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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ハイテンション・ジャパン

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ネットのニュースの最大手『ネットジャーナル』の記者・ジョンは、
ある国の記事を作っていた。

「やあ、ジョン。今は何の記事を作っているんだい?」

「ああ、編集長。
 実は今日本という国の成長について記事を作ってるんです」

「なんだそのクソつまらなそうな記事。
 ネットの記事なんだから、注目されるようなネタを探して来い」

「でも、最近は日本の急成長はすごいですし
 なにか秘密があるように感じてならないんです」

「そんなのはハリウッド映画にでも作らせておけ。
 いいか、ネットの記事ってのは手軽に読めるんだ。
 もっとこう……話題になって賛否両論巻き起こすようなのがいいんだ」

とはいえ、ジョンは納得できなかったので記事の作成をつづけた。
そして現場取材ということで日本にもやってきた。

「ここが日本……。
 つい最近まではおとなしい人間性だと聞いていたが……」

日本ではみんな幸せそうな顔で、
頭を振ったり、ハイテンションで叫んだりしている。

「これはいったい……」

ジョンは偉い人に取材をしてみることに。

「日本はずいぶん前と空気感が変わっていますが?」

「ええ、"日本を元気にプロジェクト"をしたんですよ。
 毎日このエナジードリンクを飲むように決めているんです」

偉い人が出したのは『ジャパンエナジー』。

「これを飲むと俗にいう"躁(そう)"状態になるんですよ。
 頭はしゃっきり、意欲はめきめき、性欲もあがります。
 つまり、スーパーハイテンションです。ひゃっほー」

「明らかにヤバそうですね……」

「体に害はありません。
 それどころか、導入後に日本は高度経済成長!
 少子化問題も解決! うはうはです! ひゃっはー!」

「興味深いです」

「そうでしょう? よかったら滞在してみてください。
 この良さがわかってくれるはずです!」

ジョンは日本に滞在することに。
ジャパンエナジーは無料で配給されるが、怖かったので飲まなかった。

誰もがハイテンションでバカをやっている。
ルールやモラルもなくなった無法地帯。

どこも24時間明かりはつきっぱなしで人が絶えることもない。

「これはすごいな……」

ハイテンションでクレイジー。
この街での出来事をジョンは編集長に連絡した。

「日本の急速な経済成長の原因がわかりました!
 そして、日本が抱える闇について興味深いことが……」

編集長の答えはシンプルだった。

『んなこと、誰も興味ねぇわ!!
 いいからもっと注目集める記事探して来い!!』

スマホの画面が割れるほどの大声量だった。


「編集長はゴシップ好きだからなぁ……」

ジャーナリストを志すジョンとしては受け入れがたいものの
仕方なく街に出てなにかネタを探すことにした。

すると、ハイテンションな若者が絡んできた。

「ウェーーイ、あんたどこの人? 外国? 髪染めてんの?」

「あの、今は仕事中ですので……」

「ああ? なに? なになになに? シカト?」

「お酒入ってるんですか?」

「入ってねーーし!! エナジーだけでぇ~~っす!!
 つか、お前。あれ? 鬱な人?」

「うつ?」

「おい! 鬱人いるぜ!!! 日本の敵だ!!」

若者の号令でバットやスコップをもった人がぞろぞろと集まる。
それだけじゃない。
家の窓からは主婦が、スーツを着た社会人がジョンを軽蔑した目で見る。

「鬱人……!?」

「鬱人はこの日本のハイテンションんを盛り下げる日本の敵だ!」

「「「 そうだそうだ!! 」」」

「今、日本が元気なのはみんなハイテンションだからだ!!
 鬱人は日本にいらねぇ!! 足を引っ張る人間は邪魔だ!!」

「「「 粛清! 粛清! 粛清!! 」」」

トントン拍子に進む展開にジョンは追いつけない。
誰もがハイテンションなので、誰も味方になってくれない。

「た、助けてぇぇ!」



「こっちじゃ! こっちへ来るんじゃ!!」


どこからか聞こえた声にしたがい、ジョンは逃げた。
ハイテンションな若者たちはジョンを見失ってしまった。

ジョンは下水道へと逃げ込んだ。

「助かりました、あなたは?」

「しがないホームレスじゃよ」

「失礼ですが、ハイテンションじゃなさそうですね?」

「当たり前じゃ。あんな薬、飲んでたまるか……」

ホームレスはジョンに日本の抱える闇を話した。
ハイテンションで様々な問題がクリアされたことで、
逆にハイテンションじゃない人を排除していること。

そして、自分の仲間のホームレスも処分されたこと。

「わしは鬱人じゃ。鬱ではないが、連中に比べれば鬱に入る。
 少しでも後ろ向きな人間は処分されるんじゃ。どうにかできないかのぅ」

「……僕に考えがあります!」

そこでジョンはジャパンエナジーを作っている会社にいって、
エナジーを作らせないように働きかけた。

「これでOKです。
 銃も弾がなければ役に立たないように。
 エナジーがなければ、ハイテンションじゃなくなります」

「ありがとう、ありがとう……」

エナジーの生産量がぐっと落ちたことで、
これまでハイテンションだった人たちも落ち着きを取り戻した。

狙い通り。

あとはこのまま沈静化していくのを待つだけ。
そう思っていた。

「た、大変じゃ! 鬱人狩りが行われておる!!」

「なんだって!?」

予想外だった。
薬が減ったことに気付かないため、鬱人だとして排除された。
エナジーを取れなかった人間は自動的に消される。

そんな恐ろしいことが行われていた。

「もう無理じゃ……もう何もかも無理なんじゃ……。
 彼らはハイテンションであることが正義で正しいとしている。
 それ以外の価値観はもう認められないんじゃ……」

「そんなこと……」

「外人さん、これまでありがとう。
 わしもいつか鬱人としてひっとらえられるじゃろう。
 それでも、この国の成長の人柱になったとして前向きに受け止めよう」

「ああ、そんな鬱なことを言わないでください。
 僕がなんとかしてみせます」


「もう無理じゃ! どうやっても!
 仮にエナジーを取り上げても脳内麻薬でハイテンションじゃ!
 これ以上どうやっても、落ち着かせることなんてできない!!」


ジョンは下水道を出て、町の写真を撮りに撮りまくった。
ハイテンションな人たちはみんな喜んで映って来た。

その数日後、日本はあっという間に鎮静化した。

人々はハイテンションであることを辞めて、
ジャパンエナジーが作られることは二度となかった。

ふたたびジョンが日本へやってくると、
ホームレスが嬉しそうな顔でやってきた。

「おお、あんたか! いったいどんな魔法を使ったんだ!?」

「いえ、ごく普通のことですよ。
 この街の光景を伝えただけです」

ジョンは本国で掲載されたニュース記事を開いた。


日本人のバカッター達wwwwwwwwww
日本が今バカであふれている件wwwwwwwwwwwwww
バブル再来? 日本がアホの国になってて草wwwwwww


「日本人って不思議ですね。
 ありのままをネットに流しただけで、