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シーラカンス
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novelistID. 58420
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こわがりおばけのピカ

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こわがりおばけのピカ



 ある日、ちかちゃんが道を歩いていると、公園の入り口のところにおばけがいました。
「うえーん。うえーん」
「どうしたの?」
 ちかちゃんは聞きました。
「僕、おばけの世界のテストで、おばけの国からおいだされちゃったんだ」
 おばけは泣きながらこたえました。
「テスト?」
ちかちゃんが聞くとおばけはこたえました。
「僕はおばけのくせに今までだれもこわがらせたことがなくて赤点ばっかり。そしたらおばけの国の先生が怒って追加のテストになっちゃったんだ・・・」
「まあ!大変!」
ちかちゃんはおばけの世界にもテストがあることを知ってびっくりしました。
「それで、先生は言ったんだ。「とにかく誰でもなんでもいいからこわがらせることが出来たならおばけの国に帰ってきてもいいぞ。しかし期限は今日までだ!って」
「それなら、あたしが手伝ってあげる」
 ちかちゃんは拳でむねをどん!とうちました。
「本当!?ありがとう!僕、おばけのピカ。よろしくね」
「よろしく、ピカ。私はちかよ」
二人は手をつないで歩き出しました。



「さて、どうしよう」
「本当は、ちかちゃんがこわがってくれるのが一番手っとり早いんだけど・・・」
「うーん・・・」
ちかちゃんは困りました。なぜって、ピカはおばけに似合わずとっても可愛い外見をしていたからです。
(おうちで飼ってペットにしたいくらい・・・)
ちかちゃんはこっそりそんなことを思ったほどでした。でも、ちかちゃんでさえそんなことを思うのならば、ほかの人なんて絶対にこわがらせることなんか出来ません。
「どうしよう・・・あ!」
ちかちゃんはいいことを思いつきました。



ちかちゃんはピカを近所の長谷川さんちの前まで連れていきました。
「あそこにいるのがコロだよ」
ちかちゃんが指さした方を見ると、家の横の犬小屋にとってもかわいらしい子犬がつながれています。
「なんでもいいなら、コロをこわがらせればいいんだよ!」
そう言って、ピカの腕をぐいっと引っ張りますが、ピカはさっきから頭を抱えてうずくまり、こっちに来ようとしません。
「どうしたの?ピカ」
ちかちゃんが聞くと、ピカはぶるぶる震えながらこたえました。
「ブルブルブル・・・こわいよう、こわいよう」
「なにがこわいの?ピカ」
ちかちゃんが不思議そうにたずねると、
「もちろんあの子犬だよ!き、牙が生えてる。あ!今吠えたよ!むりだよう、こわいよう!」
そう言うと、ピカはちかちゃんをおいてすすすーっと逃げていってしまいました。
「あきれた!」
ちかちゃんはあわててあとをおいました。



ちかちゃんがあとをおいかけると、ピカは公園にいました。
ピカはまだ震えています。
「ブルブルブル・・・」
「ねえ、ピカ。もう大丈夫だよ。コロいないよ」
ちかちゃんは言いました。
それにしても、子犬のコロにあれじゃあ・・・ちかちゃんは頭をなやませました。
(いったい、ピカに何を怖がらせたらいいんだろう?)
ちかちゃんが考えていると、公園の池の方からゲコ、ゲコゲコと、蛙の鳴く声が聞こえます。
池の蓮の葉の上を、小さなカエル達がぴょこぴょこと飛び回っているのでした。
「これだわ・・・!」
ちかちゃんは今度こそと思い、ピカを池につれていきました。
「さあ、ピカ!このカエル達を怖がらせてみて!」
「え、このカエルも少し怖い・・・」
「いいから!!」
「う、うん!」
ピカは少しためらっていましたが、カエル達の方に向き直ると、こんしんの力を込めて大きな声で・・・
「ばあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
(やった・・・!どうかな・・・?)
ちかちゃんは拳を握りしめて、その様子を見守りました。
しかし・・・
「ゲゴ!」
と、言ったきりカエルはうんともすんとも反応しません。知らん顔で池の奥の方へと飛び跳ねて行ってしまいました。
それを見たピカはガッカリ・・・。
「やっぱり僕には、無理なんだ・・・」
「そんなことないよ。一緒にがんばろう」
ちかちゃんはピカを慰めました。



夜になりました。それまで、ちかちゃん達は公園にいる様々な生き物、(野良猫や池の鯉や、蟻なんかも)怖がらせようと必死でしたが、どれ一つとしてうまくいきませんでした。
ちかちゃんはさまざまな生き物を捕まえるためにあちこち潜ったり、掘ったり。頭の先からつま先までゴミや汚れまみれになってしまいました。
「もう、私帰らなきゃ・・・」
あたりは暗くなっています。つい生き物探しに夢中になってしまったせいで、ちかちゃんがおうちに帰る時間はとっくに過ぎてしまっていたのでした。
「そっか。今までつきあってくれてありがとう」
しょぼくれた様子でピカが言いました。
「ごめんね、ピカ。力になれなくて」
ちかちゃんもつられてしょんぼりしまた。
「ううん。ありがとう。つきあってくれてうれしかっ・・・」
ピカは言いかけ、その時ちかちゃんの頭に大きなゴミがついているのを見つけました。
「あ、ちかちゃん。頭にゴミがついてる。取ってあげるね」
「ありがとう」
ピカがふわりと舞い上がり、ちかちゃんの頭に乗ったときです。
「ちかー!?どこなのー?」
「あ、ママ!」
向こうからちかちゃんのことを心配したママが、ちかちゃんを迎えに来てくれました。
「あ!ちか!こんなところにいたのね!心配した・・・ってきゃーーーーーーー!ちかがおばけに食べられてるーーーーー!」
ちかちゃんのママはびっくり仰天して、そのまま道路に倒れてしまいました。
「ママ!」
ちかちゃんは、ママにかけよりました。
ちかちゃんの頭に乗ったピカは、体がちかちゃんの頭をすり抜け、ちかちゃんの頭からピカが生えているように見えました。それがちかちゃんのママからはちかちゃんが食べられているように見えたのです。
「ママったらそそっかしいんだから」
ちかちゃんは笑いました。
「い、今僕・・・」
一方、ピカは声を震わせながらちかちゃんの頭から降りてきました。
「今、僕、この人を怖がらせた・・・?」
「あ、そうか!ほんとだ。ピカ、ママを怖がらせたよ。テスト合格!おばけの国に帰れるね」
「うん!やったー!」
ピカは飛び上がって喜びました。


こうして、ピカはちかに手を振りながら暗闇の中へと消えていきました。
「あーあ、楽しかったな」
ちかちゃんはもうピカに会えないことを残念に思いました。そして起きたママと一緒にしぶしぶおうちに帰りました。
でもね・・・
ピカはまた、赤点を取ってちかちゃんのところにやってきたのですって。


<終わり>