ふうふ、うふふ vol.4
桃源郷
山にこもって
自給自足してる90歳近い老夫婦。
腰の曲がったおばあさんは
最近病気がちのおじいさんに
おいしい松茸を食べさせてあげようと
3時間も山を歩き回ります。
それでも松茸は見つからず
傍らに咲いていたリンドウを一輪手折り
「おじいさん、ごめんね」と差し出しました。
コップに挿した紫の花は
おじいさんの心をいつまでも和ませ
穏やかな表情でふたり仲良く寄り添って…。
これはいつだったか
テレビで見た一コマです。
お互いを“おじいさん”“おばあさん”と呼び合って
某台所洗剤のCMのように自然に手をつなぎ合って
そのときのシワくちゃな老夫婦の笑顔に
あこがれを感じてしまうのはなぜなんだろう。
男でも女でも
ただそんなふうにつながっていられる関係って
簡単なようで簡単じゃないね。
忙しない現実から少し離れて
桃源郷のようなひとときを
日常の邪魔にならない空間に持っていられたら
しあわせだろうな…。
作品名:ふうふ、うふふ vol.4 作家名:遊花