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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「歴史に学ぶ恋愛」 その三

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「歴史に学ぶ」ということでいにしえの恋愛から男と女がどういう立場で、どう言うことを考え、どう言うことを思い悩んでいたか、参考にしています。
もちろん当時の言葉が残されているのではありませんが、万葉集に納められた恋の歌を読み解いて、そこから創造された物語を読み感動した部分を抜粋して取り上げています。

大化の改新で政権を蘇我氏から奪い取った中大兄皇子(なかのおおえのみこ)はやがて病に倒れ46歳で死の淵に立ちます。
息子の大友皇子(おおとものみこ)と弟の大海人皇子(おおあまのみこ)のどちらに天皇を譲るか悩みます。

自分の娘二人を大海人に嫁がせ、大海人の妻である額田王(ぬかたのおおきみ)を後添えにして絆を深めましたが、最後は息子可愛いで中大兄は天皇を大友に譲ると決断します。

ひとまずの争いを避けるため、吉野に隠居すると大海人は妻のさらら(うのの讃良皇女=うののさららひめみこ)とごく少数の世話人を連れて都から落ち延びます。
大友に与する中大兄の勢力に殺されることを懸念してです。

吉野までの旅の途中、妻であるさららは夫大海人の心の広さと人を愛する大きさを感じてゆきます。
それだけ人望があった大海人は後に決起して大友を討ちます。これが壬申の乱(じんしんのらん)です。

「あなたは生きているもののすべてを、優しく温かく、おおらかに認める。あなたは愛する能力が人よりずっと大きいのよ。愛する素質がひとよりずっと多いのよ。多くの妻を愛せるのは、あなたにとって自然な姿なのよ、それがやっとわかったわ」

さららはこう夫に向けて言いました。そして続けます。

「他の人をいくら愛していても、私が愛されていないわけではないのね。わたし、愛されているんだもの、もうよけいな嫉妬はしないわ・・・うそ!本当はあなたの愛を独り占めしたい。あなたに人を愛する力が普通の人の10倍あっても、それを10人に分けるのではなく、全部私に欲しい・・・全部!」

さらに続けます。

「でも、これからもきっと一生、わたしはわたしだけを愛して欲しいと願い続けて、あなたは当たり前のように多くの人を愛し続けてゆくのでしょうね。それは私が欲張りだから?それとも・・・私が女であなたが男だから?」

切ない女心と、妻としての自覚が現れた言葉だと感じました。
この時代天皇は妻を数人持っていました。それは自分の後継ぎとしてふさわしい男子を生むためでした。

それでも夫として天皇を見れば一人の妻、そして女です。
愛されたいこと、独占したいことに他の女性と変わりはないのですね。