知られざる左手
時々こっそりと愛撫する
わたしにさえ知れぬ時に
このわたしが
幻覚が去って
静寂が訪れる
音楽だけが立ちのぼる、この胸中の伽藍に
左手はまだ動き
時の区切りをつける
震える左の手はユダのように
もっともいたいけなる信徒
裏切られても
イエスは許すだろう
左手は自らの罪深さに
生涯泣くのだ
おお 主よ
わたしはあなたを許したんじゃない
わたしはイエスじゃない
ただ忘れたふりをしているだけ
くだらなさは
このわたしの特許なのさ
それがたまたまあなたを呼んだ
獣のように
手負いの左手を隠しながら
わたしは生き永らえる
口にダイヤモンドをくわえて