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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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捕まえて!人質ゲーム!

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親に何不自由ない生活をしてもらい、
平穏な毎日を送っている。何も不満なんてないはず。

「でも、退屈なんだよなぁ……」

毎日なにか刺激を求めてネットをあさっていた。
ふるさと納税を眺めていたとき。

「……人質ゲーム?」

"誰かを人質として捕まえて競う全国リアルゲームです。
捕まえた人質の認知度などからランキングが集計。
ランキング順位に応じて豪華賞品をプレゼント!"

面白そうだ。
さっそく会員登録を済ませて、まずはランキングを見てみる。

1位 5,031pt
2位 5,015pt
3位 4,998pt

「なんだ、ランカーの名前はわからないんだな」

プライバシーとかなんだろう。
まあいいか。

俺の苗字「satou」は使われていたので、
「satou2」でアカウントを登録。

さっそく、理由を話さずに友達を連れて来た。

「どうしたんだよ急に」

「ここに生年月日と名前を入力してほしいんだ」

人質登録フォームを友達に突き出す。

「はぁ? 個人情報だから嫌だよ」

「じゃなきゃ、ここから出さない」
「えっ!?」

幸い、俺の家の地下室は親も使わない。
人質を捕まえておくにはなんら問題ない。

「わ、わかったよ。いったいなんだってんだ……」

人質登録を済ませると、俺のマイページでポイントが加算される。

ID:satou2
ポイント:50pt

「低っ……」
「なんだよ! 失礼だなぁ!」

これには人質となった友達も怒った。
とはいえ、ごくごく普通に一般人だから当たり前か。

数日後、俺の家には宅配便で「ポケットティッシュ」が届いた。

「"人質ポイント"の報酬です、か。
 くじ引きではずれを引いた気分だなぁ……」

まだ50ptじゃこんなもんなんだろう。
これからどんどん人質にしていかなくちゃ。


ポイント単価が高いのは小学生以下の小さな子供。
親の目や防犯ブザー等で警戒心が強く、人数が少ない。

ポイント単価が低いのはホームレスなどの
"いなくなっても誰も気にしない"たぐいの人間。

もちろん、国からの認可が下りているゲームなので
危害を加えたりしなければ、なんら問題ないが……。

「なんだろう、この背徳感……」

とても声をかけられなかった。
あげく、小学校の周りをうろうろしてたせいで補導された。

友達の数も少ないので、友達全員を人質登録しても
もらえるランキング報酬はポケットから箱ティッシュになるくらい。

「そうだ! 同年代の女の子を捕まえよう!」

昔からルックスには自信があり、しゃべりも達者。
そこで暇そうな女の子に声をかけては家に連れ帰って人質登録。

イケメンから警戒心が薄いのと、
「人質登録だけ」という敷居が低い条件から人数は集まった。


ID:satou2
ポイント:1,000pt


「っしゃーー! これでついに4桁!」

ランキング報酬として、高級和牛が家に届いた。
これ以上ランキング上げたらいったいどうなるのか。

「それじゃ、ここに生年月日とかを入力して」
「はい」

51人目の女の登録を済ませて、地下室に軟禁する。
けれど、地下室はもうすし詰めでとてもこれ以上人質を増やせない。

食費もバカにならないし、高級和牛なんて人質用ですぐになくなる。

「うーーん……これ以上は増やせないなぁ」

いったいランキング上位の人たちはどうやっているのか。
専用の貸し倉庫にでも人質を入れているのか。

なにか答えを探すために、人質ゲームのルールを確認していく。
細かいルールの下に、小さな文字でルールが書いてあった。

※長く人質を捕まえるほどポイントは自動的に増えます
※芸能人や有名人などは高ポイントとなります

「芸能人……これだ!!」

ついに光が見えた。
俺はテレビ局の出入り口を待ち伏せして芸能人を待つことに。

潜んでいて気が付いたが、イケメンを見慣れている芸能人には
俺のルックスなんて「どこにでもある顔」で効果はない。

"人質になってください"と引き留める方法がない。

「あっ! 出てきた!」

気分は出待ちのファン。
出口から出てきたのは今最も人気の女優。

両脇にはサングラスをかけたボディーガードと、
厳しそうなマネージャーが目を光らせている。大統領レベルか。

「くそ! これじゃ捕まえられない!」

今出て行っても不審者として突き出されるだけだ。
どうすればいい。どうすれば人質にできる。

女優はがっちり守られながら、車に乗り込む。
エンジン音が鳴り始め車が動き出す。もうだめだ。

「そ、そうだ!! ええーーい!!」

車が走り出した瞬間、思い切り車の前に飛び出した。



ドンッ!!



車のボンネットに跳ね上げられると、車は止まった。
車からは女優が青い顔をして出てきた。

「だっ、大丈夫ですか!?」

「え、ええ……大丈夫です」

今度は青いどころか白い顔をしたマネージャーがやってくる。

「この事、誰にも言わないでね! 週刊誌にもネタを売らないで!
 今はこの子が一番大事な時期なの!!」

「でしょうね……テレビでよく見ますし」

「それじゃお金!? 何を払えば黙ってくれる!?」

「人質に……なってください」

マネジャーはぽかんとした。
女優はその程度で経歴の傷を消せるとわかると即答した。

「ええ、もちろん」


家に連れ帰ると、親は驚いていた。

「え、ええ!? その子もしかして……!?」

「ああ、うん。そうだよ、女優さん。
 ちょっとしたつながりで友達になったんだ」

人質登録を済ませると、ポイントは一気に加算される。


ID:satou2
ポイント:7,000pt


「うおおおお!! すげぇぇぇ!!」

まさかの6000ptゲット。
地下室に入れていた雑魚たちを解放してもランキングは1位になれる。

他の人質を解放し、女優にふさわしい最適の環境を整える。

「これでよし! ああ、ランキング報酬が楽しみだ!」

すると、階下から親が宅急便の荷物を持ってきた。


「なにか届いていたわ」

「おお! 早い! もう来ていたんだ!」

俺は荷物を受け取ろうとすると、親は荷物をさっと引く。

「この宛先、あなたも人質ゲームしてたのね」

「えっ?」

「お母さん嬉しいわ、こんなに成長してくれて。
 赤ちゃんのときにあなたを保育器から人質にしてよかった」

「いったい何を……」



「もうあなたとは人質を解消するわ。
 いままで人質になってくれてありがとうね。
 でも、もういらない。他人に戻っていいわ」

※長く人質を捕まえるほどポイントは自動的に増えます



その後「satou」はランキング1位になった。