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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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『今日はよろしくお願いしますね。』と言われると…。

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式が終わってお母さんに見えた情景を伝えた。
それを伝えながらオロオロしているお母さんの声が聞こえる。
『そう、そう、そうなのよ~。だ~れも泣いてなくて…。それよりもお母さんがビックリしたのが、最後の棺にお花を入れる時にね、遺族の中の一人が大きな声で何か言いながら、亡くなった人に向かってお花を投げ付けてたの…。お母さん、ピアノ止めるわけにはいかないからそのまま続けてたけど…、いつもいいお葬式があるわけじゃないみたいね。』
と言った。
『死体に花を投げ付ける…?!出来ないわ~、お母さん…。そんな事が出来るまでまだ人を憎んだ事がない…。そこまで憎まれるってよっぽどの事をしたんだろうね~。見えないし…。』
と言う私の言葉に被せるように、
『ないないな~い。さっきのそのお花を投げ付けてた人の形相は凄かったよ~。どんなに旦那を取られたって言っても、お母さんあそこまで出来ないわ…。』
と言った。
キリストは、
『ねっ、何があったんでしょうかね。でも、お母さん、今日もありがとうございました。』
と言った。
お母さんは慌てて、
『あっ、こちらこそ~。今日もありがとうございました。また、よろしくお願いします。』
と言った。
キリストは笑顔で、
『はい。』
と答えた。

そして、今、こんな事になってお母さんは言う。
『今までと違って、亡くなった方の遺影を見る前に知るって、こんなにも気持ちが違うんだっていうくらい違う。今までは知らない人のお葬式って思ってたけど、先に知ると、遺影を見た時に、“あっ知ってる人”って感じて、お母さんからも、“どうも。今日はよろしくお願いします。”って言葉が出るようになった。葬儀場の人たちも流れ作業みたいじゃなくて、こういう気持ちで式を行えたらいいのにな~って思う。』
と。

関係ないけど、私のお母さんとパパは中学からの同級生。
離婚してしまったけど、共通の友達がたくさん。
知り合いのお葬式でお母さんがピアノを弾くと、パパもその知り合いと知り合いなので、もれなく来ることになる。
二人の会話はないけど、私はそういう時、間接的に両親が揃った事を嬉しく思ってしまう。
罰当たりかもしれないけど、その場に感謝…してしまう。
もちろんたくさんの人たちが元夫婦と知っている。
お母さんはみんなに背を向けているからパパを見ることは出来ない。
しかしみんなは二人の動きが気になるようで、式が終わったお母さんに、
『元旦那がピアノを弾いてるあなたを見てたわよ~。』
と言ってくる。
こんな事があるのも事実なのだ。
葬式はこんな事も届けてくれる。

まっ、そんな事は置いておいて、
“今日はよろしくお願いしますね。”
と言われると、お母さんは喜んで大きく“はいっ!!”と返事をし、その人を想い、ピアノを弾くのだった。