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青井サイベル
青井サイベル
novelistID. 59033
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不夜城のかざりつけ 第六夜

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年月というのは不思議なもの。
晩春の宵に、積もる年月のことを考えてみる。



かつては不安定でできてるような人間だった。
箸が転んでも鬱のあまり遁走し、生命の限り大爆発するような。
よく生きてこられたと思う。
厳冬の真夜中を酔って走り出して迷子になり、電柱の下で泣いているところをやくざのカップルに助けられたリ、
死のうとしたことも数知れず。
恋愛活動も派手すぎて刃傷沙汰にならなかったのが不思議なほど。
何度も家出し、何度も閉鎖病棟に入院した。



なんで生きてきたのだろう。
わからなかった。
答えなんかあるわけがない。
ただ、年月が経って。
その辺は今、ボブ・ディランに説教できるくらいにはなれたかもしれない。
答えは風の中、なのではない。
答えは自分自身の中に、あらかじめプログラムされている。
その起動ボタンを押すことに気づくまで、闘いは続くのだ。
起動すれば、すべての意味がリンクしていく。
遺伝子の旅の意味が。



命運を悟ったわけでは、まだ、ない。
ただ、頭の中に浮かんだ言葉を小さな紙に書きつけて、壁に貼った。
いつでも目に付くところに。


「なすべきこと。
人に優しくすること、許すこと、笑うこと。
表現したいことを表現すること。
他人を傷つけず、自分を傷つけず、
人として正しく心地よくあること。
思い悩むことなく、今なすべきことをなすこと。
まだまだこれから。
いつまでかはわからないけれど、希望と夢と挑戦を忘れぬこと。」



奥義でもなんでもない。誰でも思いつくようなことだ。
しかしわたしにとってはこのうえない真実。
この注意書きがどこからやってきたのかわからない。
この生命の取説が。
ただ、これは歌にあるように風の中からではなかった。



埋もれてたんだ。中に。



春の星がそろそろ、ぼんやり天を彩り始めているだろう。
月は朧だろうか。
酒が飲みたい。李白のように。
でも今日は飲酒日でないので、いい匂いのお茶。


壁には取説が光ってる。
どこから来たのか、知ってる。
よほどのことがない限り、もうわたしは荒ぶらないだろう。
見つけた。
何万の真砂の中から、何兆の星の海から、この粒だけが光っていたのだ。
だから今宵、ここの壁にも、落書きしてみよう。
奥義でも何でもない。
ただの、しおりのようなもの。
ページを留めるくらいのものにはなれるかもしれない。
個人的暴走族の、落書き。