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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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全知全能の神ゼウスを取り調べ中...

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取調室は険悪な空気に包まれていた。

「お前が犯人だろ! わかっているんだぞ!
 あの時間にあの場所をうろついていたのはお前だけだ!
 いい加減、白状したらどうなんだ!」

「わしは全知全能の神ゼウス。
 どんなこともお見通しじゃ。
 わしが犯人だとしたら完全犯罪になるじゃろう」

「こっちの質問に答えろ!
 お前が犯人なんだろ!」

「わしじゃない。ゼウス、ウソツカナイ」

「証拠はあるのか!?」

「ないがのぅ」

「だったら、お前が犯人じゃないとも言い切れないぞ!
 お前が自白しない限り、ここからは出さないからな!」

ゼウスはふむと長いひげを撫でて考えた。
もちろん犯人じゃないし、心当たりもない。
でも、それを証明する証拠がない。

「おお、そうじゃ。
 だったら全知全能なわしの力でもって
 真犯人を逮捕するのはどうじゃ?」

「なんだって?」

警察は目を丸くした。

「わしは全知全能の神ゼウス。
 どんな人間であれ、わしの目から悪事を隠すことはできない」

「そんなことあるわけない!
 貴様、自分が神にでもなったつもりか!」

「神じゃよ?」
「うっせぇわ!」

警察官は矢継ぎ早に同じような質問をしてくるが
全知全能の神なので、そんなことはあっさり無視。

目を閉じて、今も逃走中の真犯人を発見する。

「見つけたぞ。○△区の12丁目に潜伏中じゃ。
 今は家にいるから乗り込めばすぐに捕まえられるじゃろう」

「なにを言っている。
 そいつが真犯人だという証拠がないじゃないか。
 俺たち警察をここから離れさせて、自分が逃げるつもりだろう」

「全知全能に隠せるものは何もない。
 証拠は玄関の植木鉢の下に隠してあるのじゃ」

「な、なんだって?」

「早くしないと証拠を隠されてしまうぞ?
 どうやら犯人は出かける様子じゃからな」

「くっ、おい!
 すぐに数人をその住所に向かわせろ!」

警察官は部下を現場に急行させた。
その間も、ゼウスが逃げ出さないように監禁しながら。

数時間後、犯人は逮捕された。

「どうじゃ? わしの言った通りじゃろ?
 全知全能の前にはいかな悪事もお見通しなのじゃ」

「ああ、確かにお前の言う通り植木の下に証拠はあった。
 だが、犯人は否認を続けている。
 誤認逮捕だったらお前のせいだからな」

「ほほ、何を言っておる。
 全知全能のわしに見抜けぬものはない。
 犯人と面会させてくれんかの?」

「貴様、何様だ!」
「神様じゃ!」

一応、犯人逮捕に協力したのもあり
全知全能の神ゼウスの前に犯人が面会した。

「悪ぃが、オレはなーんにもやってねぇぜ。
 植木の下にあったやつも、身に覚えがないしなぁ。
 誰かがオレに罪をなすりつけようとしてたんだろ」

「ほほほ、そうかぃそうかい。
 でも、お前さんの財布にあるレシートはどう説明するんじゃ?」

ゼウスは初めて見るはずの犯人の財布を見通し、
その中にある植木の購入レシートを指摘した。

犯人は意表を突かれ、脂汗がだらだらと流れていく。

「こっ、これはちげーよ!
 その……拾ったんだよ! ホームセンターで!
 だから俺が買ったんじゃねぇよ!」

「ということは、植木購入と一緒に買った
 お前さんの家の写真立てもお前さんのものじゃないということかの?」

犯人はますます顔を青ざめる。

「ちがっ……たまたま一緒だったんだよ!
 たまたま同じ写真立てを買っちゃっただけだ!」

「ほほほ、そうかそうか」

ゼウスがこれ以上突っ込んでこないことを見越し、
犯人は再び最初の勢いを取り戻す。

「言いたいことはそれだけか?
 偶然の一致で犯人に仕立て上げられたらたまらねぇや。
 それじゃ、オレは帰らせてもらうぜ」

「最後に1つだけいいかの?」

「んだよ、しつけぇなジーさん」


「お前さんが利用したホームセンターは人気がなくての。
 写真立てを買ったのは、後にも先にも1人だけなんじゃよ。
 お前さん以外に買った人は誰もいないんじゃ」

「え゛っ……!」

ゼウスによる全知全能な取り調べの結果、
犯人はついに自分の罪を認めて自白した。

長年、綿密な捜査を続けていても捕まらなかった犯人を
ついに捕まえられたことで警察は大喜び。

ゼウスの容疑は晴れて解放されることになったが、

「よくやったぞ、ゼウス! おかげで逮捕できた!」

「ほほ、全知全能の前にいかなウソも隠し通せんよ」

「ゼウス、貴様のその才能を買って頼みがある。
 今後とも警察でその力を活かしてみないか?」

「ふむ、それは面白いかもしれんのぅ」

天界では使うアテのなかった全知全能の力。
地上で生かすことができれば、きっと平和になるだろう。

ゼウスは快く警察に協力を受け入れた。

「わしの全知全能の力、大いに役立たせてみせよう。
 これは地上生活が長くなるのぅ♪」

ゼウスは妻のウンディーネに「遅くなる」と連絡を入れ、
その全知全能の力をいかんなく発揮した。






そして、すぐに天界へとゼウスは戻って来たので
ウンディーネは驚いた。

「あら、どうしたの?
 地上で悪を根絶させるまで帰らないと聞いていたのに」

ゼウスはまだ納得できていない顔で答えた。


「全知全能の力で警察の悪事を暴いたとたん
 すぐに追い出されてしまったよ」