小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

瞬間移動で同窓会へじゃーーんぷっ

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「瞬間移動アプリ?」

最近、新しくスマホに変えてみた。
巷に溢れているよくあるアプリよりも
マイナーなアプリを入れて自慢したいと探していた時に

【瞬間移動 アプリ】

は見つかった。

アプリを起動すると、地図の画面が開かれる。

>瞬間移動先をタップしてください

「ああ、こういうちょっとしたゲームか。
 地図の風景を表示して気持ちだけは
 瞬間移動させるっていうものなんだろうな」

海外のパンフレットを買って、旅行気分を味わうみたいな。

試しに、自分の近所をタッチしてみた。


>瞬間移動先は100km圏外のみです


「遠っ! なんだこの条件」

説明を読んでみると、
100km圏内に瞬間移動すると遭遇するから、とある。
まったく意味が分からない。

だったら、と海外の場所をタップする。
その瞬間。

「うそだろ……?」

目の前にはピラミッドが立っていた。
周りから聞こえる声は完全に外国語。

冗談半分だったのに、まさか本当に瞬間移動するなんて……。

今度は自分の家を地図上でタッチすると
ふたたびさっきの場所へと舞い戻った。


それからは瞬間移動をしまくっての旅行し放題。

たまにアプリの不具合なのか地図をタッチしても

>そこにあなたがいません。

と表示されて瞬間移動できないこともあったが
そんなのも気にならないほど楽しい。

「今日のみに行きませんか?」

「ああ、悪い。今日の夜はパリに行く予定なんだ」

「パリって……ここから飛行機で何時間あると思ってるんです?
 明日も仕事があるんですよ!?」

「大丈夫だよ、俺はこれがあるからな」

俺は後輩にスマホを見せて、パリへと向かった。
パリから帰ると家に1通の郵便が届いていた。


【同窓会のお知らせ】


大学の同窓会のお知らせだった。
懐かしいなぁ、みんなどうしているだろうか。

普段なら、実家のある地方まで戻って
わざわざ同窓会に行くなんて手間したくなかったけど
今はアプリがあるから迷うことはない。

○参加する   参加しない

俺は参加するに○をつけて、手紙を返信した。

「みんな、どうなっているかなぁ」

楽しみに待っていると、日が経つのはあっという間で
気が付けば同窓会当日になっていた。

「よし、行くか」

ちょっと早いけれど、我慢できなくなり会場へと瞬間移動。
まだ誰も来ていない会場でどきどきしながら待っていた。


「うぃーす」

ふすまが開かれて続々と懐かしい顔ぶれがそろっていく。
もう声をかけずにはいられなかった。

「おお! 徳井! 元気にしてたか! なんだよ、その髭は!」
「お、おお……」

「美紀ちゃん! 大人っぽくなったじゃん!」
「そ、そうね……?」

あんなに仲良かったのに、どこかよそよそしさを感じるも
地元を離れたってのもあるから仕方ないんだろう。

人数が集まると同窓会は賑やかにはじまった。

けれど、みんな周りをきょろきょろと見回している。
まるで誰かを探しているみたいに。

「誰か探してるの?」

「ああ、うん。返信用の封筒には参加するって書いていたんだけど。
 前田のやつがまだ来てないんだよ」

前田は俺の苗字。
ははん、わかったぞ。

「あれれー? 前田がまだ来てない~~って、おい!
 ここにいるじゃないかーい! 無視せんといて~~!」

俺は会心のノリツッコミを放った。




「……いや、お前じゃなくて。
 というか、お前誰だよ。その顔、知らないぞ」

「えっ」

一気に会場は水を打ったように鎮まり、俺を見ている。

「誰って、前田だよ!」

「整形したとしても……そこまで顔は変わらないだろ」
「まさか名前を語って何かする気じゃ……」

「待ってくれよ! 俺は前田だって言ってるだろ!?」

「じゃあ、鏡見てよっ」

美紀ちゃんが鏡をずいと俺の前に突き出した。
鏡面に映っていたのは、俺とは似ても似つかない別人の顔。

「これ……誰だ……」

この冷たい空気に耐えられなくなって、
俺はアプリを起動してどこか別の場所をタッチする。

瞬間移動。

「はぁっ……はぁっ……!
 いったい、なんなんだ……」

顔を上げると、たまたま目の前にショーウィンドウのガラスに自分が映った。
その顔は、同窓会の時とはまた違った姿だった。

「なんだよこれ……誰だよ」

原因はひとつしかない。
アプリを起動して説明文を読み直す。

長くスクロールした先で、俺の見落とした説明文が入っていた。










※このアプリは実体を瞬間移動するものではありません。
 魂のみを目的地にいる誰かの体へ瞬間移動するものです。

 それによって元の体を見失っても責任は負いかねます。