小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

REPLAY⇔RETRY

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「あーーあ、なんか人生って退屈だな」

20年も人生を過ごしていると、
もう新しい出会いやイベントは限られてくる。

子供のころのようにきらきらと毎日輝くことはない。

どんより灰色の曇り空で、毎日変わり映えしない。

『8時になりました。7/29金曜日のニュースです。』

「やれやれ、行ってくるか」

時間に追われるようにして大学へと向かう。
楽しいことが待っているわけでもなく、
退屈な毎日をごまかしているような、そんな消極的な理由。

その日も、学校へ行く→家に帰る→寝る。

いつものように過ごして1日が終わった。
きっと、将来に今日を思い出すことはないんだろうな。


翌日、テレビをつける。

『8時になりました。7/28木曜日のニュースです。』

「え?」

ミスかと思った。
けれど、アナウンサーはやや焦りながら続ける。

『地球の公転向きなどから、本日は7/28に間違いありません。
 みなさん、この世界は逆再生されています』

テレビではこの世界が逆再生されている証拠を
VTRなどで細かく紹介していた。

俺は鏡の前に立つと、自分のヒゲを見てみる。

「のびてない……というか、むしろ短くなってる!」

時間が逆転した。
それはつまり……。

「俺の余命……20年ってこと!?」

20年経ってしまえば、受精卵に戻ってしまう。
それは死ぬことと同じだろう。

でも、不思議と抵抗はなかった。
むしろ嬉しさがあった。

「また子供のころを体験できるのか! やったー!」


 ・
 ・
 ・

大学も入学を終え、俺は高校生活の卒業式を行った。

「えーーみなさん。卒業式とはいえ、
 これからこの学校で学んでいくことになると思います。
 これはある種の入学式かもしれません」

くそ長い校長の話も今では楽しい。
勉強はさっぱりわからなかったけど、日を追うごとに簡単になるはずだ。
逆転しているから。

数日も過ごしていると、だんだん気付き始めた。

「……あんまり楽しくないな」

20歳のときはあんなに戻りたかった学生生活。
青春と出会いとイベントに満ちていたはずなのに。

いざ、この空間に来てみても期待していたほど
キラキラと輝く日々が待ってるわけじゃなかった。

「うーーん。もしかして、俺の心が大人になったから
 今ぜんぜん楽しめてないのかもな。
 中学生のときならきっと楽しいはず!」

そんなこんなで、中学生までこの世界は遡った。
見える景色も低くなり、顔つきも幼くなったのがわかる。

「ようし! 中学生活を楽しむぞ――!」

けれど、待っていたのは高校生活となんら変わらない毎日。
これなら大学生活ともたいして変わらない。

周りの人たちが中学生か、高校生か、大学生かの違いだけ。

「おっかしいな……ぜんぜんキラキラしてないぞ。
 しょ、小学生! 小学生ならあるいは……!!」

中学の3年間を必死に過ごして、待ってましたの小学生パート。


懐かしいウサギ小屋や、アサガオなどを見て胸が躍る。

「やっぱり小学生だろ!
 さぁ、充実した毎日を送るぞ~~!!」

けれど、やっぱりいつもの毎日だった。
なんなら行動範囲が広い大人の方がまだ楽しかったくらい。

「な、なぜだ……あんなにもキラキラしてたはずなのに……!」

時間の逆再生にあわせて、年齢も幼くなっている。
「うんこ」だけで笑えちゃうくらいに。

体も心も小学生になってきているのに、
あんなに憧れていた「キラキラ感」はもうない。

あれは幻想だったのか……。

「小学生より前には期待できない……。
 これでもまだ楽しめないなんて……いったいどうすれば……」

月日は無情にも過ぎていく。

思い返してみると楽しかったはずのラジオ体操。
充実していたはずの秘密基地づくり。
あんなに戻りたかった小学生の生活。

「こんなに……"普通"だったっけ……」


小学校の入学式を終えて、義務教育から解放される。
俺は幼稚園の生活になる。

かつての自分とそう年齢が変わらない大人が迎える。

「はーーい、みんな今日もいっぱい遊びましょうね!」

紙芝居とか縄跳びとかお遊戯会とか。
こんなの全部"普通"じゃないか。

「あれ? そんな隅っこでどうしたの?」

「ぼく、思っていたのと違うんだ……。
 おとなになったときはあんなに充実していたのに、
 いざ時間が戻って体験してみると、ぜんぜん楽しくないんだ」

保育士はにこりと笑って、俺の頭に手を置いた。

「それはね、君が今を楽しんでないからじゃないかな?」

「え……?」

「昔はよかったって、思い出の追体験をしようとしてるでしょ。
 でも、それじゃきっと楽しめないと思うの。
 昔と比べたりじゃなくて、今を全力で楽しむから
 きっと後で"いい思い出"だって振り替えられるんだよ」

「せ、せんせい……!」

目が覚めた。

今思えば、俺が求めていた"キラキラしていた時間"は
その時にはぜんぜん感じていなかった。

"ああ、今とっても充実してる"なんて少しも思わなかった。

ごくごく普通の毎日を過ごしていた。
でも、そのときは昔と比べたりしてなかった。

「そっか……普通の毎日が、あとで特別になるんだ!」


それからの日々は、今思い返しても最高に楽しかった。


今ではベビーベッドの上で寝たきりの生活だ。
俺の意識ももうなくなるだろう。

いつしか自我が芽生える以前まで体は戻り、
赤ちゃんの前に戻っていく。

ああ、もう死にたくない……。

体は赤ちゃんらしく頻繁な睡魔に襲われる。
俺は静かに目を閉じた。

そして、受精卵まで逆再生して戻っていった。



 ・
 ・
 ・

おぎゃあおぎゃあ!!

「元気な男の子ですよーー。良かったですね」

分娩台では憔悴しきった親の姿。
それを見て気が付いた。

「え……今度は逆再生されてない……!?」


この後、20歳までの生活がはじまった。
20歳になると再び逆再生が始まる。

このループ、これを書いている時点でもう3ループ目だ……。
作品名:REPLAY⇔RETRY 作家名:かなりえずき