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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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親切な人はどんな情報見てもいいよね?

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「こんなド田舎もうたくさんだ!!」

ネットも通っていない故郷に愛想をつかして、
都会へとやってきた。

その年に、法案が決まった。

『みなさんが当たり前に見ている情報は、
 それぞれ大変価値のあるものです。商品です。
 なので、親切ポイント導入を決めます』

「……親切ポイント?」

長くて面白くない話ばかりだったので、
テレビを消してネットで調べてみることにした。


『閲覧にはあなたの親切ポイントが足りません』


肝心のPekiwediaが見れない。
どのサイトを行っても、親切ポイントが足りなくて見れない。

「なんだ!? どうなってる!?」

俺がせいぜい見れるのは個人のブログや、
怪しい宗教のにおいがする変なホームページ。

正直言って、情報たしからしさは……ダメだと思う。

翌日、友達にそのことを話してみる。

「そりゃお前、親切なことしてないだろ?
 有益で正しい良質な情報ほど、
 親切で優しい人にしか見れないようになってるんだよ」

「……そうなんだ。それじゃジュースおごるよ」

「おっ、まじか。優しいんだな」


『親切度ポイント+10』


ネットを開くと、前は見れなかったページも見れていた。

【親切度ポイント】
親切なことや感謝されると貯まるポイント。
良い人にならどんな情報も見ても大丈夫、ということで
高いポイント所持者にはさまざな情報にアクセスできる。

「へぇ……なるほどな」

ようは親切なことをすればいい。
俺は見違えたように親切な男になった。

募金活動中の人に、札を詰める。  『親切度+50』
買い物中のおばあちゃんを助ける。 『親切度+20』
ナンパされてる女性を助ける。   『親切度+60』


気が付けばもう、親切度10000ポイント。

「すごい! これならどんな情報でも見れそうだ!」

ネットではこれまで見れなかったような
他人の個人情報や隠しブログ、芸能人のプライベート写真まで見れる。

この優越感……たまらない!

でも、不思議とこれを悪用する気にはならない。
どこかで拡散してやろうとか、そんな気はない。

きっとたまった親切度ポイントを失いたくないのと、
一方で悪度ポイントが加算されるのは嫌なんだ。

『あっ! 見てください!
 今、サイバー犯罪者の佐藤が警察に連れ去られていきます!』

『今に見てろ! すげぇ爆弾しかけてやったんだからな!
 あははははははははは!!』

『不敵な笑みを浮かべています!
 佐藤は悪度9999ポイントとなり、
 ほぼ正しい情報は何一つ得られなくなります!』

テレビでは犯罪者の報道をしていた。

親切度と同じく導入された悪度ポイント。
悪いことをすれば、正しい情報はなにひとつ見れなくなる。

圧倒的な情報弱者。

その怖さが、今これだけの情報を得られている自分に
悪さをしないようとどめている力になっている。

「ま、親切度をたくさんためた人間が
 わざわざ悪さをすることはないだろう」

俺の考えは正しかった。
親切度が高い人は誰ひとり情報を悪用することはなかった。

そんなある日。

『この情報は閲覧できません』
『この情報は閲覧できません』
『この情報は閲覧できません』


「なんだ? どうなってる?」

急に情報が見れなくなった。
優良情報民であるはずの俺なのに。

慌てて自分の親切度ポイントを確認する。


親切度ポイント:0


「ゼロ!? どうして減ってるんだ!?」


悪度ポイント:10000


数値を見て凍り付いた。
どういうわけか『親切度』と『悪度』の数値が逆転している。

「なんで……どうしてこんなことに……」

これじゃ正しい情報にアクセスできない。
得られる情報はどれも劣悪で噂程度のものばかり。


"今に見てろ! すげぇ爆弾しかけてやったんだからな!"

「あっ……! まさかこれか……!?」

サイバー犯罪者の佐藤の言葉を思い出した。
奴は親切度ポイントと悪度ポイントを逆転させたんだ。

ただ、それだけでよかったんだ。


『一転して悪度ポイントが多くなった警察は
 情報にアクセスできなくなり捜査は難航しています!』

『一方で親切度ポイントが多くなった犯罪者は、
 こちらより圧倒的な情報強者となり、まったく手がかりを追えません!』


――親切な人には、正しく深い情報を。

そのはずだったのに、皮肉にも悪人が正しい情報を得て
善人がウソや噂の情報に踊らされてしまっている。

今、俺が見ている情報だって
きっと間違いだらけの情報なんだろう。

正しいと保証できる情報にはアクセスできない。

「ああ……もうだめだ……!」




「諦めるんじゃない!!」

やってきたのは俺のふるさとである田舎人たち。

「私たちに任せておけ!」
「とっておきの秘策がある!」

「本当ですか!!」

「ああ、これ以上悪人をのさばらせておくわけにいかないからな!」

なんて頼もしい。
これほど田舎出身をかっこよく見えた日はない。

「でも、悪人は俺たちよりずっと
 情報的に有利なんです! 勝てるわけないです!
 そんな相手にどうやって戦うんですか!」

「ふっ……こうやるんじゃ!」

田舎人たちはネットを切断し、すべての情報をシャットアウトした。


「これでみんな情報は口伝えになったじゃろ。
 この世界は悪人たちより善人の方が多い。
 情報なんかに頼らなくても、善人は人との絆がある」

「おじさん……!」

そうだった。
ネットの情報ばかりにたよって忘れていた。
大事なのは人との結束なんだ。

「ありがとうおじさん!!」

その後、悪人はすぐにつかまった。




「なんでじゃーー!
 なんでわしを逮捕するんじゃ――!
 ただネットを斬っただけじゃないか――!」

「おかげで株で大損だよ!」
「電車のダイヤも大荒れだ!」
「会社のデータも吹っ飛んだよ!」

田舎のおじさんも、悪人としてすぐとっ捕まった。