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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ハゲまみれ進路シミュレーター

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進路希望調査

第1希望
第2希望
第3希望


「……うーーん」

「おい、今日が進路希望提出なんだからな。
 ちゃんと記入して提出するまでは家に帰さないぞ」

「先生、それは"今日は寝かさないぞ"的な意味の発言ですか?」

「バカなこといってないで早く記入しろって!」

先生は丸めた教科書で私の頭を小突いた。

進路希望といっても、いったいどうすればいいんだ。
子供のころは漠然と『ケーキ屋さん』『お花屋さん』なんて書いていたけど
こうして現実的な夢や目標を突きつけられても
高校三年生にどこまで未来を見通すことができるのか。

「先生、私思うんですけど、まだ人生の半分も生きていない高校生に
 これからの人生の道筋を決めるなんて無理だと思うんです」

「お、おお……」

「だから、私は記入せずに自分の未来をこれから作っていきます!」

「お前それ記入したくないだけだろ!」

先生は長い溜息をついた。

「はぁ、しょうがない。
 お前のような生徒がいることを見越して、
 実はこの学校に未来シミュレーターができたんだ。ついてきなさい」

先生と一緒に視聴覚室へ向かうと、
人間ドックで使われそうなバカでかい装置が置いてあった。

「ここに進路希望を書いて入れるんだ。
 そうすれば、その進路になった先の未来をシミュレートできる」

「わぁ、先生、こんなのがあるんだったら先に教えてくださいよぉ!」

これを使って最高の未来を選べばいい。
まずは、希望用紙に難関大学を記入して装置に入れた。

装置の中に入ると、ゴゥンゴゥンと重低音が響いていく。

目を開けると、難関大学の入学式だった。


「すごい! 本当に未来が見えるんだ!」

難関大学に合格した私はスタイリッシュなキャンパスライフを送り、
そのまま一流企業へエスカレーター式に入社。
仕事もプライベートも充実している日々が続く。

「うんうん! この未来が最高じゃない!
 私、ぜったいに難関大学に合格しなくちゃ!」

入社して10年も過ぎると、周りの人は結婚して寿退社。
焦る気持ちとは裏腹に、閉鎖的な会社では恋愛対象もいない。

そして、寂しい独身生活の果てで、
頭のハゲた日本人体系のかっこよくもないオッサンと歳の差婚。

子供も2に……

「いやああああ! こんな未来いやああああ!!!」

たまらずシミュレーターから飛び出す。


「ど、どうしたんだ!?」

「私、あんな"居酒屋にいそうなおじさん"と結婚するの……?
 いやよ、絶対にイヤ! 私はジャニーズ顔の
 高身長・高収入・高学歴の人と結婚するんだから!」

「それだいぶ未来しぼってないか……?」

「先生、私難関大学はやめます!
 あんなハゲおじさんと結婚したくない!」

「あくまでシミュレーターだからな。
 ほら、だったら別の進路で試してみればいい」

「あ、そっか」

そもそも自分のことがわかってないのがダメなのよ。
まずは自分のことを知らないと。

進路希望調査には『自分探し』と書いて装置に入れた。

目を開けると、異国情緒あふれる外国にきていた。

「わぁすごい! そうよ! 私の未来はこうでなくっちゃ!
 知らない人とたくさん触れ合って、自分を知っていくの!」

高校卒業とともに自分探しの旅に出た私は
世界各地をめぐってさまざまな文化に触れていった。

そのどれもが刺激的で自分にはない価値観に気付かされる体験だった。

やがて、帰国すると待っていたのは就職難だった。

『自分探しの旅って……それ会社に必要なスキル?』
『もう君は新卒じゃないからねぇ……』
『ダメダメ。君みたいな人は雇えないよ』

自分探しの旅に出ていた数年が響いて仕事につけない。
落ちぶれに落ちぶれた先で出会った男性と結婚。

その男性は……。

「またあのハゲおやじじゃない!!」

慌ててシミュレーターを飛び出した。
どこかで見覚えのある顔とまた結婚してしまった。

「お、おい大丈夫か……?」

「先生、私の未来はハゲばっかり! ハゲまくりよぉ!!」

「いったいどんな未来を見たんだよ!」

「どうせ、どんな進路に選んでも私の終着駅には
 いつもあのハゲが待ち構えているのよ……。
 どうにか未来を変えなくちゃ……」

「そうはいっても、高校生の進路なんて
 進学するかしないかくらいだろう?
 行きつく先が同じならあきらめるしかないんじゃないか」

そう語る先生の顔をまじまじと見つめた。

「な、なんだ?」

「先生、私、あのハゲと結婚しない方法見つけたわ」

「そうなのか?
 それで、どの進路にするんだ?」

私は進路希望調査にペンを走らせた。


「私、先生のお嫁さんになる!
 先に結婚しておけば、もうあのハゲは来ないわ!」


第1希望:お嫁さん


 ・
 ・
 ・

あれから30年が過ぎた。
子供は2人できて慎ましくも充実した毎日を送っている。

高校卒業とともに先生と歳の差婚することに
同級生や家族は驚いていたのが今は懐かしい。

「あなた、私はあのときの決断、後悔していませんよ」

「どうしたんだ急に」

「伝えたかったんです。
 今がとても幸せだっていうことを」

「ああ、僕もだよ」

二人並んで縁側に座り、静かに外を眺めていた。

旦那の髪はめっきり減ってしまい、
どこか見覚えのあるハゲ頭になっていた。