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ヒステリック エンジェル。

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ブランドネーム【処女】



あたしはまだ処女で、その【処女】っていうブランドみたいなモンに、一番の高値を更新してくれる男を探してた。

援交では、ゴハン、カラオケ、ドライブ、キス、少しパンツを見せるだけでも男はみんなお金をくれた。

カワイイカワイイちやほやされて稼げるなんて最高。
そのうちに、処女のあたしは売れるんだって思ったよね。

8月の咽るような熱帯夜。

あたしはラブホテルのベッドの上で、天井からだらりとぶら下がり輝くシャンデリアをただ見つめていた。

ナンパされて付き合った21歳のレンちゃん。
あたしの身体に付随したブランドに一番の高値をつけた男。

「愛してる」

タバコの煙で曇った車内でレンちゃんの唇があたしの耳元でそう囁き、ラブホテルに行った。

愛なんてあたしにはまだよくわかんないけどね。
ずっとずっと欲しかった言葉だったの。
その言葉を貰ったときに、あたしの中で高値は更新されたの。

レンちゃんはあたしの身体に穴を開けた。

薄っぺらい粘膜とともに心の中のなにかが、ぷつん、と音を立てて千切れたような気がしたよ。
膣から垂れ流れる血液が温かくて、あたしは痛みを忘れるくらいにレンちゃんの身体をきつく抱きしめた。
レンちゃんの刺青だらけの腕は、汗が滲んでいて、とても優しい温度であたしを包んでくれた。

「お金、貸して貰えないかな?」
「明日携帯止まっちゃうんだ」
「お前の声聞けないの、淋しいよ」
「来月には絶対に返すから」
「ダメかな?」

生温く湿ったシーツの上で、あたしの髪を撫でながら、レンちゃんが放った言葉。

あたしはお財布から3万円を取り出しレンちゃんに渡した。
その3万円が一瞬で消えていく泡になることなど知らずに。

あたしは最高金額を貰わずに、大切ななにかと引き換えに処女を売った。

15歳のあたしに、ピンサロ嬢のあたしに、セックスというオプションがついたよ。
1回、5万円。

ピンサロの客に耳元で「エッチしない?」と誘い、店内でセックスをする度に、一生懸命貼り付けたメッキみたいなプライドがポロポロと剥がれ落ちていった気がした。
音も立てずに、ただただ静かに。

あたしは、少しずつ、ゆっくりと、壊れていくんだろう。

小さな音を立てて千切れてしまったあたしの心は、このだらしなく開いた穴は、たとえなにかが挿入されても埋まるようなモンじゃない。

レンちゃんのお金の要求が止まることはなかった。
あたしはお金を渡す度に、必要とされているんだと感じた。
レンちゃんのためなら、見知らぬ男の前で服を脱ぐことなんてたいしたことじゃない。

あたしは、天使。
男に選ばれて、お金で買われて、一滴残さず精液を出してあげる。

淋しい男を救済する天使なの。