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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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『今日はよろしくお願いしますね。』と言われると…。

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シカさんたちとの出会いを書いた事で、お母さんがピアノの先生だと分かってしまった。
やっとお母さんから、ピアノの先生だと書いていいとの許可が出たから書けた。
許可が出るまで長かった~。
そしてそのお母さんがやってる仕事のもう一つが、お葬式でのピアノ演奏。
声が掛かった時だけのものだけど、そんな仕事もしている。
私がずっと書きたかったこの話。
許可が出たからやっと書ける。

もう十年以上はしてるこの仕事。
遺族の方が亡くなった方への想いの文章を読んでいる時、遺族の方と一緒にお母さんも泣きながらピアノを弾く。
練習なんてなくて、初めて聞くその言葉に合わせて音を弾く。
『泣きながら手が勝手に、今必要な所に行く。』
とお母さんは言う。
生まれ持った才能だと私は思うけど…。
本人は普通の事と言うので、そういう事にしておこ~っ!!

いつもいつも葬式のピアノが入ったからと私に電話がかかっていたわけじゃない。
三、四年前に私が上(神様)と繋がってからの話。
たまたま葬式のピアノの話をしていた。
その時にお母さんが、
『乳がんのおばちゃんが登場したから、もしかしたらあなた死んだ人が見えるかも…。見えたりしてね。』
なんて話していた。
そんな話をしていたらお母さんの携帯に葬儀場から連絡があり、ピアノの仕事が入った。
大体、前の日か二日前に連絡が来る。
そして葬儀場からの電話があったと、お母さんから聞かされた。
私には関係ないから、
『へ~。』
と言っていたら、何やら知らない人の姿が見えた。
『お母さん、死んだ人って…ばあちゃん?!』
と私は聞いた。
お母さんは何も気付く様子もなく、
『あっ、そう言えば聞いてない。向こうが言う時と言わない時があるのよ~。だから、式場に着いて、遺影を見て知る。』
と言った。
じゃあ、私の間違えか…と気にしなかった。
でもお母さんは、
『どうして?!』
と聞いて来た。
『いや、なんか知らないばあちゃんが見えたから。』
と言う私にお母さんが、
『もしかして、明日のお葬式の人…?!』
と飛び上がるように言った。
慌てた私は、
『分かんない、分かんない。』
と答えた。
お母さんが黙って何か考えている…。
それをしばし待つ。
そしてお母さんが、
『ちょっとどんな人が見えてるか教えて。』
と聞いて来た。
疑いながらもお母さんに従い、
『…しもぶくれのばあちゃん。』
と答えた。
『しもぶくれのばあちゃんっ!!まあ、よくいる感じね。他には?!』
『他に、他に~、白髪?!の横分けのおかっぱ。それで~、優しく笑うタイプ。しもぶくれが…ニコッと。』
『しもぶくれか~。しもぶくれで横分け…。優しそう…。よしっ、分かった。それを覚えて明日の葬式行って来る。その人だったら、その人を思ってピアノ弾いて来る!!』
と何故か意気込みそう言うお母さん。
『はい、頑張って!!』
『うわぁ~、なんか~、その人のような気がする~。しもぶくれのばあちゃん…。』
とお母さんは言っていた。
そして次の日、式場へ行く時に電話を掛けて来た。
お母さんは、
『しもぶくれのばあちゃん!!』
と勝手に決めてかかってるから私は困った。
亡くなってる人がおっさんだったらどうするんだろうとヒヤヒヤする私。
ヒヤヒヤの中式場に着き電話を切った。

式が終わるまで二時間ほど待つ。
待つと言ってもジーっと待っているわけではないけど…。

そして式が終わりお母さんから電話がかかった。
悲しんでる遺族の方には申し訳ないけど、お母さんのウキウキした声が受話器から届いた。
『ちょっとちょっと~、どんな人だったと思う?!』
と言って来た。
知る由もない私は、
『分かるわけない…。』
と仏頂面な声でそう言った。
お母さんは嬉しそうに、
『しもぶくれのばあちゃんっ!!おかっぱで横分け…。あ~っ、しもぶくれのばあちゃんだった~。凄いねぇ~。知らない人なのに、なんか知ってる人のように向き合えた。凄いねぇ~。』
と驚きを隠し切れずにそう言った。
『マジでっ?!マジでしもぶくれのばあちゃん?!』
と私も驚いたけど…。
お母さんは肯いていた。
その後がまたたまげた!!
どっからともなく声が聞こえた。
その声を辿ると、いつも見える所にしもぶくれのばあちゃんが見えた。
『お母さん…、お母さん…。しもぶくれのばあちゃんが出て来て…、“今日はありがとうございました~。”ってニコニコして言ってる…。どうしよ~?!』
私がそう伝えると、お母さんは飛び上がらんばかりに、
『えーーーーーーっ!!ウソーーーーーッ!!えっ、えっ、えっ、えっ、ウソーーーーーッ!!』
と慌てている様子。
そして泣き出して、
『いいえ~。』
と言っていた。
私と話しているのに、その声は空へと向かって言ったように感じた。
そんなお母さんの姿を見てかしもぶくれのばあちゃんは、
『泣かないでください。またいつか会えますから…。』
と優しくそう言った。
それを聞いたお母さんはもっと泣き出し、
『えーっ?!また会える…?!こちらもまた会いたいで~す。…んっ?!どういう事?!』
と心があっちに行ったりこっちに行ったりしていた。
それよりも私は、運転してるのに大丈夫なのかお母さん…と不安が過ぎっていた…。
しもぶくれのばあちゃんがまた、
『そんなに泣かないでくださいね~。ではまた、失礼しますね~。』
と言った。
『は~い、こちらこそ~。』
とお母さんはやっぱり泣きながら言った。
泣いてない私と泣くお母さん…。
そんなお母さんが、
『ほんの少し前までその人の遺影を見てたのよ~。まだ顔を覚えてるから、あの人が言ってるんだと思ったら、そりゃ~嬉しくて涙が出るよ~。』
と言った。
しもぶくれのばあちゃんが行きかけて、
『あっ、仏教でした~。神様がいたんですね~。』
と一言ニコニコしてそう言った。
何故そんな事を言うのだろうか…と首を傾げながらもお母さんにそれを伝えると、
『えっ!!もう会ったの?!えっ!!こんなに早く?!』
と私とは違う所に驚いていた。
そしてしばらくして、気付いた時にはしもぶくれのばあちゃんは見えなくなっていた。

この事があって以来、お母さんは葬式の仕事が入ると私に電話をかけてくるようになった。
私はただ見えた人の姿とその人の言葉を伝えるだけだった。

それから何度目になるだろうか…、また葬式の電話がお母さんにかかった。
そしてお母さんから、
『どんな人が見える?』
と聞かれ、
『ん~、ばあちゃん。白髪の短髪で、分け目の所の前髪が立ってる感じ。顔はしわくちゃの面長…かな~。』
と答えた。
『ほ~、短髪のばあちゃんか~。それで面長…。はい、分かった。』
お母さんはそう言いながら、そのばあちゃんを想像してるのかな~なんて思っていた。
そして次の日、葬儀場に向かいながらお母さんと電話で話していた。
すると、
『今日はよろしくお願いしますね。』
と聞こえた。
お母さんに伝えたら、また驚いて、叫びながら、
『えーっ、えーっ、えーっ!!ウソーーーッ!!こちらこそ、一生懸命弾かせて頂きます!!』
と大きな声が受話器から聞こえた。
うるさいな~と思ってる私に、