小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

投稿拒否児童をタスケテー!

INDEX|1ページ/1ページ|

 
カウンセラーの下に、
また1人投稿拒否児童がやってきた。

「先生……ぼく、投稿が怖いんです」

「どうして怖いんですか?」

「投稿すると批判されるかもしれません。
 それが怖いんです」

確かにサイトでは"この手の作品はダメ"などと
他作品を批判するエッセイが最近多く投稿されている。

その餌食になるのが怖いのだろう。

「批判なんて個人の感想をもっともらしくしただけです。
 だから気にすることなんてないですよ」

「そうですか……でも、楽しんでもらえるのかが怖いんです」

投稿しても評価がつかないことなんて多くある。
それどころか、最近はサイトを非難コメントばかりする人が出るほど。

「評価を気にせず投稿してみましょう。
 最初は人気でないかもしれませんが、人気が出てくるかもしれませんよ」

「……そうかもしれません」

少し投稿拒否児童から光が見えた。
でも、次の瞬間。

「ああ! でもどうしよう!
 続きを書けなくなったらどうしよう!!」

ふたたび頭を抱えた。

連載ものとして投稿したはずが展開に困って
先が書けなくなる作品はかっこうの批判対象。

作品そのものも批判できるし、作者の姿勢そのものも批判できる。
批判する人にとっては一石二鳥。

「気にしなくていいんですよ、あなたは素人じゃないですか。
 途中で展開に詰まることもありますよ。失敗もします。
 だからこそ、投稿して経験を積みましょうよ」

「あああ! 怖い!! 投稿するのが怖いよぉ!!」

投稿拒否児童はヒステリックに叫んだ。

カウンセラーはうーんと悩んだ。
おそらく、作品を投稿することでほめられることよりも
悪く言われることの方が多かったのだろう。

そのせいで「投稿=不快な気分にさせられる」と紐づいている。
いい思い出がないのだ。


てっとり早いのは、サクラを雇って「すごい楽しかった!」と
褒めちぎりまくって自信を与えること。

でも……。

「投稿そのものをしてないんだよね……」

褒めるにも作品を更新してもらわなくては手が出せない。

いきなり過去作品に顔をつっこんで褒めちぎっても
ヤラセ感がすごいのであっという間に感づかれるだろう。

どうにか最初の一歩さえ踏み出させれば……。

「そうだ!! ライバルを登場させよう!」

カウンセラーはそこで投稿拒否児童と、
ほぼ同じような題材で同じようなタッチの作者を用意した。

それでいて、面白さは拒否児童よりも下げた。

そこにサクラを多く使って褒めちぎりまくった。

「これなら、"自分より面白くない奴が高評価"だとわかって
 自信と反抗心で投稿してくれるはず!!」

そこからはサクラを使って祭りあげれば、
晴れて投稿拒否症を治すことができる。グッドエンド。


……のはずが。


待てど暮らせど、ぜんぜん新しい投稿はされなかった。

カウンセラーは心配になって投稿拒否児童を訪れた。

「ねぇ、どうして投稿をしないの?
 明らかにあなたの方が面白いものが書けるでしょう?」

「うう……でも、ジャンルが似てるからパクリって思われる……。
 それに人気も二分するだろうから投稿したって人気でない……。
 投稿なんてできるわけないよぉ」

「え、ええ……!?」

カウンセラーはさすがにお手上げだった。

投稿するからには人気作を。
それが大前提としてあるから、さらに投稿しにくくなっている。

「人気作になるかどうかは投稿してみなくちゃわからないじゃない。
 あなたの"最高"と、読者の"最高"は違うのよ」

「とにかく無理なんだ!! 投稿なんてできるわけない!!」

シャットアウト。
こればかりはカウンセラーも何も言えなくなった。

評価やコメントなどで読者と作者の距離感が近い現代。
近いからこそ、書きにくくなる現実があるのかもしれない。

カウンセラーはそのことを心にとどめ、
静かにこの物語の幕を閉じた。



                    (了)






カタカタカタ……。

拒否児童は一心不乱にキーボードを打っている。
カウンセラーはそれが気になった。

「さっきから気になってたんだけど、
 何を書いているの?」

「このサイトに投稿される作品の批判エッセイさ。
 あと作者の批判エッセイと、サイトの批判エッセイと、
 あとこの世界の批判と、マスコミの批判エッセイと……」


「作品じゃなくてそっちは投稿するんかぃ!!!!」


こいつが原因で投稿拒否児童がまた増えた。