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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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飲み会商事のお仕事

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ついに、ついに会社に内定した。
『飲み会商事株式会社』。

「えーー今日はみなさん、新入社員を紹介します。
 みなさん、これからよろしくお願いしますね」

「よっ、よろしくお願いします!!」

緊張で噛みながらも頭を下げる。
社員の人たちはみんないい人そうで安心した。

初日の仕事を終えると先輩がやってきた。

「新人君、今日は君の歓迎会をやろうと思ってるんだ」

「本当ですか! 嬉しいです!」

「安心してね。無理に飲ませたりとかしないから。
 最近の会社じゃそういうのやってないから」

「ありがとうございます!」

嬉しいことがいくつもできた。
歓迎会に誘われたことも嬉しいし、
無理に飲ませる気はないと気を使ってくれたのは嬉しかった。

その日の夜、会社近くの居酒屋で飲み会が行われた。

「新人君、これからよろしくね。
 うちの会社は残業ないけど休日出勤はあるんだ」

「そ、そうなんですか!?」
「ここだけの話にしてくれよ?」

「ただ、この会社は女性社員も多いから
 結婚相手探しなら事欠かないぞ。去年も3組結婚したし」

「へぇ、それはすごいですね」

飲み会に参加してよかった。
親睦が深められるのと同時にいろんな話が聞ける。

その夜は満足感を胸いっぱいに溜めて帰った。



翌日、仕事終わりに上司に飲み会に誘われた。

「今日もどうかな? 無理にとは言わないけど」
「あ、はい」

飲み会はほぼ毎日行われた。
断ることもできるけど、毎日一緒なので飲み会に参加しないことが
逆に"どうかした?"と心配されるのが面倒だった。

ある日、仕事でどうしてもわからないところがあった。

「すみません、ここのデータ入力なんですが教えてもらえますか?」

「今日、飲み会いける?」
「え?」

「飲みで話すから」
「えっ」

今話せばいいじゃんと思ったが、しょうがない。
その夜の飲み会では懇切丁寧に仕事でわからないところを教えてもらった。

またある日。

「先輩、明日は新しい取引先とのプレゼンですね」

「今日、飲みいける?」
「えっ?」

「飲みで作戦会議するから」

「はぁ……」

その夜の飲み会では、取引先の傾向や対策を勉強した。

またある日。

「今日も飲みいくよな?」

「いえ、あの……はい……」

もう特に仕事が絡まなくても飲み会は行われた。
その日、俺はついに体を壊して救急車で運ばれた。

病院で目を覚ますと、医者には飲みすぎだと言われた。

「はぁ……めっちゃ怒られた……」

病室でへこんでいると先輩がやってきた。

「よぅ、もう大丈夫そうか?」

「ええ、もうだいぶ回復しました」

「しばらくは飲み会できないなぁ。
 早く元気になってまた飲み会しような」

顔が引きつった。もう飲みはこりごりだ。



退院してからは、俺は劇的に生活を改善した。

「今日も飲みにいくよな?」
「今日は飲もうぜ」
「今日は会社の記念日だ、飲むぞ」

「いえ、結構です」

退院してからは飲み会を完全にシャットアウトした。
体のことはもちろんあるが、それ以上に仕事がしたかった。

みんなが飲み会に行っている間の時間を有効利用して
より仕事が進められるようにバリバリとこなしていった。

「今日くらいは飲み会来いよ。大切な会だ」

「いえ、間に合ってます」

その日も飲み会を断った。

思えば、今までの俺はただ楽をしていたんだと思う。
断って嫌われることよりも、周りに合わせてしまったほうが
何かと都合がいいし自分にも負担がすくない。

でも、今こうして仕事をしていると実感する。

「ああ、俺はこの仕事が大好きなんだなぁ……!」

もっとこの仕事をしていたい。
もっとこの会社を大きくしていきたい。

いや、するんだ。

「俺がこの会社をきっと成長させてみせるっ!!」





翌日、会社は倒産した。


「えええええええ!? なんで!? なんで急に!?
 何も聞かされてなかったんですけど!!」

そこに先輩がやってきた。

「だって、お前ずっと飲み会来なかったじゃん」


「会社で話せやぁぁぁぁぁ!!!!」

その日初めて先輩をぶっ叩いた。