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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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モクモクレンの町はミニスカ厳禁

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最初は地面に目が現れたところからはじまった。

地面には、人間の目がぱちくりと瞬きしている。
ロボットでもないし、人間でもない。

この不思議な現象はどこでも確認できるようになった。

『現在、日本中で確認されている"目"の発生は
 専門家によると、
 "うつるので目をつむらせないように"とのことです!』

ニュースの映像では目が出ているコンクリートを
切り抜いて、新しくコンクリートをはめ込んでいるようだ。

そして、新しくコンクリートをはめた瞬間。

同じ場所に小さな亀裂が入って、
ふたたび目が開いた。

『現在、政府は"目"の除去方法について議論していますが
 ちょうどいい現実逃避の材料ができたとあって
 環境汚染と酸性雨の議論をすっぽかし解決策を出さない議論を続けて……』

テレビを切って、窓の外を見てみる。
今や地面はもちろん、電柱にも、車にもどこにも目が出ている。

「なんだか監視されているみたいだ……」



数週間後、政府は"目"の除去作業の中止を発表した。

『えーー、政府といたしましては
 "目"の出現に伴って犯罪率の激減が確認されたのと
 撤去しても意味がなさそうなので、手を引くことを決めました』

いくら目の周りを切り抜いて、撤去しても同じ場所に出てくる。
さらには、新しい場所にもどんどん目は現れる。

町はまさに目だらけになっていた。

昔、子供のころに読んだ『妖怪大図鑑』にある
"モクモクレン"という妖怪にでも侵略されたみたいに。

「しっかし、すごい量の目だな……」

町は壁、地面、はては空まで目だらけ。
常に視線を感じるのが当たり前になっていた。

これじゃエッチな本も買えやしない。
犯罪率が落ちたのも、この視線のせいなんだろうなと思う。

「ただいまー……ひっ」

家に帰ると、短い悲鳴が出た。
いつかは来るだろうとは思っていたけど、
こんな急に来るなんて思いもしなかった。

「目……こんなところまで」

俺の家の壁一面が"目"だらけになっていた。
プライベートな空間の一切がなくなっている。

風呂もトイレも視線を感じる。
パソコンでエッチな画像も見れない。

視線がここまで気になるなんて。
でも壁をぶち抜いて、新たに壁を作るわけにもいかないし。

「そっ、そうだ! 隠しちゃえばいいんだ!」

ホームセンターで大量のガムテープを買って、
家の壁を埋め尽くす"目"をガムテープで覆っていった。

ガムテープの家が出来上がると、
すっかり視線は気にならなくなった。

「いやぁ、よかったよかった。
 これで心置きなく自慢のパンチラ画像を堪能……ん?」

背中から視線を感じる。

ふと、振り返るとガムテープの上に目が出ていた。

「うそだろ……」

覆っているガムテープの上に目がどんどん出てくる。
あっという間に、壁一面が目だらけになってしまった。

「ちくしょーー!
 これじゃ視線が気になってなにもできない!」

覆ってもダメ。
壁をくりぬいてもダメ。

もうあきらめるしかないのか。

散々ガムテープ労働をした後なのでお腹も減った。
諦めて、キッチンに立つと調味料が目についた。

「あ……。
 目を開かなくすればいいんじゃないか!?」

キッチンの食卓塩を手に取ると、壁の目に向けてまいた。
はた目には砂かけババアにでも見えるだろう。
いや、この場合はジジイか。

塩が目に入ると、たまらず壁の目はまぶたを閉じた。

こんな簡単な方法があったなんて。

「ははは! ようし! この調子だ!
 じゃんじゃん目をつぶしてってやる!」

塩をまいて、家中の目をつむらせた。
俺の家はもとのプライベート空間が手に入った。

視線が気にならない空間。
それがこんなにもありがたいなんて思いもしなかった。

「さて、ひと仕事終わったし、飯でも食べるかなっ」

皿に手を伸ばすと、皿が目の前に迫ってくるような映像が飛び込んできた。
慌てて手を引っ込める。

「なんだ……!?
 今、ものすごく皿がアップに見えたぞ……!?」

戸棚から取り出すだけの動作だったのに、
まるで目の前に皿が……。

恐る恐る、手のひらをひっくり返してみる。

「うそ……」

手のひらには目が現れていた。
手の目からの映像が俺にも入ってきていたんだ。

いや、それどこじゃない。
俺の頭には世界中に現れている目の映像が入ってくる。


どこかの家の風景。
空から見た街の映像。
はては、どこかの惑星の風景。

このモクモクレン現象は地球規模の話じゃないことを悟った。

けれど、俺の関心は別の部分にある。


「……これ、本気出せばパンチラ見放題なんじゃないか……!?」

今や電車の床にも、町の地面にも目はついている。
こんな合法的にパンチラを拝める日が来るなんて。

盗撮に手を染めかねるときもあった。
画像で我慢できなくなる夜もあった。

でも、まさにこれは神から与えられたチャンス!!
活かさない手はない!!

俺は顔についている二つの目を閉じる。
まぶたの裏側には、世界中の目が見た映像が入ってくる。

そこでさらに集中して、
地面や床についている映像のみを選別する。

「よし……完璧なアングル……!」

見上げる目だけの映像に注視する。
まさに万全な体制。
完璧なるパンチラ待ちのフォーム。

さあ、どんとこい。


スカートの女性が通らないか心待ちにしていると、
見上げた空の雲行きが怪しくなってきた。

「これはひと雨来るかな……」

この時の俺はまだ幸せだった。

俺は目の視界を得られると同時に、
目の感じる"痛み"も得ることになるなんて知らなかったから。


『ただいま、酸性雨注意報が発令されました。
 屋外にいる人はすぐに非難してください!
 目に入った場合、耐えきれない激痛を味わいますッ!』

つけっぱなしのニュースの音は、
痛みでもんどりうってる俺の耳に届くわけなかった。