小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

10,000人のこども誘拐してます

INDEX|1ページ/1ページ|

 
全国から子供の神隠し事件が同時に起きた。
それも1万人の子供が同時に消えた。

パニックになる前に、犯人は名乗り出た。


『私が1万人の子供を誘拐した犯人です』

男は1万人の子供たちを、たった1人で誘拐していた。

※ ※ ※

「ようし、警察隊出動だ!
 あの名乗り出たアホな犯人を捕まえるぞ!」

「はい!!」

1万人の誘拐犯はマヌケなことに、
テレビに出たとき自分の背後が映っていた。

それであっさり場所を特定できる。

「1万人を隠すことなんてできない。
 現場に行けばたちどころに、一網打尽だ!」

警察は犯人が隠れているドーム会場へ特殊部隊を送った。
誘拐犯に気付かれないよう進んでいくと……。

「おっ、特殊部隊からの報告が来たみたいだ。
 きっと犯人逮捕だろう。ははは、あっけなかったな」

『ほっ、報告します! 犯人が……きっ、消えました!
 犯人だけじゃありません、ひ、人質も!』

「はぁ!?」

現場に行ってみると、すでにもぬけの殻。
警察の動きに気付いたのだとしてもあまりに早すぎる。
1万人をぞろぞろ引き連れていれば嫌でも目に付くのに。

「いったい何が……」

そのとき、テレビで誘拐犯が映った。

『警察の皆さん、捜査ご苦労様です。
 残念ながらそちらに我々はいませんよ』

「消えたんだ……急にパッて……」

突入した特殊部隊はうわごとのように繰り返す。

「消えたってどういうことだ?」

「そのまんまの意味だよ。
 目の前に1万人と犯人はいたのに、消えてしまったんだ。
 まるでワープだよ……」

「ワープ……?」

『無能な警察の皆さん、せいぜい人を集めて追い詰めてみなよ』

犯人はそれだけ言って映像を切った。


「完全に警察をバカにしやがって!
 こうなったら総力戦だ! 必ずつるし上げてやる!」

犯人の挑発に乗った警察は持てる力すべてを出して犯人確保へと動いた。
街の監視カメラすべてを細かくチェックし、
毎日テレビで犯人の顔と人質を公開し、情報を集めた。

それでも、犯人の尻尾すら捕まえられない。

「くそ! いったいどうなってるんだ!
 情報を集めて現場に行っても、人ひとりいやしない!」

現場にはビデオメッセージが残っていた。

『警察のみなさん、無駄な努力ご苦労様です。
 私にはワープできる不思議な力があります。
 だから、あなた方がどんなに追いかけても捕まえることはできません』

ビデオメッセージの中で犯人は短いワープ移動をしてみせた。
あまりに一瞬のことで、信じられなかった。

『無能なあなた方は犬のように私の後をついてくればいい。
 あはははははは!』

「むっきー! こいつぅ! 調子乗りやがって!!」

「でも、犯人は何を望んでいるんでしょう?
 身代金の要求もしてきませんし、それどころか
 自分の手の内を明かして、わざわざ事件の規模を大きくして……。
 まるで捕まえたがっているみたいです」

「自己顕示欲の塊なんだよ。
 警察にヒントを与えたうえで手玉に取る自分の姿を
 全国のお茶の間に届けたいのさ。ムカツク奴め」

ムカつきはするが、犯人の言うことは最もで
映像で偉そうに披露していたワープ能力はあまりにすごい。

あんなものを使われれば、犯人を見つけたところで捕まえられない。

「いったいどうすればいいんだ……」

「あの、犯人を捜すのではなく
 犯人が行きそうな場所を探してみては?」

部下の進言で一気に視野が広がった気がした。

「そうか、そうだよ!
 犯人を追いかけるんじゃなくて、先回りして張り込むんだ!
 1万人を収容できる場所なんて限られている!」

警察は捜査方針を180°転換して、待ち伏せ作戦に切り替えた。
全国各地の潜伏候補場所に大量の警察を送り込んでから
特殊部隊は犯人の現在の潜伏先へと突入した。

「!」

犯人は特殊部隊が現れるなり、また一瞬でワープする。
しかし、ワープ先のドーム会場にはすでに警察が待ち構えていた。


「来たぞ! 逮捕だ――!!」


警察は犯人の不意をついて逮捕に向かった。
さすがのワープ能力も急には使えず、手錠をかけて確保成功。

「ははは、警察をなめるんじゃねぇ。
 さすがのお前も、手錠をかけられるとワープできないようだな」

「完敗だよ」

「それで、貴様の要求はいったい何だったんだ?
 金か? 名声か? それとも小さな子供をはべらせたかったのか?」

「そのどれでもないさ」

警察は犯人を署まで送った。
かくして、史上最も大規模な犯人逮捕劇は幕を閉じた。
その様子はリアルタイムで大きく報道された。

「結局、犯人の動機はわからずじまいでしたね。
 最後までなにも要求してませんし」

「そんなのは後にしろ。
 今はこの1万人の子供たちを
 保護者のもとに帰さなくちゃならないからな」

部下の好奇心をぴしゃりと叱り、
1万人もいる子供たちの名前や住所などを細かく調べていった。
そして保護者を呼びつける。

そのとき、どの子供も同じ共通点があることに気が付いた。


「なんだ? この子たちの家庭……児童相談所が来ているぞ?
 それも何度も。いったいどうなってる?」

「まさか犯人の狙いは……。
 警察の目にこの子たちの環境を
 明るみに出させることが狙いだったんじゃ」

1万人の子供たちの保護者がやってくると、警察は彼らを全員逮捕した。


「あんたら、子供に虐待していますね。
 たった今、調べはつきました。あんたら全員逮捕します!」


1万人の子供たちは本当の意味で解放された。