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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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在宅エクソシスター

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夫は仕事が忙しくて家には戻らない。
子供も上京してしまった。

家には私ひとりでいつも退屈とたわむれている。

「なにか始めようかしら」

ふと思ってネットを検索してみる。
頭はあまり良くない方なので資格所得とかはパス。
人と関わるのも好きじゃないので○○教室もパス。

果てで見つけたのは……。


「在宅エクソシスト……?」


>初心者大歓迎!
>誰でも簡単に除霊ができます!
>ネットの指示通り、電話口で伝えるだけ!

内職にしては楽そうだし、興味がある。
夫は霊感が強いので困ったら相談できるし。


さっそく申し込んでみると送られてきたのはURLだけ。

このサイトを見て、電話越しに除霊してくださいとのこと。雑か。

すると、さっそく電話がかかってきた。

『エクソシストさんですか!?
 お願いです! 除霊してください!!』

「あ、はい。わかりました。えーーっと……」

サイトを見ながら除霊の呪文を読み上げていく。

「ばーーかばーーか。あほあほあほーー。
 お前の前世でべそーーってなにこれ!?」

そのまま読んだのに、小学生の悪口みたいな内容。
本当にこれで除霊できるの!? うそでしょ!?


『ありがとうございます! 霊がいなくなりました!』


できてしまった。
除霊とはなんて簡単なものなんだろう。
これでそこそこの報酬金がもらえるんだからありがたい。


「ばーーかばーーか。あほあほあほーー。
 お前の前世でべそーー」

「ばーーかばーーか。あほあほあほーー。
 お前の前世でべそーー」

「ばーーかばーーか。あほあほあほーー。
 お前の前世でべそーー」


その後も、電話を取っては子供っぽい呪文を唱える。
何十件も解決してもバカバカしさを感じる。
でも、霊がいなくなったというんだからすごい。

テレビでやっている大がかりな除霊はいったい何なのか。
霊感の強い夫からすれば、ただのパフォーマンスに見えるのか。

「……でも、本当に除霊できてるのかしら?」

昔から完璧主義者……というか、細かいことが気になる私。
こんな在宅エクソシストで本当に除霊できるのか気になって、
近所でも有名な心霊スポットへと足を運んだ。

「うわぁ……いかにもって感じね……」

日中にもかかわらず、太陽の光は届かない。
じめじめした廃墟は遠くから水の音も聞こえてくる。

気分はまるでゴーストバスターズ。


「…………ぁ………ぇせ……」



「…………ぁ………ぇせ……」



「…………私の赤ちゃん……かえせぇぇぇ!!!」


はっきりと霊の声が聞こえた。
見えないけど。

私は慌てて準備していた電話番号にコールする。

『はい、在宅エクソシストサービスです』

「除霊をお願いします!
 見えないけど、たぶんものすごく近くにいます!」

『わかりました、えーーっとえーっと……』

よりによって新人かい!
電話も霊の影響を受けてとぎれとぎれになったり
耳元でうめき声みたいなのも聞こえてくる。

『ばーーかばーーか。あほあほあほーー。
 お前の前世でべそーー……っはい。OKです』

ぴたりと止んだ。

体にまとわりついていた気配も。
耳元で聞こえていたうめき声も。

「本当に霊がいなくなった、すごいなぁ」

感心していると、すぐに折り返し電話がかかってきた。
ちょうどさっき除霊してもらったエクソシストからだった。

「もしもし?」

『ちょっと!! なにしてくれるのよ!!』

「なんのことですか?」

『呪文唱えたら、霊が怒ってこっち来ちゃったじゃない!
 おかげでこっちの家は心霊スポットよ!!』

「えっ」

雑な呪文だった理由がようやくわかった。
私は除霊してたんじゃなくて、怒らせて霊を引き寄せていただけ。

電話している本人からすれば、
さも除霊して霊が消えたように思える。

『あんたのせいで……この家、悪霊だらけで……きゃーーー!』

電話が切れた。
その直後に、今度は夫から電話がかかってきた。

「もしもし?」

『おお、お前か! 大変なんだ!
 家にものすごい数の悪霊がいるんだ!
 しかもさっき急に1匹霊が増えて大変なことに……!』

電話の向こうで、女の悲鳴が聞こえる。
いましがた電話で聞いた声だった。

『君はエクソシストだったろう?
 早く家に帰って除霊してくれ!』

「いえ、もう家には帰らないわ」

『はぁ!? どうして急に!?』


「だって、浮気している人と一緒には過ごせないじゃない。
 あなたの近くにいるエクソシストさんに除霊してもらってね」


私は電話を切った。