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I新施設長に捧ぐ

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I新施設長に捧ぐ

ケアマネジャーになって、いろいろな業務を任されて、毎日、毎日しんどい業務をこなしている。みんな歓迎的で、優しい言葉をかけてくれるのに、僕をぼろくそ嫌う一人の看護士の存在がどうしても気になっちゃう。味方はたくさんいるのに、たった一人の存在で、僕はやはり駄目なんだ、はなっから無理な仕事だったんだと思う。みんな優しい“言葉”をかけてくれるけど、僕の仕事を一緒にやってくれるわけではない。

 しんどい。逃げたい。

 僕は一人の人間としても生きていくことができないのか。だんだんよからぬ事を考えている時、ふと大学時代、同じようによからぬことを考えたときに聴いた曲を口ずさんだ。

Every little thingのtime goes byだ。
利用者を介護タクシーで病院に連れ、そこから施設にバスで戻る途中のことだった。

♪きっときっと誰もが、何か足りないものを、無理に期待しすぎて、人を傷つけている♪

 俺何考えてんだろう。生きなきゃ。

 涙が出てきた。

 何でこんなことで負けているんだ。ゆっくり進めばいい。地に足がついてなきゃ。目の前の敵は現実だ。決して悪魔なんかじゃない。いっそのこと悪魔が敵なら、僕は勇者のように勇ましく戦い続けることができるのに。敵が現実だからやっかいなんだ。ごちゃごちゃした現実。彼が正しくて、彼女が悪くて、いや彼女がある意味正義の味方で、僕はすべて悪い?矛盾が矛盾でグルグル回る。
 
自分をしっかり持て。そうだ、現実に即していない奴の発言は断捨離。

矛盾に寄り添っても、いつまでも苦しみ続けるだけだ。そんな苦しみの堪えることが、本当の強さなのかい?人ってこんなにも弱いものなのか。世の中の上層部にいる人達が、成功している人達が、こんなにも弱い者同士の集まりなのか。

 倒すべき魔王は白黒はっきりつけたがる自分自身。

 自分は決して大きな器じゃない。

 でも器を用いると書いて、器用と読む。
 僕をコントロールできるのは僕だけなんだ。

 現実に即していない奴はどんな綺麗ごといっても断捨離。

 そうだ、やっていけるかもしれない。

                        (了)
作品名:I新施設長に捧ぐ 作家名:松橋健一