小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

笑ってられるのもプロフィールを知るまでだ!

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
実名登録SNS『Non Fiction』に登録することにした。
ただのプロフィールサイトだが、
登録するとほかのSNSサイトにもこのプロフィールが反映される。

まあ、楽だ。
それ以外にこんな無意味なプロフィールサイトなんて利用しない。


名前:

略歴:


「略歴、ねぇ」

このサイトでは実名登録が義務付けられている。
それはつまり「ウソ」はNGということなんだろう。

でも、俺の箸にも棒にもかからない
真実のプロフィールを書いたところでどうなるのか。

「ちょっとくらいなら、盛ってもいいよな」

本当はしがないビルの掃除の仕事をしているのに、
そのビルのIT部門に勤めていることにした。

一応、同じビルの中で仕事はしているし……。


翌日、変化はすぐに訪れた。

「前から君のことは本社に必要な人材だと思っていたんだよ!」

掃除をしていた俺に、IT社長が声をかけてきた。
そのままトントン拍子で俺はIT会社に電撃入社。

年収はこれまでの10倍になった。

「い、いったい何が起こったんだ!?」

思い当たることはただ1つ。
あのプロフィールサイトだった。


家に帰って自分のプロフィールを確認すると、
ふざけて入力した内容と今日会社で話された内容は完全に一致。

年収も雇用形態もなにもかも。

「このプロフィールサイトがウソを禁じていたのは……。
 ここに書かれた内容が真実になるからなのか!!」

しばらくはサイト側からの罰が来るかとびくびくしていたが、
どうやら何もないことがわかると安心してプロフィールに手を加えた。

「へへ、どうせ何も怒られないんだ。
 だったら俺の人生をバラ色にしてやるっ」


略歴:

IT会社に入社し1年で年収1000万円を超える
都内で一番大きな豪邸を建てて暮らす
休日は海外旅行に行き、そこでまた金が舞い込んでくる
買った株はすべて大当たりし、莫大な資産を築く


「よし、こんなもんだろ!」

プロフィール欄に書ききれないほどびっちり文字を埋める。
明日が待ち遠しくなるなんて小学生の遠足以来だ。


翌日、俺が書いたプロフィールは現実のものとなった。

しがない掃除の社員だった俺は1日にして
億万長者で豪邸住みの誰もがうらやましがる男になった

ただ、1点を除いては……。

「あんな広い豪邸に1人で住んでいるんですって」
「金持ちのくせにモテないんだな」
「きっと性格が悪すぎるのよ、やだやだ」

豪邸の前を通りがかるたび、
人々はそこに住む俺の悪評を広めていく。

「ちがうし! 好きで独身なんだし!!」

窓から必死に抗議しても、庭が広すぎて声が届かない。
このままでは寂しい独身貴族だと思われる。不愉快だ。


さっそくプロフィール欄に彼女ができる旨を書き込んだ。

略歴:
IT会社に入社し1年で年収1000万円を超える
都内で一番大きな豪邸を建てて暮らす
休日は海外旅行に行き、そこでまた金が舞い込んでくる
買った株はすべて大当たりし、莫大な資産を築く

かわいい彼女ができる。

「ふふふ、楽しみだなぁ」

翌日、俺はまだ見ぬ彼女を楽しみに待っていた。
でも、待てど暮らせど一向に姿を見せない。
気が付けばもう1日が終わろうとしていた。

「未来がプロフィール欄の通りにならないなんて!」

変わったことと言えば、自分の部屋に野良猫が迷い込んできたくらい。
猫が好きなのでめちゃくちゃ可愛いけど、肝心の彼女は……。

「ん? かわいい?」

猫を抱き上げると、メスだった。
もしかして、可愛い彼女って……ねこ?

「にゃあ」

「ぐっ……かわいいけど! かわいいけどぉ!!」

そういうことじゃない。
細かく指定しなければ、理想の彼女を作ることができない。

単にプロフィール欄に追記すればいいと思っていたが、

『略歴文字オーバーです。これ以上は書き込めません』

「くそ! 彼女の指定ができてないのに!」

俺の略歴はこれ以上書き込めなくなっていた。
理想の彼女の情報を書き込むには、自分の略歴を削る必要がある。

でも、今更になって豪邸を手放す気もなければ
大儲けできる株も、俺の会社も手放すつもりはない。

「いったいどうすれば……」

まさに八方ふさがり。
悩みつつ、答えを探すように『Non Fiction』を巡回していた。

ふと、理想のプロフィールの女を見つける。

「へぇ、スリーサイズがマリリン・モンローと同じで
 誰よりも頭が良いいのか……最高じゃないか、写真以外は」

天は二物を与えず。
頭が良くてスタイル抜群の彼女は、顔が俺の好みじゃなかった。
道路で轢かれたヒラメみたいな顔だった。

次に見た写真は、声が出ないほどの絶世の美女。

「おおおおお! こんな人が彼女ならさいこ……。
 仕事は水商売で、付き合った男は1万人……えええ……」

ルックスは最高なのに、略歴は愛が冷めるほどの内容。
でも、冷え切った頭が1つの悪魔的なアイデアをひらめかせた。


「さっきのヒラメ女と、この美女を合成させれば
 間違いなく理想の彼女になるじゃないか!」


幸い、俺はIT会社の社長にして億万長者。
こんなプロフィールサイトをいじくりまわすなんて、簡単だ。

ハッカーを雇って、ヒラメ女と美女の名前を入れ替える。

これで、超美人にして最高の略歴を持つ女と
ブスでどうしようもない略歴の女が出来上がった。

「あとは、俺の略歴を変更して……」


略歴:
IT会社に入社し1年で年収1000万円を超える
都内で一番大きな豪邸を建てて暮らす
休日は海外旅行に行き、そこでまた金が舞い込んでくる
買った株はすべて大当たりし、莫大な資産を築く

美女 麗子と結婚する。


「名前で特定すれば完璧だ!
 これで美女で頭が良すぎる妻を持てるんだ!」

我ながら自分のアイデアにほれぼれする。
明日、俺は最高の彼女との新生活がはじまるんだ。



翌日、タキシード姿で待機していた。

「早く来ないっかな~~♪ 俺の理想のカ・ノ・ジョ♪」

めちゃくちゃ頭がいいから、
きっと俺の知らないことをいっぱい教えてくれるんだろう。

もしかしたら、『Non Finction』の新たな応用もできるかも。
ああ、楽しみだ。早く会いたい。


が、いつまでたっても彼女は来なかった。
そのまま1日が終わってしまった。今度は猫すら来ない。

「……なんでだ?」

不思議がっていると、友達から電話がかかってきた。
顔だけはいいクセに借金まみれのクズみたいな男だ。

『もしもし? 聞いてくれよ、ついに結婚できたんだ!』

「あーーはいはい。今、忙しい」

いら立ち紛れに電話を切る。
こんな時に自慢なんかしてくるんじゃねぇよ。

「いったいどうして……。
 プロフィール欄は変わってないのに」

パソコンでプロフィール欄を確認した。
略歴は俺が書いていた通りになっていた。
ただ、1つだけ変わっていた。


「名前が……俺の名前が変わってる!」


俺の名前は、友人のものとすり替えられていた。
さっきの結婚報告は、俺の理想の美女との結婚報告だったんだ。