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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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夫婦の会話練習場

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「私たち、いつもラブラブなんですぅ」
「僕たち、いつもラブラブなんですぅ」

「見ててよくわかります。
 でも、だったらどうして
 『夫婦シミュレーションサービス』に参加したんですか?」

「恋愛ホルモンって分泌されるのが3年じゃないですかぁ。
 だから今後のことを考えて試すのがいいって、まーくんが」

「夫婦になってもお互いを愛し合えるってこと
 このシミュレーション実験で試したいってみーちゃんが」

「妙に現実的ですね……」

スタッフはペースを乱されながらも、
二人を希望を受け取ることに。

「では、ふたりのDNAを調べさせてもらいますね」

スタッフはDNAを解析した。
2人は何が起きているかもよくわからない。

「DNA解析の結果、彼氏さんからは"聞き役因子"
 彼女さんからは"話し役因子"が発見されました」

「やっぱりぃ! 私まーくんと話すの大好きだもんっ」
「僕もみーちゃんの話を聞くの大好きだよっ」

「ということで、二人の役回りを逆転します」

「は?」
「え?」

「聞き役が得意な彼氏さんは、話し役に。
 話し役が得意な彼女さんは、聞き役になって下さい」

「そんなの簡単じゃない。まーくんいっぱい話してっ」
「もちろんだよ、みーちゃん。いっぱい聞いてほしいなっ」

実験開始。
彼氏には言葉が止まると電流が流れるように。
彼女には言葉を話すと電流が流れるようになった。

「それじゃ話すね、みーちゃんっ」
「もちろんよ、まーくん」

「えーーっと……えーーっと……」

言葉に詰まった彼氏に電流が流れた。

「あばばばばばば!!!」

「言葉を詰まらせないでください。
 聞き役因子があるとはいえ、
 永久に聞き役では夫婦のコミュニケーションはやっていけませんよ」

「そ、そうですね……」

彼氏は気を取り直して、必死にしゃべる。

「みーちゃん聞いてよ、昨日仕事でいい案件が取れたよ。
 ゴルフでもいい結果が出たんだ。
 それに、僕の応援している野球チームが……」

つまらない。

彼氏から出てくる話の内容は
「仕事」「スポーツ」「数字」の自慢ばかり。

耐えきれなくなった彼女が口を開く。

「まーくん、その話で思い出したんだけど……。
 あばばばばばば!!!」

今度は彼女に電流が流れる。

「ダメですよ、勝手に話しちゃ。
 あなには"話し役因子"があるものの、
 そうやって相手の話をさえぎっては
 夫婦のコミュニケーションができません」

「こ、ここまでするもなの!?」

「はい、大事ですよコミュニケーションは。
 一方的に話してもダメですし、一方的に聞いてもダメ。
 お互いに話し合うことが大事なんです」

彼氏と彼女は改めてお互いを見つめ合う。

「まーくん、私いままで自分の話ばかりしていたかも」
「みーちゃん、僕はずっと自分のことを話さなかったね」

「2人ともわかっていただけましたか?
 さあ、一緒に頑張りましょう!!」

彼氏と彼女はそこから必死に
なれない役回りでコミュニケーションを行った。

最初こそ流された電流もいつしか流れなくなった。

「お二人とも素晴らしいです! もうこの実験も不要ですね!」

「やったわ、まーくんっ」
「やったね、みーちゃん!」

「これでお互いの話し役/聞き役のバランスが良くなりました。
 これからは会話での行き違いや誤解もなくなります。
 夫婦になっても最高の会話ができますよ!」

「みーちゃん、それじゃ結婚しようっ」
「まーくん、嬉しいわっ!!」

唯一の心配事だった"会話"も解決し、
二人は晴れて夫婦になった。


 ・
 ・
 ・

夫婦生活が数十年すぎる。

「ねぇ」
「ん」

「あれ」
「おぅ」

夫婦の会話はほとんどなくなっていた。
けれど、以心伝心には事欠かなかった。
作品名:夫婦の会話練習場 作家名:かなりえずき