ぐりtoぐら 実写映画化決定!
頭のフィルムが焼ききれんばかりに悩んでいた。
「くっそーー! いい作品を作るには金がかかる!
でも、映画が売れないから軍資金もない!
いったいどうすればいいんだ!」
それを聞いた助手は助け舟を出した。
「監督、それなら実写化すればいいのでは?」
「それだ!!」
監督は天からのアイデアに興奮した。
「実写化作品なら固定客もいるし話題性もばっちり!
見たこともない作品じゃないから作りやすい!
こんなにコスパがいいものはないぞ!」
監督は失いかけていた熱意を集め直して、
さっそく撮影をすることに。
「でも監督。なにを実写化するんですか?」
「国民的な絵本『ぐりtoぐら』だ!!
これなら知らない人はいないだろう!」
監督主導で『ぐりtoぐら』の製作がはじまった。
「……で、気付いたんだが
このタイトルはやっぱり古いなぁ。
もっと市場に合わせたものにしないと」
監督は作品のタイトルを
『ぐりtoぐら』から
『ぐりtoぐら ―リベレーションゼロ― 』と
なんだか思わせぶりなサブタイトルを付けた。
「うんうん、これなら新規の人も興味が出そうだぞ!
今度はタイトルに負けないように人選しなくっちゃ」
監督は映画に登場する俳優を選ぶことに。
「単純に演技力だけで決めていくと華がないからな……。
今売れっ子の俳優をどんどん採用して……。
あ、そうだ! 面白いからお笑い芸人も入れてみよう!」
若い人に人気がある俳優を積極的に採用し、
ジョーカー的な立ち位置にお笑い芸人を話題作りで入れた。
「ようし、人選はOKだ!
せっかくだし世界中で売れるようにしたいな!
原作に忠実よりもアレンジのがいいだろう!」
監督は映画公開の幅を世界に広げ、
海外でも人気が出るようにカーチェイスやら
銃撃戦やらラブロマンスやらをふんだんに盛り込んだ。
そしてついに、監督の思い描いた最高の実写化作品が出来上がった。
監督は助手に確認してもらうことに。
「……ダメですね」
「ええええ!?」
助手はばっさりと切り捨てた。
監督は思わず目をむいて驚いた。
「こんなのよくある失敗する実写化のパターンじゃないですか。
いますぐ止めましょう」
「でも……もうクランクアップしちゃったし」
「えっ」
「えっ」
「え、それじゃもう……公開するしかないってことですか?」
「あはは、公開して後悔なんて……あははは」
「殴りますよ」
「ごめん」
監督は出来上がったその日に関係各所に宣伝してしまった。
今さらになって"やっぱりやめます"はできないだろう。
「ど、どうしよう!
撮影している間はハイになってて気づかなかったけど
これが売れてもらわないとそもそも意味ないんだった!」
「どうするんですか!」
「どうしよう!?」
二人は絶望的な状況に追いやられてしまった。
しばらくして助手が口を開いた。
「僕に考えがあります」
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国内歴代興行収入No1
『ぐりtoぐら ―リベレーションゼロ― 』
『見てください! 公開から時間がたっても
映画館に足を運ぶ人は絶えません!』
助手の機転により映画は大成功。
連日連夜、賑わいを見せる映画館前が報道されていた。
Q,どうしてこの映画を選んだんですか?
「この映画の入場券に、
NVL48の投票券が入ってるんだよ。
ファンとしては絶対に手に入れなくちゃね」
Q,どうしてこの映画を選んだんですか?
「あのね、この映画の入場券のQRコードでね。
レアもんすたーとレア妖怪が手に入るの」
『以上、賑わいを見せる映画館前からでした~~!』
一方、映画館ではガラガラの座席に
監督と助手だけがぽつんと座っていた。
「良かったですね、監督。
狙い通りお金は稼げましたよ。
みんな入場券買った後、Uターンして帰りますが」
「みんな映画も見てよぉ!!!」
監督の魂の叫びは
劇場外で列をなす人の耳に届くことはなかった。
作品名:ぐりtoぐら 実写映画化決定! 作家名:かなりえずき