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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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忍者に防犯させれば最強じゃん!

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「あわ、あわわわわ……!
 あたっ、あたたっ、当たってる……!!」

「あなた、どうしたの?」

「宝くじが当たってるんだよ!!
 しかも、1等が何個も当たってる!!」

期限切れや番号のミスなどはない。
何度確認しても、番号はぴったり一致していた。

こうして一晩にして億万長者になった。

換金して家に現金が山積みになると
自分がとんでもない状況に置かれていることを理解した。

「あなた、よかったわね!
 これから毎日遊んで暮らせるわ!」

「それより……この現金をどうするか。
 どこかに頑丈な金庫でも置くしかないだろうな。
 いや、しかし、家に金庫なんか置いたらなぁ……」

"ここに大金がありますよ"と知らしめるようなものである。

「あなた、家に金庫を置くのだけは嫌よ。
 主婦会をやるときに目に入ったら、きっと嫌な顔されるわ」

「うーん、そうだなぁ……」

金庫で金は守られても、世間体は守られない。
大金を持っていると思われれば、金をせびってくるかもしれないし。

「なんとか誰にも気づかれずにお金を守れないものか……」

「あなた、これはどうかしら?」

妻の差し出したチラシを見て、
さっそく「忍者防犯システム」へと連絡した。

電話が終わってから数分後、忍者が自宅の天井にへばりついて登場。

「ご契約ありがとうございます。忍者です」

「あーー、えと、防犯システムの忍者でいいんだよね?」

「はい。拙者は忍者防犯システムの筆頭・服部犯蔵でござる」

「今にも犯罪を起こしそうな名前なんだけど……」

「安心するでござる。拙者が来たからにはもう安心。
 誰ひとり部外者は侵入させないし、
 誰にも拙者の存在を悟らせないでござる」

「大丈夫かなぁ」
「あなた、忍者さんを信じましょう」

忍者防犯システムが家に導入されたとはいえ、
やっぱり不安なので一応お金は見えにくい場所に隠した。




それから、数日も過ぎると最初にあった不安感は
忍者によってことごとく解消されていた。

「主君、今日はゴキブリ2匹と蜘蛛1匹の侵入でござった。
 どれも拙者が排除したでござる」

「うむ、ご苦労」

「では失礼つかまつる」

忍者はまたどこかに姿を消した。

家には何度も人が出入りしているが忍者の存在を気付かれない。
忍者は人間はもちろん、ハエすらも侵入させない徹底ぶり。

まさに完璧な防犯システム。


ある日、リビングに行くと沈んだ表情の妻がいた。

「おい、どうしたんだ? そんな暗い顔をして」

「あなた、財産のことで相談があるの」

「ああ、それなら忍者防犯システムがあるから大丈夫だろう。
 どんな手練れの空き巣であったとしても忍者には勝てないよ」

「ええ、そうね。だから危ないのよ。
 うちの忍者がもし裏切ったらって考えたら……」

「あっ……!」

根耳に水だった。
どうしてその可能性を排除していたのか。
普段から従順な忍者だから裏切るわけないと安心していた。

あれだけ隠れるのが上手い忍者が、
もし、金に目がくらんでうちの財産を持ち逃げしたら
もはや素人の我々では足取りを追うこともできない。

「いくら忍者といっても人だし、
 それにお金で雇われている身なのよ。
 お金が欲しいという気持ちは必ずあるわ」

「そんな……いったいどうすれば……」

「あなた、私に財産を残す方法がひとつだけあるわ」

妻はテーブルの上にそっとチラシを出した。
チラシには忍者の訓練施設が紹介されていた。

「忍者……セミナー?」

「ええ、あなたが忍者になればいいのよ。
 あなたが忍者になれば、裏切ったとしても見切れるはず。
 目には目を、忍者には忍者よ」

「なるほど! その手があったか!」

「でも、生半可な忍者修行じゃダメよ。
 きっちり、この『プロフェッショナルコース』を選んでね」

「期間3年か……長いな」

「それだけ完璧な忍者になれるのよ。
 あなたが留守の間は、この家の財産は私がすべて守るわ。
 絶対に誰にも渡さないから」

「ああ、俺頑張るよ!!」

かくして修行の日々が始まった。



忍者セミナーの修行はとても厳しく、
家に帰れない日々が続いたがついに最終日までやり抜いた。

「ふぉふぉふぉ、お前さん、よくぞここまで修行したのぅ。
 お前さんは晴れて忍者免許皆伝じゃ」

「ありがとうございます、師範っ!!」

3年にわたる長い忍者修行を経て家に帰る途中だった。
まさに悪魔の発想が頭をよぎった。

「待てよ……今の俺なら財産を独り占めできるんじゃないか」

忍者防犯システムを解除したら、家には忍者が俺だけ。
そうなればもはや俺の現金持ち出しを止められる人はいない。



財産はすべて俺のものだ。



「ただいまーー」

家には誰もいなかった。
これはラッキー。今のうちに持ち出すとしよう。

「ふふふ……この押し入れの中に……」

押入れを開けると、入っていたはずの金がなかった。
いくら探しても見つからない。
焦った俺は犯蔵を呼びつけた。

「犯蔵! 犯蔵! おい、お前なにやってる!
 ちゃんと防犯しろといっただろ!
 金が盗まれているじゃないか!!」

「主君、拙者はちゃんと財産を守り続けていたでござるよ」

「ウソつけ! だったらどうして金がないんだ!!」

「それは……そこに書いてあるでござるよ」

犯蔵は押し入れに残された1枚の書類を指さした。



『中央裁判所 見解』――――――――

3年も家を顧みず育児も放棄した夫については
弁解する余地もなく財産の相続にふさわしくないと判断。

よって、妻の離婚を認め財産はすべて妻のものとする。

――――――――――――――――――


俺は今さらになって、忍者修行を勧めた妻の言葉を思い出した。

―― 絶対に誰にも渡さないから


「いやはや、女性とは皆生まれながらにして
 くのいちなのでござるな」