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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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卑弥呼、市長へ立候補します!

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「オンコロログミラマジックオイシー!!」

卑弥呼は思いついた呪文を唱えてみた。
すると、あたりは稲作が始まりたての田んぼから
高層ビルが立ち並ぶ現代へと変わった。

「ど、どこじゃ!? わらわ、どうなったんじゃ!?」

他人に無関心な現代でも卑弥呼となれば扱いは異なる。
教科書で見たあの顔が現代に降り立つや、
誰もがスマホのカメラを向けて連続撮影。

「め、面妖な! なんじゃ! 妖怪のたぐいか!」

しばらくは実写浦島太郎を体験していたが、
仮にも邪馬台国の女王は理解が早く現代社会へと馴染んでいた。

「わらわ、どうやら時代をまたいだようじゃな」

納得した卑弥呼の横すれすれを大きな白い車が通りかかる。

『みなさん! 山岸さとる!
 山岸さとるをよろしくお願いします!
 必ずやこの町を良く致します! よろしくお願いします!』

「町を良くする……?
 ま、まさか! わらわ以外にも王になる者が!?
 こうしちゃいられない! わらわの座を守らなくては!」

卑弥呼は勘違いと勢いで選挙活動をはじめることに。
もちろん、勝てば国会入りなんてことも知らなかった。

「卑弥呼じゃ! 邪馬台国をまとめておった!
 それに比べればこんな町ひとつ統治するのはかんたんじゃ!」

「ねえ、あれなに?」
「卑弥呼だってよ」
「あの服マジっぽくね」

「わらわの占いで万事解決じゃ! 安心してついてまいれ!!」

卑弥呼が出るや人気は爆発的に増えた。
もともとルックスもよかったうえ、
謎の自信とキャラ立ちする口調は民衆の心をキャッチ。

小難しい政策を語る背広のおっさんよりは、
コスプレしている天然美女の方が投票したくなる。

気が付けば卑弥呼はカルト的な人気となり、
ついに単独で当選することができた。

「わらわに任せておれ!
 邪馬台国よりもずっといい街にするのじゃ!」

当時の支持率は200%。
完全に卑弥呼フィーバーに町も浮かれていた。


けれど、日を追うごとに卑弥呼の支持率は下がっていった。


「なんでじゃ? 古墳作るのがなんでダメなんじゃ?」
「だって、わらわの占いでそう出てたんだもん!」
「土器の生産をするのじゃ!」

現代社会を理解していない卑弥呼の言動は、
ワイドショーのいいネタとなりつるし上げられた。

ニュースの風潮にそそのかされて、
気が付けば卑弥呼にわいていた町も卑弥呼バッシングへとかわる。

もう卑弥呼は限界まで追い詰められていた。

「うう……もう帰りたいのじゃ。
 どうして現代人はこうも心変わりが早いのじゃ。
 一度決めたことを後になって覆しすぎじゃ……」

ホームシックならぬ、邪馬台国シックの卑弥呼。

「そうじゃ! 前は未来に行く呪文だったのじゃ!
 今度はわらわの時代……過去にいく呪文を作るのじゃ!」

秘書が心配する中、完全に業務をストップすること数日。
卑弥呼はついに過去への呪文を発明した。

「これで邪馬台国に帰れるのじゃ!
 こんな人への思いやりが足りない町はいやなのじゃ!」

卑弥呼が呪文を唱えると、その体はタイムスリップした。



そして、現代社会へと降り立った。

「あれ!? ぜんぜん戻れてないのじゃ!!」

現代社会になじんでしまった卑弥呼は、
すでに全盛期の力を発揮することもできない。

タイムスリップの能力もせいぜい数か月前にさかのぼるしかできなかった。

「ふぇぇ~~ん! わらわ、もうダメじゃあ~~!!」

  ・
  ・
  ・

それから、半年後。

卑弥呼は圧倒的な支持率を取り戻して、総理大臣まで就任した。

「わらわ、この現代社会をかならず変えてみせるのじゃ。
 みな安心するが良いぞ、わらわにお任せじゃ」

ある日を境に卑弥呼の失言などはぴたりと止んだ。
そして、先を見据えた完璧な采配がじわじわ支持率を上げた。

総理大臣となった今も卑弥呼の采配はさえわたり、
まるで未来を見たような指示が国を良くしていった。


ある関係者は語る。

「いや、卑弥呼さんはすごいですよ。
 どこが失敗するかとかもすぐにわかるんです。
 それに、仕事を休んだこともないんですよ。
 体がいくつあっても足りないのにすごいです、卑弥呼さんは」


未来を見て来た卑弥呼がタイムスリップし、
現代には大量の卑弥呼がへ始めていることにまだ誰も気づかない……。