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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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残り10分で捕まえてみろやぁぁぁぁ!!!

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1年3組の教室に隠れること1時間。
夜の学校に事務的な電子音が鳴った。

ピピピッ。

耳を澄まして、他の電子音との距離を測る。

「大丈夫か。近くには誰もいない」

とはいえ、鬼が俺の音に気が付いて近づくかもしれない。
俺は教室を出て理科室へと隠れる場所を変えた。

人目を避けるようにして過ごした日は長い。
隠れることに関しては絶対の自信がある。

今回の『学校かくれんぼ』でも隠れ抜いて賞金を手に入れてやる。


それから1時間。

ピピピッ。

ふたたび電子音が鳴る。
今度は少し近くから同じ電子音が聞こえた。

「まずいな。近くに誰かいる。
 鬼じゃなければいいけど、離れたほうがいいな」

鬼を含めた参加者に配られる電子アラーム。
1時間ごとに必ず音が出るように仕組まれている。

学校外の敷地に出ればアラームがけたたましく鳴る。

まさにかくれんぼの大敵。

今度は理科室から放送室へと移動した。
俺はなんとしても隠れ切って賞金が欲しい。
今の苦しい生活のたしにしたい。

「残り3時間、か……」

この学校かくれんぼは鬼よりも隠れる側のが有利。
広大な校内には隠れる場所なんていくらでもある。
運が悪くアラーム音の近くに鬼が来ていれば捕まるが。

けれど、俺にかぎってそれはない。

放送室に入るには体育館を経由する必要があり、
その出入り口にはバスケットボールを置いてある。
扉の開閉があればボールが動いて誰かの侵入を気付かせる。

「ふふ……悪いが、こちとら素人じゃないんでねぇ」

隠れつつも周りを警戒する。
それが超一流の隠れマイスターなのだ。



ピピピ。

残り2時間。
俺は順調に見つかっていない。あまりに順調すぎる。

「どういうことだ? 全然鬼の動きを感じないぞ?」

それが鬼の作戦なのかもしれないが、あまりに探す気配がない。
残り時間わずかで全員を捕まえることなんてできないから、
コツコツ探していくしかないのに。

「ま、まさか……! 最初から鬼はいないパターンか!?」

探すだけの鬼役は存在しない。
隠れながらも鬼となる覆面鬼がいるかもしれない。

「ふふ、そういうことか。
 常に動き回っている誰かがいると思っていたが、そうじゃない。
 本当の鬼は隠れる側にまぎれて捕まえる気なのか!」

そうと決まればやることはひとつ。
他の参加者を見つけることだ。


ピピピ。
残り1時間。


まもなく、ほかの参加者を見つけることができた。

わかりやすく掃除用具入れに隠れていた。
もちろん、相手には俺の存在は気付かれていない。

「隠れる場所に芸がなさすぎるから、
 掃除用具に隠れようとした奴を捕まえるつもりか
 はたまた、純粋に隠れていたのか」

どちらにせよ、俺はこいつについていく。

こいつが鬼だったら、背後にいる俺は一番安全だ。
鬼じゃなかったとしても隠れるスキルは俺の方が上なので
こいつを囮にして逃げることができる。

「完璧だ……! 絶対に見つかるわけがない……!」


時間はどんどん過ぎていく。

残り30分。
残り20分。


残り10分。

――俺は勝利を確信した。

「この残り時間で俺たちを捕まえることは不可能!
 勝った! これで賞金は俺のものだ!」


 ・
 ・
 ・

『今夜のニュースです。
 さきほど、夜の校舎に隠れていた指名手配中の犯人たちを
 市民からの通報により一斉検挙することができました』

時間をかけて用意された大量の警察隊が校舎に入り、
10分以内に隠れている奴らは捕まった。

「通報ありがとうございました。
 こちら、捜査協力の報酬となります」

「ありがとうございます」

男は警官から賞金を受け取った。
校舎で捕まえたやつらは、誰もが悪い奴だった。

「しかし、あんな夜の校舎であなたは何をしてたんですか?」



「オニをやってました」

男はパトカーにのせられたかくれんぼ参加者の肩に触れては、
「見つけた」と順番に声をかけていった。