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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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10歳おきの人間検定

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「すみません、当店は20歳未満の方はお断りしているんです」

「はぁ? 生まれてもう40年もたっている。
 ほら、誕生日がこうなってるじゃん。20歳以上だよ」

「いえ、人間検定を受けた人でないと、25歳とは……。
 あなたは、19歳と240ヶ月です」

「ええええ!?」

結局、店には入れなかった。
家に帰って「人間検定」というのを調べてみた。

「あった!! なになに……。
 英語検定、漢字検定などと同じように
 人間のありかたを10歳おきに決める検定だって?」

さらに下の注意書きも読み進める。

「人間検定を突破しないことには、
 その年代の人間としてある買われません」

試験を確認してみると、本当に10歳おきに検定があった。
ぜんぜん知らなかった。

10歳検定:友達を作る。

「あ、10歳の検定は突破してるな。友達できてるし」

20歳検定:彼女を作る

「うっ……これか……。これで20歳として認められなかったのか」

人間検定はいわば年齢の関所。
条件を満たさないことには先に進むことができない。

「ええい!! 彼女くらいサクッと作ってやるわぁ!!」



できました。


やってみると意外に簡単だった。
今まであれだけ苦労していたのがウソみたいだ。

「よし、彼女もできたし20歳検定も突破だ!」

20歳として認められたことで、
俺の年齢は19歳と240ヶ月から、40歳へと変わった。

これでいままで行けなかった店にも行くことができる。

調子に乗っていろんな場所へ足を延ばしてみると
ふたたび受付で止められた。

「申し訳ございません。ここから先は30歳以上のみです」

「またかよ!!」

再び家に帰って、30歳の検定内容を確認する。


30歳検定:結婚し、子供を作る


「これはまた……ハードル高いな」

とはいえ、30歳にならないと仕事も出世できないし
さまざまなサービスも受けられなくなる。

俺は彼女に結婚指輪を送って結婚にこぎつけた。
本気で結婚したいわけじゃなかったけれど
30歳にならないと不便なことが多いかったのが理由だ。

「あ、30歳以上ですね。ではこちらへどうぞ」

「どうも」

30歳になったことで、20歳検定ではいけなかった場所にいけるようになる。
これだったら、早いところ40歳検定も受けたほうがいいだろう。


40歳検定:一軒家を買う


「……え?」

一軒家?
たしかに、40歳以上で家族がいると一軒家のイメージあるけど。

同い年でバツイチの妻は以前に一軒家を購入していた。
なので40歳認定試験はクリアしている。

置いていかれるという怖さはあったものの、
だからといって何が損するわけでもないので、30歳のまま日々を過ごした。



それから数年。

妻はみるみる歳を取り、子供はめきめきと成長した。
でも、俺の体は依然として30歳のころのままだった。

「まさか……!! この検定を突破しなければ、体も老いないのか!?」

とんでもないことに気付いてしまった。
検定を悪用すれば、老化から逃れることができる。

このまま30代を続けて行けば、ずっと若い体のままだ!

「俺は永遠の30代だぁ!」

いくら夜に飲んでもガタが来ない。
軽く運動してもまだ疲れない。

バイタリティにあふれたこの体は手放したくない。
運動会ではどのお父さんよりも一等賞。

「ようし! 遊園地にでも行くか!」

そこで子供を連れて遊園地にいくことに。

「父さん、でもあの場所って子供すぎたら入れないって話じゃない?」

「安心しろ、お前は10歳検定を突破しているだろ。
 大丈夫に決まってる」

遊園地につくと、息子はどきどきながら入口に向かった。


「10歳以上ですね、中へどうぞ」


拍子抜けするほどあっさり息子は園内に入れた。

「ほらな? 大丈夫だったろ?」
「そうだね、父さん」

すっかり安心して俺も園内に踏み出した。


「あの、すみません。10歳以下の方はお断りしてるんです」


「……は? 俺は30歳試験を突破している。
 まごうことなき30代だ!」

「いえ、そうではなく……」

受付の人は気まずそうに顔をそらす。


「あの、ここの年齢制限は精神年齢なんです……。
 いつまでも30代で留まって、
 成長しない人の精神年齢は……その……あはは」


精神年齢制限をパスした息子は園内から手を振っていた。

「父さん、なにやってるの? 早く入って来なよーー」