解けるまで時間停止です!!
この後、いったいどうなるでしょう!?」
どこからか声が急に声が聞こえた。
体は動かなくなり、世界は時間が止まったように停止している。
どうなるって……どういうことだ。
あたりを見回してみても、
クイズの答えになり得そうなものはない。
「え、あ……雨が降る、とか?」
「ドルルルルルル……ジャン!
正解は"車にひかれる"でした!!」
時間停止が解除されると、
後ろに迫ってきていた自動車にはね飛ばされた。
すぐにやってきた救急車に担ぎ込まれる。
「バイタル正常! 出血も問題ありません!」
「聞こえますか――!? 聞こえますか!?」
バタバタとせわしなく動く救急隊員の動きがぴたりと止まる。
「ここで問題です!
この後、いったいどうなるでしょう!?」
また天からの声が聞こえた。
周りは時間が止まり、必死な顔のまま救急隊員は止まってる。
どうなるって……どうなるんだ?
「救急車が揺れるとか? 救急車が事故るとか?
まさか……俺が死ぬとか!?」
「ブブーーっ。回答は1つに絞ってください」
「きゅ、救急車が事故る!!」
「ドルルルルルルルルル……じゃん!
正解は、救急隊員がキスするです!」
「えっ」
回答が出た瞬間、救急車がぐらりと横にゆれる。
時間停止が解除されたとたんに揺れて、
バランスを崩した救急隊員がストレッチャーに寝かされた俺にかぶさる。
そして、そのまま熱いキスをした。
おっさんの無精ひげがあたって気持ち悪かった。
トラウマが1つできたころ、病院に到着し処置が完了。
麻酔であまり覚えてないけれど、目が覚めたら病室だった。
医者がやってくると、また時間が停止した。
「来たか」
「ここで問題です!
この後、いったいどうなるでしょう!?」
必死にあたりを観察して答えになりそうなものを探す。
医者の手にはカルテがあり、その名前は俺。
つまり、あの医者は間違いなく俺に現状説明に来たのだろう。
「わかった! "医者が俺に説明する"だ!」
「ドルルルルルルルルル……じゃん!
正解は、床が抜けて先生が落ちる、です!」
「わかるかぁ!!」
時間が動き出すと、古びた床が抜けて1階下の病室に先生が落下。
病院で医者が手術を受けるという大惨事になった。
その後も、時間停止クイズは何度も行われた。
「ここで問題です!
この後、いったいどうなるでしょう!?」
「ここで問題です!
この後、いったいどうなるでしょう!?」
「ここで問題です!
この後、いったいどうなるでしょう!?」
「ここで問題です!
この後、いったいどうなるでしょう!?」
・
・
・
でも、その中で1問も正しかったことはない。
その不自然さから俺は気付いてしまった。
「まさか、俺が答えていない未来にしているんじゃないか?」
俺の答えを聞いたうえで、
それが間違いになるような未来にしているに違いない。
床が抜けるなんてそもそも不自然すぎる。
「だったら、逆のことを言えば俺の望む未来にできるはず!」
あえて、自分の望んでいない未来を俺が答える。
そうすると、それが答えにならないように未来が変わるから
結果的に俺が求めている未来になるはずだ。
不正解を出すことで、未来を俺の好きなように調整する。
完璧だ。完璧すぎる。
すると、病室にかねてから片思いしている女の子がやってきた。
「ここで問題です!
この後、いったいどうなるでしょう!?」
ナイスタイミングでクイズが入った。
周りの時間は止まり、俺に回答権がゆだねられる。
あとは、あの子が俺に告白してくれるように仕向けるだけだ。
俺は深呼吸すると、残された答えが「告白される」だけになるように
時間停止クイズの答えを出した。
「病院の建物が壊れて、あの子は俺のことが好きじゃなくて、
自分の思いを俺に伝えようとしたわけじゃなくて、
突発的な事故が起きたりして、この後すぐに俺に彼女ができなかった!!」
答えとしては支離滅裂だが、ある意味ひとつの答えにはなってる。
床が抜けるとかずるい未来になることを防ぎつつ、
彼女が俺に告白してくれるように仕向ける。
さあ、答えの発表だ。
「正解は~~~~……ドルルルルルルルルル……」
俺は息をのんだ。
「ドルルルルルルルルル……」
「ルルルルルルルル……」
「ルルルルル……」
「ルルル……」
終らないドラムロールが答えになっていた。
「ま、まさか……俺が告白する未来って、
どう頑張ってもあり得ないの……!?」
「ドルルルルルルルルル……」
正解に詰まった未来は延々とドラムロールを続けていた……。
作品名:解けるまで時間停止です!! 作家名:かなりえずき