「時のいたずら」 第十一話
優斗の希望で藤は短いスカートをはいていた。ユニクロで買った例のミニスカートだ。助手席で下着が見えそうにめくれ上がるのでハンカチを置いておくように勧めた。
「おれはいいけど他の男に見られたくないからな」
「でしたらこのような服を着ろと言われなければ宜しかったのに」
「今しか着れないからいいんだよ。それにとっても似合っているよ。足も細いし、色も白いし。女優さんのようだ」
「女優さん？誰のことですか？」
「選ばれた綺麗な女性のことだよ。藤の居た頃で言うと巫女さんのような選ばれた存在の美女のこと」
「巫女・・・藤はそのように礼儀正しく美しくもございません。褒めて戴けるのは幸せですがお恥ずかしいといつも考えてしまいます」
「今日の姿だと伊勢に行ってすれ違う男はみんな藤をじっと見るぞ。理由は可愛いからだ。それが俺には自慢なんだよ。だから短いスカートを穿いて欲しいと言った」
「藤は優斗さんだけに見つめられていたいです。人目にさらされることは苦手です」
「男は自慢したい生き物だ。独占したいっていつも感じる。それが嫉妬になるし、争いごとの元になる。かといってそう言う部分を持ち合わせないと女性化して頼りない男と言う印象を持たれる。それも悲しい事のように俺は思うね」
「優斗さまは十分男らしくて優しいお方です。ご自分を自慢される必要はないと感じております」
「嬉しいね。俺は頭が悪いからそこは自慢できないけど、体力と勇気だけは自慢出来るかも知れない。藤と出会った時に腰抜けだったら今こうしてなかったしね」
「ご立派だったと思います」
「ご立派？アレが？ハハハ～」
「また、いつもの悪い癖ですね」
「今夜は藤を狂わせたい・・・？？1018年ぶりだろう？ハハハ～」
「下品だと感じました、そのようなお言葉は」
「機嫌悪くした？」
優斗はそう言うと助手席に左手を伸ばして藤の右手を握った。
「少しの間こうしていよう。道がまっすぐだから安全運転に支障はないから」
藤は黙っていた。手の温もりから優斗への熱い気持ちを知られそうで恥ずかしかったからだ。
作品名：「時のいたずら」 第十一話 作家名：てっしゅう