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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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サンタクロースの違法労働について

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季節外れにもかかわらず裁判所はもめていた。

「サンタクロースの人権を軽んじてる!
 我々の仕事をなんだと思ってるんだ!」

「ですから、先ほどから申し上げた通り
 サンタクロースだからといって国は特別扱いできません」

「サンタが来なくなってもいいのか!!」
「そうは言ってない!!」


「静粛に!!」

裁判長がいらだたしげに木槌をたたいた。

「サンタクロース被告、説明してください」

「はい。毎年サンタクロースはプレゼントを贈っている。
 なのに国からの支援金は年々減ってきている。
 激務のうえ、薄給なんてわりにあわない」

「少子化になっているので、支援を減らすのは当然です」

「年々子供のおもちゃは高くなってるんだよ!
 最近じゃゲームやドレスやら求められてる!
 べーごまやめんこの話じゃないんだ!」

「そこはサンタクロースの企業努力がいるところでしょう。
 国が子供のニーズに合わせて支援金を上げることなんて
 できるわけありません」

「バカ野郎! だからサンタがどんどん使いつぶされてるんだ!
 毎年サンタの人数は減ってきている!
 このままではいつかプレゼントが贈れなくなる!」

「だからといって、国が力を貸すことはできません」

裁判は完全に平行線でお互い1歩も譲らなかった。


毎年あくせく働いているサンタ。
一方でムダな出費を抑えたい国。

両者の思惑はどちらかに傾くことはなく裁判は続く。

そこに1匹のトナカイが来るまでは。


「ちょっと待った!」


「トナカイ……!」

サンタはトナカイの登場に驚いた。
トナカイはひづめを鳴らしながら入ってくる。

「これを見てください」

トナカイはプロジェクターに、とある駅前での寄付金の映像を出した。
首から箱をぶら下げたトナカイが並んでいる。


『サンタクロース寄付金にご協力くださーーい』
『くださーーい』

『子供たちのプレゼントを買うお金が足りませーーん』
『ませーーん』

『クリスマスに子供の夢をかなえさせてくださーーい』
『くださーーい』


映像が止まると、国の顔色は真っ青になった。

なにせ、これまでお金が足りない理由を
"サンタの努力不足"で片付けていたのに
ここにきて確たる証拠を突きつけられてしまったのだから。

「こちらの映像でわかるように
 クリスマス前にはトナカイが寄付金を集めています。
 でないと、サンタクロースは立ち行かなくなるからです」

「うう……」

「子供が寄付することもあります。
 子供が寄付した金で子供にプレゼント贈って、
 それがサンタクロースと言えるんですか!?」

「そーだそーだ」

サンタもトナカイの勢いに便乗する。

国がなにも言い返せないことがわかると、
裁判長は判決を決めた。

「では、国は今後サンタクロースの扱いを改めること。
 社畜のように扱うことを禁じ、支援金の増額を要求します」

「……わかりました」

「 これにて閉廷! 」

大勝利にサンタクロースは大いに喜んだ。


「でかしたトナカイ! お前のおかげだよ!」

「いえいえ、感謝するのはまだ早いですよ」

「え?」

トナカイは自分の角で裁判長の帰り道をふさいだ。
そして、一言。


「裁判長、サンタクロースがトナカイに対する扱いがひどいんです。
 毎年毎年空を走らされ荷物を引かされて……。
 サンタ以上に薄給で激務です。
 当然、サンタ以上の支援金はいただけるんですよね?」

裁判長は即答した。

「では、サンタの支援金はすべてトナカイに贈るように」