、提案した。
「とりあえず部屋に入って待っててくれるかな? お片づけした後ゆっくりはなそっか。」
「……はい。」

 生徒会長である那美恵の言うことにおとなしく従い、流留は生徒会室に戻って三戸のとなりに座って待つことにした。
 那美恵たちはその後せわしなく生徒会室と視聴覚室を行き来して展示道具を片付けている。最初は三戸も黙って座っていたが、再び戻ってきた三千花にどぎつく注意を受け慌てて視聴覚室へと向かって行った。

「あの……あたしも手伝いましょうか?」
「ううん、内田さんはいいのよ。どうせすぐ終わるし、これ生徒会の仕事のようなものだから。」
 三千花は頭を振り、流留をそのままにさせて再び視聴覚室へ戻っていった。一人取り残される流留はぼうっとしてるしかなかった。


--

 数分後、ようやく生徒会の4人が生徒会室に戻ってきた。5人になったところで、続きが話された。
 それは三戸が対応した事の確認の意味をこめた繰り返しだった。

「改めて内田さん、お久しぶり。元気にしてた?」
「……。」
流留は落ち着いた様子でいる。が、那美恵から話しかけられても口を開こうとしない。

「内田さん。」
 三戸が一言名を呼んで促す。すると流留はようやくしゃべりだした。
「生徒会長にお願いがあります。あたしを、艦娘にしてください。鎮守府っていうところへ連れて行ってください。お願いします。」
 流留の口から発せられたのは、それだけだった。彼女が今置かれている状況については触れられなかったのに那美恵は気づいたがあえてそれを指摘はせず、片腕をおもいっきり揚げてガッツポーズをしつつ一言返事を返す。

「おっけぃ!やっと決心してくれたんだね!嬉しいよ〜」

 那美恵の表情はにこやかに、一方で艦娘になることを決心した流留の表情は目を細めて暗い表情をしたまま。その二人の様子をみた三千花は那美恵があえて触れなかった流留の今の状況について我慢できずに指摘する。
「艦娘になるのはいいんだけど、内田さん。あなた、今自分がどういう状況に置かれているかわかってる? なんで今このタイミングで艦娘に? 私はちょっと理解できない。説明してくれない?」
 那美恵とは違ってビシビシと突っ込む三千花。流留はさきほど三戸に対してそれ以上は言わせず、言わなかったことを、ここでも同じようにするつもりでいた。

「そんなの、副会長には関係ないじゃないですか。あたしは艦娘部に入りたいってことを伝えるためだけにこうしてここにわざわざ残ったんですから。」
「!!」
 流留の言い方と態度に激昂しかかる三千花。それを那美恵が手で遮って止める。

「まぁまぁみっちゃん。艦娘になってくれるって言ってるからとりあえず今はそれでいいとしよ?その他のことはきっと三戸くんと話したんだろうし。ね? ね?」

 そう言って那美恵は三千花と流留に目配せをした。異なる対応を見せる那美恵と三千花を流留はこう思った。ちゃらけているけどなんか適切に配慮してくれる良い先輩と、いかにも真面目ぶってそうでつっかかってくるおせっかいな先輩。
 流留は中村三千花という先輩とは気が合わないと直感した。
 一方でそれは三千花にとっても同じだった。自分の現実が見えていないのか見てないのか、突然関係ないことを言い出す今ある意味ホットな1年生。きちんと振る舞う気がないのか。
 到底自分とは気が合いそうにないと。

 牽制しあっている二人を見て那美恵は虚空を見上げながら「んー」と喉を震わせて唸ったのち、つぶやきだした。
「これはあたしのひとりごとね。あたしは、助けをきちんと求めてきた人はなんとしてでも助ける。そうでない人には、まわりを取り繕う程度に助けるだけ。あたしってなんてクールなんだろ〜!?」

 突然わけのわからないことを言い出す那美恵に流留は怪訝な表情をして静かに驚いた表情を見せた。三千花は、おそらく自分と内田流留に対して言ったであろうそのセリフの意味するところを理解し、はぁ、と溜息をついた後に那美恵に向かって言った。
「わかったわよ。なみえの判断とやりかたに従うわ。でもお昼にみんなで決意したばかりなのに、どうなっても知らないわよ?」


 三千花の忠告とも取れる愚痴を那美恵は手をひらひらさせて受け流して、次の一言で話を進めることにした。
「よっし。じゃあ時間も時間だし、最後に内田さんに川内の艤装との同調、もう一度試してもらって今日は終わろっか。そしたら内田さんはもう帰っていいよ?」

「はい……えっ? また、その機械試すんですか?」
 軽く返事をしたあとに流留は最初に同調したときのあの恥ずかしい感覚を思い出して頬を赤らめた。その様子を見て那美恵は流留の耳元に顔を近づけ、そうっと小声でフォローの言葉を囁いた。
「だいじょーぶだいじょーぶ。あの感覚は最初だけだから。多分もう起きずにすぐに艤装と同調出来るはずだよ。ささ! レッツトライ!」
 告げられた後の流留の耳は赤みを帯びてその身は熱を帯びていた。

--

 軽い那美恵に促され、一同は生徒会室に保管するために持ち運んできた川内の艤装からコアの部位とベルトを取り出し、那美恵はそれを流留の腰にまこうとした。

「会長、あたし自分で巻きますよ。」
 そう言って流留は自分でベルトを腰に巻いた。制服のスカートにもベルトがあり、艤装のベルトはそれよりも若干幅と厚みがあるので、制服のそれよりも少し上あたりで巻くことにした。

「じゃあ呼吸をして落ち着けて。この前あたしが教えたやり方覚えてる?」
「……いいえ。」
「アハハ。正直でよろし〜。こうするんだよ。じゃあやってみよ?」

 流留は深呼吸をして、同調する準備が整った合図を那美恵にする。それを受けてタブレットを持った三千花がアプリから川内の艤装の電源を入れようとする。