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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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挑戦を忘れたあなたは死ね

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日本はおおいに低迷していた!!

「今では高度経済成長の勢いも失われ……」
「海外の企業に後れをとっている状況……」

「昔のように"日本ここにあり"と見せつけられないものか」

偉い人たちはそこで、国民の尻に火をつけることにした。


【 全国民1日だけの命法令 】


施行当時の反響はすさまじかった。

「みなさん、突然のことで大変驚かれるかと思います。
 みなさんはすでに明日死ぬウイルスに冒されています。
 致死率100%です。医者にも治せません」

テレビの緊急放送ではえらい人が会見を行っている。

「ただし、このウイルスの進行を抑えるには
 "新しいこと"に挑戦すると、ウイルスの活動を抑えられます。
 つまり、死にません。

 みなさん、生き残るために挑戦をしましょう!!」

ほぼ、えらい人主導のテロだと思った視聴者も多かったが
明日死ぬとわかればそんなこと気にしてられない。


失敗を責める風潮にあった日本はがらりと空気が変わった。


みんな失敗しないことよりも、
挑戦することでとにかく寿命を延ばしたいことでいっぱいだった。


施行から翌日、高齢者のほとんどが死に絶えた。

「やはりな。彼らは自分はこれ以上挑戦できないと思い込み、
 挑戦する苦労から逃げていた。
 老いて動かなくなったとしても、心も老いては仕方がない」

「さりげなく高齢者問題も解決しましたね」

それから日を重ねるほどに、どんどん人数は減っていく。
"これが限界""もうムリ"などとあきらめた人間から消えていった。

その先で残ったのは、挑戦の心を失わないソルジャーたち。

「おおお!! これこそ我が国財産! 絶対に手放すものか!」

才能と不屈の精神を持っている彼らは、
どこまで行っても改良をあきらめず常に挑戦を続けている。

これまで死んでいったような
"高みから見物"しているような人間はひとりもいない。

「しかし、この先はどうするんですか?
 才能と資質のある人間を浮き彫りにできたとしても
 それを形にするスタッフがいませんよ」

「へっ? どういうこと?」

「今生き残っている人で設計図をかけたとしても
 それを作ってくれる人がいないではないでしょうか?」

「し、しまったーー!!」

挑戦から逃げるような奴に価値はない。
そんな偏見からほとんどの作業員を削ってしまった。

この世界には革新する人だけじゃダメだった。

「そうだ!! 挑戦するやつの寿命はこっそり延長しよう!」

「どういうことですか?」

「挑戦して我が国に利益をもたらしてくれた彼らには、
 寿命1日の制限を解除するのさ! 内緒で!
 そうすれば、技術者がいなくてもなんとかなる!」

「なるほど!」

ルール違反ではあるけれど黙っていれば気付かれない。
えらい人たちは安心した。

これでこの国は常に成長と挑戦を繰り返していくだろう。

「我が国は安泰だ!
 我々はそれをゆっくり見届けようじゃないか!」


その後、見届けるばかりで何もしなくなったえらい人たちは
まとめて寿命が尽きて死んだ。