ブラック・サンシャイン
もうこの眼など潰れてもいいと
宇宙空間に浮かぶ
母なる島
彼女の黒衣になる時
その炎と同じ炎で
煙草に火を点ける
こぼれる煙を手で退けて
彼はおだやかに微笑む
死神が優しくしてくれるから
死者は皆、良き友だと
蛇が巣穴から抜け出し
あの温もりを求めて
樹木を這い登っていく
時が今彼の鱗を剥いで
彼は絹のよう
兎が耳を立てる
彼は逃げ続ける生がいつか捕らえられることで終わるのを
知っている
太陽はやがて
リングを抜けて
彼女はさむけに身震いする
100年目のこの日
彼女の婚礼は静かに進む
作品名:ブラック・サンシャイン 作家名:青井サイベル