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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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動物がシャァベッタァァァァァァァ!!

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それはペットショップでの出来事だった。

「僕を買ってよ!」

「……え?」

「僕を買って!」

客が犬猫を見てきゃいきゃい騒いでいる中、
ケージに入った犬がこちらを見てはっきりしゃべった。

「僕、ここから出たいんだ!」

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」

その異常事態は小さなペットショップだけにとどまらず
世界的な現象として広まっていた。


『お昼のニュースです。
 各地で動物が言葉を話す報告が相次いでいます。
 言語専門家にコメントをいただきます』

『そうですねぇ、たぶん学習したんだと思います。
 人間がしゃべっているのを聞いて、
 それを伝えて伝えて勉強していったんです。
 赤ちゃんが言葉を覚えるメカニズムと同じですよ』

『動物とコミュニケーションができるなんて素敵ですね』


なんて、最初は危機感ゼロで
"おはなしできて嬉しいわ"と誰もが考えていた。

現実はそうではなかった。


「ドッグフードって飽きるんだよね。
 おいしいものでも飽きるのに、マズイならなおさらだよ」

「触らないでほしいにゃん。
 お前が飼ってるんじゃなくて、私に飼われているのはお前にゃ」

「ゴミ! ゴミ! ゴミ! ゴミ!
 いえーーい! ゴミだ! ゴミだカーーッ!」

犬も猫もカラスもゾウもキリンも何もかもしゃべる。
動物園は愚痴広場となり、ペットのいる家庭は崩壊。
ペットショップは監獄に見えてしまう。

なにより一番の問題は、肉が流通しなくなったことだった。

「あいつら……毎日楽しそうに話しかけてくるんだよ……。
 それを機械でミンチにするなんてできないよ……。
 俺はいままでなんてひどい仕事を……うう……」

「ココッ。ご主人、今日はなにをお話しするココッ」

ニワトリの屠畜業者は泣きながら工場を去っていった。
言葉が通じてしまうことで、愛着が生まれ
我が子を手にかけるような罪悪感が芽生えてしまった。

伊勢志摩サミットが終わった直後にもかかわらず、
急きょ世界のトップたちは会議を開いた。

「どうすればいいんだ。
 これではたんぱく質の補給ができなくなって栄養失調になる」

「食品業界でも店がつぶれて離職者が増えているし」

「肉が食べれないなんていやよぉ!」



「よし。新しい言語を作ろう」


参加者の一人が告げた。

「新しい言語を作って浸透させればいい。
 そうなれば動物たちの言葉はわからなくなる」

「なるほど! それなら世界共通語としても使える!」

「幸い、動物たちは私たちよりも寿命が短い。
 だから短い寿命ではとても理解できないような
 複雑で繊細な新言語を世界共通にしよう」

「「「 異議なし! 」」」

そこから人間の徹底的な言語教育が始まった。

複雑な日本語をベースにしつつ、古代ヒエログリフを組み込み
アラビア語の要素を足しつつ、英語の軸を守った。

やがて生まれた『ユニバーサル語』は世界共通語となり
それ以外の言語を話すことは罪となった。

 ・
 ・
 ・

それから、幾数十年の時が流れる。

涙ぐましい努力の結果、ついに世界は言語を浸透させ
動物たちの言葉は『動物語』として誰も理解できなくなった。

「いやぁよかったよかった。
 もう動物が何を言っても聞こえませんね」

「ええ、やはり動物は動物でないと」

「ここまで長かったですね。
 動物より寿命が長いからこそできたことです」

各国の首脳たちはお互いの努力を褒め合った。
そして、満足そうに外を出た。

「ああ、そうだ。みなさん、よかったら
 日本庭園の手入れを見ていきませんか?
 ほかの国ではなかなか見ることができませんよ」

「おお、それはぜひ」

日本の首脳は自慢の松の木の前に案内した。
ちょうど庭師が不要な枝を切っているときだった。


ばちんっ。


「ぎゃああああああ!!! 痛い痛い痛い!!
 やめてやめて! 助けて!! きゃあああああ!!!」


複雑なユニバーサル語を長い年月をかけて学習した
植物たちからの声が出た。

首脳たちの顔から笑顔が消えた。


「次の言語……どうしましょうか」