死者との対話
言うと大好きな死者は
菩提樹の木陰でふいとこちらを見た
いちめんの野原
果てない野原
花が咲いてる
わたしが下世話になったり理屈っぽくなったりするの、わたしいやなの
ふつうでいたい
死者は酒をひとくち飲み
たばこのけむりをゆるゆる吐き出すと
揺れているのも修行なんだよ
と言った
わたしはいろんなことが理解できない
と言ったら
誰だってそうだよ
と言った
どうしたらもっとよくなれるのかな
と言ったら
それは我欲というんだよ
と言った
平常心でいたいと言ったら
ここを思い出しなさいと言った
疲れたの
と言ったら
動物のようにきちんと休みなさい
動ける時が来るから
と言った
そしてちゃわんに酒を注いでくれて
たばこを一本くれた
酒はあまくて
たばこはおいしかった