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ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~

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 三箇日を終えてゲーム再開。
 今回受けたクエストは採取『黄金のスープ』だった。
 今回の依頼主は宮廷料理長で、今度王様の親戚一同が集まって食事会が開かれる事になったらしく、食事会に幻と言われた『虹色スープ』を出したいらしい。
 ところがスープを作るには街から船に乗って南下した海域に浮かぶ島に棲息している超小型モンスター『ブリーズ・スワロー』が集めている『虹貝』で出汁を取らなければならなかった。
 だけどその島に凶悪な怪鳥『ガスト・バード』が現れてブリーズ・スワローや島の生物達を襲っていると言う。
 このままじゃ島の生態系が崩されかねないのでガスト・バードを倒して虹貝を採取して来て欲しいとの事だった。

 島に上陸すると突然空が暗くなって周囲に強い風が吹き荒れた。
 上を見るとそこには私達が倒すべきモンスターが翔んでいた。
 逆関節で太い丸太の様な巨大な足の先端に鋭く黒い4つの爪が生えた4本の趾、首の周りだけが真っ白で他が全て真っ黒な羽毛に覆われた胴体、人間の頭など余裕に咥えられる黒光りした大きな嘴に頭に2本の角が生えた頭部、1枚1枚がナイフの様な真っ黒な羽根が幾つも付いた体より巨大な2枚の翼を羽ばたかせていた。
『ギィィェエエエェェ――――ッ!』
「くっ!」
 まるで金属を擦る様な声に私達は耳を塞いだ。
 ガスト・バードはさらに翼を大きく羽ばたかせた。
 まるで台風でも起きたかと思うくらいの強風が吹き荒れ、私達は吹き飛ばされた。
「「「「「きゃああっ!」」」」」
 地面に転がった私達は体制を整え直した。
 宙に浮かんだガスト・バードはさらに大空に飛び上がるとUターン、私達の方に向かって嘴を開いた。
『ガァアアア―――ッ!』
 途端嘴の中からバスケット・ボールサイズに圧縮された空気の砲弾が無数放たれた。
 私は慌てて盾を構えると近くにいたテリオの前に立って空気の砲弾を防いだ。
「ぐっ!」
 防御したおかげで私とテリオにはダメージは無い、他の子達もローネがとっさに防御魔法をかけたおかげでダメージは無かった。
 だけどモンスターの攻撃はこれで終わりじゃなかった。
 ガスト・バードはさらに速度を上げると私達に体当たりをしてきた。
「「「「「きゃああああっ!」」」」」
 私達は吹き飛ばされて地面に転がった。
 ガスト・バードは再び安全な大空へ舞い上がった。
「畜生! 私ら防御しかできないのかよ?」 
「そんな訳ないっ!」
 するとテリオが立ち上がると技コマンドを選択した。
 すると両手の4つの指の間に無数の飛苦無が握られた。
「飛苦無っ!」
 両手に握られた苦無がガスト・バードに向かって放たれた。
 しかしガスト・バードへは届かず『MISS』の文字が浮かんだ。
「めが・ふぁいざッ!」
 アルネも火炎魔法を唱えて攻撃した。
 でも縦横無尽に飛びまわるガスト・バードはあっさり回避された。
 私達をあざ笑うかのように旋回するガスト・バードにルキノは舌打ちをした。
「チッ…… 舐めやがって、あの鳥野郎!」
「コラァ―ッ! さっさと降りて唐揚げになるっス〜っ! さもなきゃ焼き鳥にしてやるっス〜っ!」
「最終的に食べるのね」
 ローネは苦笑した。
 しかし手が無い訳じゃなかった。
 一度でも地面に降りればアルネは拘束魔法『グラビティ・チェーン』でモンスターの動きを封じる事が出来る。
 だけどそれは地面に足を付いてる状態で無ければならなかった。
「何とか地面まで引きずり降ろせば良いんだけど……」
「そうね…… ん?」
「どうしたの?」
 私はローネの見ている方を振り向いた。
 すると数メートル先の浅瀬に波によって岩壁が削られたのだろう、リング状になった海食棚を発見した。
「ルナ、私を少しだけガードしてくれないかしら?」
「どうするの?」
「ちょっと良い事考えたの」
 ローネは冗談交じりにニッコリ笑うと海食棚に向かって走り出した。
「スキル発動!」
 ローネの体が緑色に光った。
 途端ガスト・バードの目にローネが映った。
 ローネが使ったのはインダクション・スキルと言う物で、モンスターの標的を自分の方に映し代えると言う物だった。
 ガスト・バードは大きく翼を羽ばたかせると羽根が飛び出すとまるで手裏剣の様に空気を切り裂いた。
 一直線にローネに向かって放たれたガスト・バードの攻撃に私はコマンド『防御』を選んでガード・スキルを発動させた。
 ローネの前に立ちふさがると全ての羽根手裏剣を防いだ。
 でも私が出来るのはこれだけだった。
 ガード・スキルは1ターンに一度だけしか防御が出来ない。
 このモンスターは1ターンに2回攻撃を仕掛けて来る。
 ガスト・バードはローネ目がけて急降下して来た。そのまま体当たりをするつもりだ。
「ローネ!」
 私はローネを見る。
 ローネは足首まで浸かる浅瀬に水しぶきを上げながら海食棚の洞穴を潜り抜けた。
 そして身を捻って振り向くとガスト・バードは大きく嘴を開けながらローネに迫った。
 しかし突然ガスト・バードはローネに体当たりをする事が出来なかった。
「作戦成功!」
 何とガスト・バードの巨体が海食棚の穴に引っ掛かり、抜けなくなっていた。
 逃げ出す事も出来ずに身を揺すって暴れ回るが、最早ガスト・バードは攻撃も逃げる事も出来なくなった。 

 一方私達は攻撃し放題…… 私の気合い斬り、キルケの正拳突き、テリオのスラッシュ・ファング、アルネが魔法を唱えるとソフトボール位の火球が放たれて爆発した。
 この様子はまるで集団リンチだった。
 でも向うだって二回攻撃や安全な場所にいて攻撃し放題だったんだから構わないだろう。 
 自分のターンを迎えたローネは得物である先端がブリリアンカットのダイヤモンドの様な形状で柄の部分に赤い帯が巻かれた『アイアン・メイス』を構えた。
「お悪戯(いた)をする子は…… お仕置きですっ!」
 振り上げたアイアン・メイスをガスト・バードの頭に叩きつけた。
『ギャアアアア――――っ!』
 ローネの会心の一撃が炸裂。
 ガスト・バードは断末魔を上げながら崩れると画面から消滅した。
「天罰覿面です!」
 言ってる事は丁寧だけど、やってる事はとても過激だった。
 その後私達はブリーズ・スワローの巣を見つけると、巣の中に収められていた虹色に輝くタカラガイを手に入れてクエスト終了した。
 最後にアルネが『虹色スープを飲んでみたいっス〜』ってグズッたのは言うまでも無かった。