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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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ここに来た1

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1 オシュコシュ(アメリカ ウィスコンシン州)



少年の時、アメリカに短期留学した。

わずか1ヶ月のホームステイだったが、16歳の世界観は大きく変わった。

ホストファミリーの家から車で5時間ほど離れたオシュコシュという町の空港に、航空ショーを見に行った。

その往路で、ファミリーの父親が運転するバンの窓から、何もないハイウェイの景色を眺めていた。

何もない。

いや、実際にはトウモロコシ畑があった。2時間ぐらいトウモロコシ畑ばかりを見ていた。不慣れな英会話も弾まず、ただ暇で窮屈な車内だった。

途中で尿意を催してきた。ドライブインやガソリンスタンドもすぐには無さそうだった。

車を路肩に停めてもらった。

とても天気のいい夏の日だった。

道路はトウモロコシ畑より1mほど高くなっていた。少年は、草むらの斜面を降りて、車から少し離れたとことで、用を足した。

少年の目線から見える景色は、一面のトウモロコシ畑と、ところどころに点在する広葉樹がアクセントになっていた。空にはエアーショーへ向かう戦闘機が飛んでいた。山がなかったせいで、雲が大きくとても低いところを流れて行くように見えた。障害物が何もないフィールドに、トウモロコシの葉を揺らす風が渡り、まるで鳥の群れのように見えた。

左側、これからの道が少し上り坂になって、空に続くように見えた。

右側、道路わきの草むらに、こげ茶色のウサギが走っているのが見えた。

また正面、地平線まで続くこの景色を偶然見ていることに感動した。

『この景色を再び見ることはできるのだろうか。』
少年の頃に感じた疑問。これをずっと抱きながら、私は今も世界を旅している。
作品名:ここに来た1 作家名:亨利(ヘンリー)