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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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四枚貝



なんだ、今の攻撃は? 古代は思った。振り返れば、エンジンに点火して加速を始めた〈ヤマト〉が見える。ビームを喰らったとは言っても、ここから見る限りでは大きな損傷を受けたようすは窺えない。

敵に一発撃たせた後は、〈ヤマト〉は波動砲を撃つ見せかけを解いて冥王星に突っ込むのは元からの作戦だ。けれどもそれは、敵に先に撃たせることでビーム砲台がどこにあるかを探ることを目的にしていた。砲台は冥王星かカロンのどちらかの地面に固定されているはず、という考えであり、古代もまた〈ゼロ〉の各種の探知装置でその位置を特定し、すぐさまカメラのレンズを向けて超望遠で砲台を撮って、データを〈ヤマト〉に転送する役を担(にな)わされていたのだ。機体が持つすべての〈眼〉は冥王星とカロンに向けて絞られていた。

が、今〈ヤマト〉を狙ったビームは、まったく思いがけぬところから放たれていた。宇宙の一見する限り何もないように思える空間。かつてニクスやヒドラと呼ばれた岩がまわっていたであろう場所だ。

しかしそれらは、地球に投げる遊星の材料にされてしまってなくなっている。レーダーには何も映っていなかった。それには強力な探知妨害がかけられているせいもあるが――。

それでも大きな物体や、高熱を帯びているものがあれば、まったく探知できないなんてことがあるはずもなかった。なんだ、どうなっているのだと思う。

次元潜宙艦でもいるのか? しかし、仮にそうだとしても、ビームを撃つとき姿を出さずに済むなんてことがあるはずがない。それにまた、潜宙艦が強力なビーム砲を積んでいるなどまず有り得ぬことのはずだ。

通信で山本機を呼んでみた。「〈アルファー・ツー〉、今のビームが来た方角がわかるか?」

『わかります』

「こちらの機器には何も映らない。そちらには?」

『いえ。わたしは周囲を警戒していましたし……』

「そうか」

と言った。そうだった。山本はまず何よりも僚機を護って飛ぶのが任務。ゆえにこのおれに前を見させて自分はまわりを見張っていたのだ。〈ヤマト〉を狙うビーム砲を探るのが直接の任務ではなかった。

古代は〈ゼロ〉のカメラ・アイをビームが来た方角に向けた。超光速レーダーでは何も捉えられなくても、光学的には何かあれば見えるのでは――そう考えて、索敵モードにしてスキャンをかける。

センサーがそこにあった物体をたちまち見つけてズームインした。アップにしてディスプレイに映し出す。

見て、こりゃなんだと古代は思った。画面に出たのは何やら花のような形状のものだった。あるいは風車か、バナナの皮を広げたような十字型の物体だ。人工の機械なのは疑いないが、明らかに地球製のものではない。

三浦の磯で子供の頃に古代が棒でつついたような、海の変な生き物を思わす有機的なデザイン――まあもっとも、それを言うならあのタイタンで凍っていた〈ゆきかぜ〉だって、まるでナマコかウミウシだったが――。

だがそれにしても、まるでクラゲかヒトデの類が、海を漂っているようだった。でなければ、貝か。〈四枚貝〉とでも呼ぶべき花の形をした貝が、殻を広げて中にある雄しべや雌しべのようでもある口を動かしているような――そうだ。まさに貝だった。それが古代が三浦の浜で掘って遊んだアサリのように、四枚の〈殻〉を閉じかけている。一瞬、それがキラリとまさに真珠貝の殻のような虹色の光を放ったのを、古代は〈ゼロ〉のカメラが捉える画像の中に見た。

古代は言った。「なんだ? これ――」