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遊花工房.:*・★: 《2016.08.05更新》

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天使の黒い羽根


背中につけた真っ白な羽。
汚れを知らない純白なそれが、時々あたしは重くなる。
あたしのこころはちっとも綺麗じゃないのに…。

.。.:*・゜ここは天界。

さまざまな魂がそれぞれに修行して
自分が歩むステージのシナリオを作り上げていく。
これから自分が関わっていくであろう誰かのしあわせだけを祈りながら
天使の弓矢を握りしめて、心静かにその日が来るのを待っていた。

互いに呼び合うハートを見つけて、あなたの心臓に狙いを定めたとき
あたしの心がキュンと鳴いた。

  どうかあなたの恋心が真っすぐに彼女へ届きますように…。
  ━━━いいえ、あなたの心はあたしのものよ!

どうしたのでしょう。あの光の指し示すほうへと、もがけばもがくほど
その尊い教えはあたしを暗闇の底へと突き落としていくのだ。
もはや羽ばたくこともできない羽は今にもちぎれそうで
裸足でさまよい続けた末にたどり着いたのは、愛しいあなたの足元だった。
  ━━━ねぇ…あたしを見つけて。こんなにあなたを愛してる。

あたしはもう天使なんかじゃない。天使にはなれない!
涙でゆがむ顔。ほどけた髪を乱して、何度も何度も呼びかけてみるのだけれど
あなたの目に映るのはあたしじゃないの。
あなたの見つめるその先に、えくぼの可愛いあの娘がいた。
あなたの高鳴る胸の鼓動がはっきりとあたしにも聞こえてくる。

  嫉妬…困惑…激怒…絶望…

封印していたものが溢れ出し、天使の羽はいつのまにか
心を支配するどす黒い感情と同化してしまった。
届かない想いは彼も同じで
ひとつ大きなため息をついたときにあたしの心がはじけたの。

.。.:*・゜あたしがしあわせにしてあげる

そんなせつない想いでさえも、彼の涙に勝てないのが悔しい。
弓矢はまだそこにある。これでハートを射抜いたらあなたはしあわせになれる?
片翼の黒い羽を引きずって、あたしはゆっくりと弓を引いた。

指を放した瞬間こう強く念じながら。。。
  ━━━あたしを忘れないで…!

あたしの悲痛な叫びはあなたの胸に深く突き刺さり、心臓がふたつに割れてしまった。
うるんだ瞳で見つめあうふたりを残して、あたしの目の前はゆっくりと暗転していったのだった。

行先を見失ったあたしに、うっすらと一筋の光が近づいてきた。

・:゚*☆ そんなに嘆き悲しむな。さぞや苦しかったであろう。

ゆっくりと手を差し伸べて
神様はボロボロに傷ついた羽根をやさしくさすって下さった。

・:゚*☆ 純粋な心のままに下界に下りていく子供たちは
    きっとこれから試練の刻(とき)を迎えて
    今のおまえのようにもがき苦しむことだろう。
    それこそが人間なのだよ。
    だがおまえはすでにそんな心を手にしてしまった。
    おまえが選んだ人生はもっともっと過酷だが
    それでも誰かをしあわせにするという尊い任務は忘れずにいなさい。
    おまえはおまえのやり方で精一杯、人を愛し
    そして自分自身をもしあわせになるのだぞ。

強い光が神様の手から放たれて、突き落とされるように堕ちていく。
心に渦巻く黒い感情を抱いたまま、あたしはあなたに出会ってしまった。
傍らにはあなたによく似た子供を抱いた可愛い奥さんが寄り添っていたのに。
お互いの心に同じ痛みが走って、それはすでに約束されていたかのようにあたしたちは恋に落ちていく。


   あたしの苦しみはここから始まる。