散花抄
がれきの原に立ち尽くしていたその顔に刻まれた皺を
あなたをわすれない
あなたの悲痛な泣き声 夫とやっと再会してしがみついたその指に光っていた指輪を
なにがおこったの?
パパは?
ママは?
じいじは?
ばあばは?
おにいちゃん、おねえちゃん、弟に妹は?
痛い
さむい
こわい
たすけて
その透明な瞳たちにどうか魔法の膜がかかってはくれまいか
ほら、だいじょうぶ
わたしの手をやろうな
あったかいおもちゃが入っているよ
空をごらん
太陽を見て
季節はめぐるよ
いま涙が降っても
公転する太陽は
かならず晴れ間を連れてくる
上を見るんだ
鳥がやってくる
散った花たちよ
みながあなたがたを想っている
はりさけるほど想っている
祈っている
み仏よ
千万の手をのべて
かれらを救いたまえ
わたしはわすれない
誰もがわすれない
わたしは花々のためにこの手を捧げよう