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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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流れ星すくいのサギ店主

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「さぁ、いらっしゃいいらっしゃい。
 縁日名物の"流れ星すくい"だよ!!」

お盆で田舎に帰ると見慣れない出店がやっていた。
興味を引かれてのぞいてみると、
水槽の中にはキラキラと光る流れ星が流れていた。

「おや、お兄さん、興味あるのか?」

「この流れ星……本物なんですか?」

「おうともさ。こういう出店じゃインチキが多いけど、
 おじさん、そういうのは大嫌ぇでさ。
 この流れ星には何の細工もしていない本物だから安心しな」

「ってことは……」

「"なんでもやりたい放題"ってことだよ」

おじさんは俺の耳元で悪魔のささやきをした。
俺の脳裏でありとあらゆるゲスな願望が浮かんだ。

透明人間になって女湯を覗くか。
億万長者になって札束風呂に入るか。
究極のイケメンになって女優と付き合うか。

「やります!!!」

「そうこなくっちゃあ!」

俺は鼻息荒くおっさんに金を渡した。

「いいかい、ここにある流れ星は水から出すと
 すぐに本来の流れ星になっちまう。
 だから、救ったらすぐに願いを唱えるんだぞ」

「わかりました」

普段、流れ星なんてお目にかかることもない。
それだけにとっさに現れても願いなんて3回唱えられっこない。

でも、巣食った瞬間に願いを叶えられるとわかれば。

タイミングさえわかれば3回唱えることもできる。
願いもコンパクトにして、脳内シミュレーションもさせる。

「よし……いくぞ」

おっさんから渡された"ポイ"をそっと水に沈める。
自由に流れる星々をそっと救い上げて……。


「とった!!」


と、思った瞬間。
ポイに貼られていた紙が一瞬で溶けて星は水槽へ逆戻り。

「えええええ!? 紙弱すぎだろ!!」

「お兄ちゃん、残念~~」

「お、おっさん! この紙明らかに薄すぎだろ!」

「おいおい、いくら取れないからっていいがかりはよしてくれよ。
 それに仮にも納得した上で挑戦したんだろう?」

「ぐっ……!」

このクソオヤジ……!

願いに目がくらんで、ポイ側の仕掛けに気付けなかった。
1度挑戦したもんだから今から文句を言っても"言い訳"と処理される。

このオヤジ、最初から星なんて救わせる気なんてない。

「もう一度」

「あはははは、まだ懲りないのか。ほらよ」

破れないようポイを気遣いながらそっと水から救い上げる。
これでも近所の金魚すくい大会では優勝したんだ。


「はい! ざんねん~~!!
 紙が破れたらもうだめだよ~~!!」

「いや、もろすぎだろ!!」


紙はおそろしいほどに薄くもろく作られていた。
これでは流れ星どころか、水すら救うこともできない。

「何個ポイを無駄にしようがそれは兄ちゃんの勝手だ。
 ワシも止めはしないがね。
 取れない腹いせに営業妨害だけはやめてくれよ」

店主の言葉で頭にアイデアが思いついた。

「10個ください」

「あははは! 懲りないねぇ!
 いいよいいよ、10回でも20回でも挑戦するといい!」

店主は大判振る舞いするカモを見つけたとばかりに
気前よく10枚のポイを渡した。

「いえ、挑戦するのは1回だけだ」

「……は?」

俺は10枚のポイをぴったり重ねると水槽の中に突っ込んだ。

「ま、まさか!?」

「あんたは言ったよな!
 何個ポイを無駄にしようが止めはしないと!!
 無駄に使わせてもらうぜ!! このポイ!!」

両端に重ねられている数枚の紙が破れる。
けれど、それが壁となり破れない数枚のポイが星を救い上げる。


ざばぁっ!!


水しぶきとともに流れ星は水槽を飛び出した。
その瞬間に、流れ星は空へと還る。


――来た。このタイミング。


俺は練習してきたコンパクトな呪文を心の中で復唱する。

モテたい。
モテたい。
モテたい。

完璧だ。
短くも端的に俺の理想を表現できる。

モテれば人生は順風満帆。
何不自由ない生活が俺を待っている。


流れ星がきらりと光った。


俺は一気に息を吸い込んで――

「モt……」

「ふざけんな!! やり直しだ! やり直し!!
 こんなの卑怯だ!! やり直せ!!!」

店主の声が轟いだ。


 ・
 ・
 ・


「さぁ、いらっしゃいいらっしゃい。
 縁日名物の"流れ星すくい"だよ!!」

田舎に帰省した日に祭りがやっていた。
その中で見慣れない出店を見つけた。

俺は金魚すくいの腕を試したくて、つい出店に入った。