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シーラカンス
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novelistID. 58420
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ゆうちゃんとかみなりずもう

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ゆうちゃんとかみなりずもう

ゆうちゃんは家の窓から外を見上げて頬杖をついていました。
「早くお空晴れないかなぁ」
ここ最近、ずっと雨の日ばかりです。時折雷もなっています。
ゴロゴロー、ピカ!ドシーン!
また大きな稲妻が空から落ちてきました。
「キャ!」
ゆうちゃんはあわてて窓から離れて部屋の真ん中に移動しました。
「お外で遊びたいよう」
ゆうちゃんはふう、と息を吐きました。すると、ゆうちゃんがついたため息が白くもやもやした丸いものに変わっていきました。
「こんにちは、ゆうちゃん。わたし、ため息のふわりん。ゆうちゃんのため息から生まれたの」
「わあ、息がまんまるの煙になった!」
ゆうちゃんはびっくりました。
「ゆうちゃん、お外で遊べなくて退屈してるのね。じゃあ、一緒にお空の上に行って遊びましょ」
ゆうちゃんから出たふわりんはそう言うとどんどん大きくなってゆうちゃんを包み込みました。
「それじゃあ、いくよ!」
そう言うと、二人はふわふわふわふわ、窓から空へ向かって飛んでいきました。
「すごーい、飛んでる」
家や木や車がどんどん小さくなっていきます。
「さあ、もっと上がりましょう」
ふわりんはどんどん上に昇り、ついに雲の上にたどり着きました。雲の上は穏やかに晴れ、下の世界とはまるで別世界です。
「ここならいっぱい遊べるわ」
ふわりんはゆうちゃんを雲の上におろすとまた小さくなりました。
「うん、でもなにして遊ぼう」
ゆうちゃんが考えていると、向こうの方でなにやらずいぶん騒がしい声が聞こえました。
「いけー!やれー!」
「そこだ!とっちめろ!」
見るとそれは黒雲に乗った強そうな雷様でした。それも一人や二人ではありません。辺り一帯を埋め尽くすかのように大勢の雷様が何かを囲んで楽しそうに叫んでいるのでした。
「行ってみましょう」
ふわりんに連れられゆうちゃんは雷様たちの近くまでやってきました。
ゆうちゃんが雷様の波をかき分けて輪の中心に入っていくと、そこでは雷様たちがおすもうをとっているところでした。
「おりゃー!」
一人の雷様が相手の雷様を投げ飛ばしました。すると、相手の雷様は大きな尻餅。
ドシーン!という音が辺りに響いたかと思うと、雲の下ではドンガラビッシャーン!大きな雷の音。
「そうか!ここで雷様がおすもうをとっていたから、最近は雨ばっかりだったんだね」
するとゆうちゃんは
「こんにちは!」
と、大きな声を上げました。
雷様が一斉にゆうちゃんたちの方を見ます。
ゆうちゃんは最初少しどぎまぎしましたが、自分の気持ちに負けないよう大きな声を出して言いました。
「お願いがあります!僕とおすもう勝負をしてください!」
それを聞いた雷様たちはげらげらと笑い出しました。
「こんな子供と勝負だと?」
「話にならん」
それでもゆうちゃんは真剣でした。
「お願いします!僕が勝ったら、おすもうを止めてください。いいお天気にしてください」
最初は笑っていた雷様もゆうちゃんが真剣なのを見ると、真顔でうなづきました。
「いいだろう。では、ひとつわしが」
そう言って出てきた雷様は周りにいる雷様よりひときわ大きく強そうでした。
ゆうちゃんは少しだけ足がすくみそうになりました。
「ゆうちゃん!一緒にがんばろう!」
隣にいたふわりんがゆうちゃんの肩にのって励まします。ゆうちゃんはうなづいて土俵へと向かいました。
「見合って見合って」
行司の雷様がゆうちゃんと雷様のあいだに腕を伸ばします。
「のこった!」
「うぉーーーーー!」
雷様がゆうちゃんに勢いよく飛びかかってきます。そしてゆうちゃんとがっぷりくみあいました。
「のこったのこった!」
ゆうちゃんのおでこにも雷様のおでこにもびっしりと汗が浮かんでいます。
「ははは。どうした小僧」
雷様は笑いながらじりじりとゆうちゃんを土俵際に押していきます。
「う、っく・・・」
すでに土俵際ぎりぎりです。ゆうちゃんの力も限界に近い付いていました。そこで、
「ええーい!」
最後の力を振り絞り、身をよじって雷様を土俵から投げ落としました。
「まさか・・・!」
雷様がつぶやいた瞬間です。

どどどどどーーーーん!

雷様が土俵から落ちて、しりもちをついた瞬間、今まで聞いたこともないような雷が雲から落ちていきました。
「やった!勝った!」
「やったね!ゆうちゃん!」
ふわりんも大喜びです。周りの雷様たちもこれまでにないくらいの歓声を上げました。
「よくやった!」
「いやいや、見応えのある試合だった!」
すると、土俵から落ちた雷様はゆっくりと腰を上げました。
「いやはや、参った。こんな子供にしてやられるとは。約束通り、相撲大会はこれにてお開きだ」
「やったー!」
そうして、ゆうちゃんはまたふわりんに包まれておうちの庭に帰ってきたのでした。
「うわぁ。きれい」
空は嘘のように晴れ上がり、お庭の草木からはきらきらと光る滴がポタポタと滴り落ちていました。
「あ、見てゆうちゃん」
ふわりんが空を指さすと、そこにはきれいな虹が架かっていました。
「これでお外で遊べるね」
ふわりんはそう言うと、自分の体をくるくると回し始めました。
「どうしたの?」
ゆうちゃんが不思議に思って聞くと、
「ゆうちゃんのため息が終わったから、お別れするのよ。これからはお友達と楽しく遊んでね」
くるくる回るふわりんの体はだんだんと透明になっていきます。
「ばいばい、ゆうちゃん」
そうしてたふわりんはフッと消えてしまいました。
「ありがとう。ふわりん」
ゆうちゃんは空を見上げました。そこには雲一つない青空が広がっていました。

おしまい。